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ピピロッティ・リスト からから
11/17〜2/11 原美術館[東京] |
ピピロッティ・リストによる美術館での個展。これまでと同様に、映像作品を中心にしつつも、かつて個人の私邸だった原美術館の特性を最大限に活かした展示構成となっているため、決して飽きることがない。(かつて束芋が仕掛けたのと同じように)床に投影された映像をバルコニーから見せたり、救急箱や床の一部に極小サイズの映像を組み込んだり、あるいは便器の中にカメラを仕込んで観覧者自身の排泄物を見せたり、たいへんな工夫が凝らされていて、映像を見る経験じたいが楽しくなっている。鮮やかな色彩と浮遊感を帯びた映像は、たとえば蜷川実花の写真にも通じる感性を体現しているが、それ以上に幻覚的であり、なおかつ知的であることから、90年代の蜷川がそうであったように、00年代のガーリーな感性を鋭く射抜いているのかもしれない。
[11月16日(金) 福住廉] |
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マツダジュンイチ展
11/16〜12/4 アートゾーン神楽岡[京都] |
都会や工場、岸壁などを、独自の造形感覚と墨の濃淡で表現するマツダジュンイチ。しかし、作品に近づいてよく見るとビックリ。色面と思っていたものが、実は無数の線でできており、それらが集積して複雑な空間を作り上げているのだ。今回は広い空間と吹き抜けを持つギャラリーでの個展とあって、180×720センチ、112×580センチの大作を出品。吹き抜けには天地9メートルを超えるドローイングも展示された。同時に小品絵画や、今回始めて手がけた版画作品も展示されており、その旺盛な制作意欲には脱帽というほかない。
[11月20日(火) 小吹隆文] |
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八つの課題
11/10〜30 ギャラリーヤマグチクンストバウ[大阪] |
三嶽伊紗、今村源、井上明彦、日下部一司による一風変わった企画展。官製にハガキによる往復書簡を続けながらそれぞれが二つの課題を出題。全員が計八つの課題に即した作品を制作し、ギャラリーで一堂に展示した。約40点にも及ぶ作品は、日頃の彼ららしいものもあれば、異質な要素を感じさせる表現もあり、バラエティに富む。どうやら往復書簡で互いの意図が伝わるため、ある種の駆け引きが発生したらしい。ハガキも一緒に展示されたためコミュニケーションの一端が伝わり、私自身もにわか探偵気分で推理を巡らせてしまった。自分の世界を確立したアーティスト同士ならではの大人の遊戯というべきか。こういう凝った企画がもう少しあってもいい。
[11月21日(水) 小吹隆文] |