実は、もうすでに始まっている「アート・ミーツ・メディア――知覚の冒険」展を担当している。この展覧会は、ICCができる前に作られ、かつよく知られた「インタラクティヴ・アート」作品からICCのコレクション、それからもっと最近の作品までを網羅し、1989年以降のメディア・アートを振り返ることと、GPSや電波、レコードなどの異なるメディアや、サウンド・アート、ネット・アートから社会性の強い作品まで、この分野がどれだけ多様な展開を見せているかを紹介する「入門編」的な役割を意識して企画されている。その背景には、ここ数年様々な大学でメディア・アートを教える学科などが設立され、芸術祭やイヴェントなども増えているなかで、あらためてメディア・アートとはどんな分野なのかを考える必要が生じてきているからである。いまや一般の美術館や展覧会でもメディア・アートを扱うようになるなかで、この分野を特殊なものとして自律化させずに、様々な経歴や専門性を持つ人に開かれたオープンな分野としての可能性を試していく時期に来ているのではないだろうか。会場には年表やキーワードによる解説、ネット・コミュニティなどの紹介があり、これまでこの分野にあまりなじみがなかった人もこれを機にメディア・アートに関する情報を一気に受け取れるお得な展覧会だ。足を運べない人にも、2月22日〜27日まで行なわれるイギリスのグループ、ブラスト・セオリーによるオンラインと実空間のあいだで行なわれる追跡ゲーム「Can you see me no w?」は、どこからでもネットに接続さえすれば参加できる。
その後は、来年の同じ時期に向けて日本の戦後美術とテクノロジーをテーマにした展覧会の準備に没入する予定。今年はほかにも、ソウルのアート・スペースLOOPがリニューアル・オープンする開館展の企画、アルス・エレクトロニカ(リンツ、オーストリア)・インタラクティヴ・アート賞の審査員などに関わっている。