学芸員レポート 05年02月




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「アミューズランド」／〈パブリック〉のアート活動

札幌／北海道立近代美術館　鎌田享

●2005年担当の企画および抱負

　これからというよりは、すでに担当した企画ですが、自己紹介替わりにレポートを……。私が勤務する北海道立近代美術館では、毎年冬休み時期にアミューズランドというシリーズ展を開催しています。子どもから大人まで幅広い層に美術の楽しさを発見してもらおうと1993年にスタートしたこの展覧会、13回目を迎える今回は「むすんで♪ひらいて♪♪」というタイトルで、12月10日（金）から1月16日（日）まで開催しました｡
　美術館というと、古今東西の絵画や彫刻を見に行く場所というのが一般的なイメージ｡しかし、作品制作の現場では自らの作品を媒介としながら、より積極的に鑑賞者とコミュニケーションをむすんでいきたいと考えるアーティストたちが数多く登場してきました。一方、美術館も単に作品を展示・紹介する場から、アートを通じて市民に働きかける場へと変化を求められています。
　美術や美術館をめぐるこうした変化を背景に、この展覧会では美術作品を〈見る〉楽しさばかりでなく、作品に〈参加する〉場を提供したいと考えました。展示室のなかでアーティストの技法を体験したり、ワークショップに参加したりと、アートと触れあうさまざまなシーンを用意したわけです。見る・体験する・参加するという多彩なアプローチを通じて、アートと鑑賞者・アーティストと鑑賞者を〈むすんで〉いきたい、それが今回の展覧会のテーマでした。同時に会場は、画面がつぎつぎとつながっていく大きな絵や、小さな部分を集めて作った作品など、〈むすぶ〉というイメージを含む作品で構成しました。
　出品作家は、磯崎道佳＋ギャラクシー・伊藤ひろ子・小林重予・齋藤周・艾沢詳子（以上、北海道）・石田智子（福島）・平町公（神奈川）・伊藤存（京都）の8組。展覧会の様子は3月末まで、美術館HPでも報告していますので、詳しくはそちらをご覧下さい｡
　このシリーズ展、来冬も12月から1月まで開催。私もスタッフとして関りますので、進行状況は逐次お知らせします｡
「アミューズランド2005むすんで♪ひらいて♪♪」ホームページ
　http://www.aurora-net.or.jp/art/dokinbi/exhi/amuseland2005
　

●2005年の気になる展覧会、動向

　横浜トリエンナーレ、指定管理者制度……｡地方自治体の美術（館）活動は何かと先行き不透明。それとは対照的に、近年ますます活発化しているアート系NPOなど市民主導の美術活動｡北海道も例外ではありませんので、まずはその紹介から。
　ひとつは昨年札幌で立ち上がった「あけぼの美術企画」。札幌市内の小学校統合により、昨春、市内中心部の札幌市立曙小学校が閉校になりました｡《あけぼの美術企画》はその跡地活用の一環として活動をはじめた団体です｡札幌近郊の大学生らが、美術関係者と協働しながら、講座やパフォーマンスなどのアート企画、そして空教室のアトリエ貸し出し事業などを展開しています｡
　もうひとつは帯広の「デメーテル学校」。北海道東部のこの都市では2002年夏に「とかち国際現代アート展デメーテル」という現代美術の国際展が開催されました｡このグループは国際展を機に撒かれた現代美術への関心を継続させようと、2003年に国際展関係者や地元美術ファンが結成したグループ｡セミナーやワークショップ、展覧会の企画・運営などを行なっています｡
〈市民〉別の言葉でいえば〈パブリック〉の活動が活発化していくなかで思うわけです、美術館はこれから何が求められているのかと……｡連携・共生・協働、いろいろ言われますが、具体的には何をしていくのか｡市民主体の活動をサポートしていくのか、最新の美術動向・情報を発信していく場となっていくのか、それとも美術作品の収集・保存・研究に力を注ぐのか……｡答えはひとつではないでしょうが、〈公立〉美術館に勤める身としては考えていかなければならない問題です｡

プロフィール
1969年神奈川県生まれ。北海道立帯広美術館を経て、現在、北海道立近代美術館学芸員。学芸員生活も今年で13年目、展覧会だけは人並みにこなしてきました……｡

[かまた　たかし]



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