村田真/酒井千穂 |
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8/16〜8/31 |
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金刀比羅宮 書院の美──応挙・若冲・岸岱
7/7〜9/9 東京芸術大学美術館[東京] |
こんぴらさんの表書院・奥書院にある障壁画をもってきて、柱や畳を組んだ空間に再現展示している。作品は応挙と岸岱が多く、若冲は《花丸図》のみ(しかも大半はコピー)だが、なかなか見ごたえがある。ところで、こうした障壁画というのは、建築の一部をなしていながら取り外して持ち運びが可能な点で、世界的にも珍しい美術形式といえるだろう。これが西洋のようなフレスコ画だったりしたら、こんな巡回展できないもんね。
[8月16日(木) 村田真] |
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自画像の証言
8/4〜9/17 東京芸術大学美術館陳列館[東京] |
収蔵する芸大卒業生の自画像5,000点近くのうち、明治31年卒業の北蓮蔵、白瀧幾之助のおやじ顔から、平成18年の小池真奈美、山本磨理らキレイドコまで約160点を展示。戦後まもないころまでの自画像は見たことあるものが多いが、その後しばらく中断があって、70年代に再開してからのものは大半が初めて。まあここらへんから「どこが自画像?」みたいな作品が登場し始めるので、大学側もあまり見せたくないのかも。その代表が、ゴムの板を巻いただけの川俣正の「自画像」だ。同学年の保科豊巳、田中睦治らも競うようにワケのわからない「自画像」を出している。村上隆は貧乏神のような横顔を描いていて隔世の感があるなあ。このころから女子が増え、セルフヌードも見られるようになる。時代や風俗の変遷も感じられる展覧会。
[8月16日(木) 村田真] |
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水川千春「のこり湯」
8/24〜8/31 BankARTスタジオNYK[神奈川] |
スタジオアーティストの水川が、滞在しているレジデンス施設「桜荘」の風呂にたっぷり浸かり、油脂や体液などを絞り出す。そのエキスの染み出た残り湯を寝かせて濃度を濃くし、その液体で紙に絵を描き火であぶり出した作品。描かれてあるのはコンビニで買ったお菓子やペットボトル飲料。つまり、これら飲食物が作者の体内に摂取され、油脂や体液となって湯に溶け出し、絵に描かれるのだから、水川の身体とお風呂の湯を通過した自画像といえるわけだ。これを千春ちゃんがやるからナメるように見るわけで、もし毛むくじゃらのおっさんや太ったおばはんがやったとしても見る気しないなあ。
[8月24日(金) 村田真] |
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MIHOコレクション──大いなる時を超えて
9/1〜12/16 MIHO MUSEUM[滋賀] |
開館10周年を迎えるMIHOミュージアムのコレクション展。ふたつに分かれた会場の南館では、エジプトから西アジア、ギリシア・ローマなどの神像や祭祀用杯、彫刻装飾といった遥か古代の文明的遺産を展示。北館は、日本で育まれた文化を中心に、土器から茶道具まで時代ごとのテーマによって構成されている。文明や文化という人間の営みに思いを巡らせる展示資料それぞれの色褪せない美しさもさることながら、千利休が唯一創作したとされる遺構「待庵」を模した茶室の展示空間や、邪鬼を踏みつける《持国天立像》の歯の部分が特に強調され、その圧倒的な迫力をいっそう際立たせる照明など、独特の展示の工夫がさらに作品をドラマチックに見せていた。なかでも、本展の展示のメインでもある《耀変天目茶碗》は、展示室に足を踏み入れると、空間の中心に置かれた茶碗がまるで宙に浮いているかのように見えて目を見張る。表情が微妙に変化する《耀変天目》の繊細な輝きや、緩やかでありながら緊張感を保った美しさだけでなく、神々しさを一気に引き出す力の入った演出が見事だ。
[8月31日(金) 酒井千穂] |
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