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プライバシーステートメント
学芸員レポート
<新執筆陣>
札幌/鎌田享青森/立木祥一郎福島/伊藤匡東京/住友文彦豊田/能勢陽子大阪/中井康之
山口/阿部一直
<旧執筆陣>
札幌/吉崎元章福島/木戸英行東京/増田玲東京/南雄介神戸/木ノ下智恵子高松/毛利義嗣
福岡/川浪千鶴
「"pin-holes" project in Yamaguchi/針穴図像 -光の間-」/「時間旅行展」
山口/山口情報芸術センター 阿部一直
2005年担当の企画および抱負
 山口情報芸術センター(YCAM)の近々の企画としては、佐藤時啓氏に市民参加型の2004―5年間ワークショップをお願いしていたのですが、それを総括するサイトスペシフィックなプロジェクトの展示「"pin-holes" project in Yamaguchi/針穴図像 -光の間-」(2月11日〜3月13日)があります。これは単なるワークショップ報告展ではなく、複数のピンホールカメラを連結集合させた全方位志向型のピンホール撮影装置による新しい写真インスタレーションになります。YCAMのメディアと表現についてのアプローチは、現代美術の映像作品によくみられるようなメッセージのコンテキスト主体で、使用メディアを単純にツールや支持体としてみなしていく方法とは一線を画した方向をとってみようということで、複製技術以降の諸メディアの孕む光学や音響学など知覚工学的な側面に、表現の思考を一端徹底して還元してみることによって、メディア自体の生理からメディア・テクノロジーへの批評的観点を再発見すること、またそこからみえてくる原点の特質とデジタル編集思考の相違や創発性への注視、表現思考回路としての身体の知覚性の再検討などを、テーマに掲げています。これまで発表してきた三上晴子+市川創太、藤幡正樹、クワクボリョウタ各氏の新プロダクション、今回の佐藤氏の巨大な移動カメラオブスクラである「ワンダリングカメラ」や、特殊なピンホールカメラによる新しい写真プロジェクトは、その通底する主題の一環といえるでしょう。さらに複合メディアセンターの利点をいかして、デュラス、ゴダール、ストローブ/ユイレといった映画作品の上映+知覚分析レクチャーも同じレベルで連動させるような形をとっています。3月にはシリーズ「科学とアートの対話」の総合展となる「時間旅行展」が開催されます(3月19日〜6月19日)。この企画はオリジナルが、2003年春に日本科学未来館(東京・お台場)で、山口大学時間学研究所の監修によって行なわれたものですが、上海、メキシコシティを巡回して、今回のYCAM展で日本再展示となります。そこで内容全体を幾層にもパラメータ化してYCAM用に再編集し、さらに新たなアートコンテンツを加えて時間性というゾーンをナビゲーションしていく、かなり知的アクションとしても感覚的にも楽しめる企画です。山口にある巨大な宇宙電波望遠鏡を、ネットワークを使ってリアルタイムで一般公開するようなコンテンツも含まれています。 
2005年の気になる展覧会、動向
 アジアや東欧、非欧米圏もふくめて、これだけ国際的バイアニュアルやそれに類するフェストが多発してくると、それらが担っていたこれまでの役割とは違う状況がうまれつつあるのではないかという気がしてきます。これまでは主要なイベントが、定点観測的にマスターピースを再確認する、あるいは新たな傾向や才能を導入するということで、アートマーケットと完全に連動していたわけですが、すでにアートマーケット主導型のコンフィグレーションは崩れつつあるのは明らかで、アーティストがどう世界形成にかかわるかというサバイバルスタンダードが大きく変容してきているといってもよいかもしれません。作品としての単体というよりプロジェクトベースで、フェストからフェストへ渡り歩く状況は、例えばメディアアートのように、作品が販売不可能なタイプのメディアアーティストたちが以前から示していた動向が、アート界全体に波及しはじめたといえなくもない。ここで問題となるのはベンチャーワゴン巡業の場合のアートの消費化への抵抗ですが、国際イベントの中でも当然優劣やヘゲモニー争い、淘汰があるはずで、差別化=サバイバルスタンダードを視野に入れなければならなくなってくるはずです。しかしそれぞれが特化した主題を主張し合うより(もとより大文脈でのテーマは、本質的というよりメタフォリックなものがほとんどですから)、後発的、小規模的、ローカルなものはその逆スケールメリットをいかして、複数のサイトをトランジットする=連携すること自体がプロジェクトの本質としていけるような改革を行なうべきです。そして国際イベント全体の未来は、そのようなマイクロポリティックの方向を志向していくように思えます。このトランスローカライズ=跳躍連結されていく縮図は、それぞれの身近な地域どうしにまたそのままあてはまりそうなわけです。そこで問題は、どのようなメディアと思考が、アートとして、表現として、そのようなプラグイン、プラグアウト、より微細な変調に対応可能な、に適しているかということではないでしょうか。

プロフィール
キヤノン株式会社文化支援活動「Canon ARTLAB」のコ・キュレータとして立ち上げから企画・運営・制作を担当(1990-2001)。せんだいメディアテーク(仙台市)開館記念展「記憶の扉」企画協力(2001)。山口情報芸術センター[YCAM](山口市)準備室(2001-2003)をへて現在、主任キュレータ、アーティスティック・ディレクタ。「アモーダル・サスペンション―飛びかう光のメッセージ」 「三上晴子+市川創太/gravicells―重力と抵抗」「池田亮司/C4I」「クワクボリョウタ/RV」などを企画。

[あべ かずなお]
<新執筆陣>
札幌/鎌田享青森/立木祥一郎福島/伊藤匡東京/住友文彦豊田/能勢陽子大阪/中井康之
山口/阿部一直
<旧執筆陣>
札幌/吉崎元章福島/木戸英行東京/増田玲東京/南雄介神戸/木ノ下智恵子高松/毛利義嗣
福岡/川浪千鶴
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