北九州国際ビエンナーレ'07 Cute or Creepy? 9/28〜10/31 北九州市門司港地区[福岡]
北九州市は門司港で当地のアーティストを中心としたNPO法人によって主催された国際展。「Cute or Creepy?」というタイトルの展覧会のほか、音楽イベントや映画上映会、シンポジウムなど複合的なプログラムで構成されている。本展は、門司港駅前の旧JR九州本社ビルの一部を会場として、国内外から招聘した9組の作家による作品を展示したもの。古びた廃墟のような空間が魅力的だったとはいえ、作品の多くが社会的・政治的なテーマを取り扱ったドキュメンタリーチックな映像だったせいか、どうしても画一的な印象が否めなかった。それは、映像の内容というより、おそらくは映像の見せ方に大きく起因しているように思われた。広い壁面に拡大した映像を立て続けに投影しているため、鑑賞者の視線を誘導する導線があまりにも直線的で、強弱のアクセントに欠けていたからだ。このように美術館にはない贅沢な空間をもてあましながらも、美術館ならではの専門的な技術が欠落していたという点は、美術館制度の外側で催された国際展の弱点にちがいないが、公立の美術館じたいが衰弱している現状を考えれば、今後の課題は美術館制度の外側からの自発的な動機と美術館独自の知見や技術を有機的に連動させることにあるように思われる。 [10月27日(土) 福住廉]