小吹隆文/福住廉 |
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10/31~11/3 |
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矢部奈桜子 展
10/29~11/17 ギャラリーゼロ[大阪] |
樹皮をキャンバスいっぱいに拡大して細密描写した絵画。そんな矢部奈桜子の作品に対するイメージが一瞬吹っ飛んだ。新作で描かれたのは、正体不明かつ複雑極まりない形態と色彩。こちらの処理スピードを超える視覚情報に圧倒され、ちょっとしたトリップ感さえ味わえる。見終わった後、実は今までと同じモチーフ、手法で描かれた作品だと聞かされ、二度びっくり。描く密度と精度が向上した結果、絵の強度が格段にアップしたということか。久々に絵を見る醍醐味を味わった。
[10月31日(水) 小吹隆文] |
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I meet
10/31~11/11 海岸通ギャラリー・CASO[大阪] |
今村源×森太三、前田朋子×双子の未亡人(ダンスユニット)、稲垣智子×植松琢麿の3組によるコラボレーション展。今村×森組は、互いの作品を交錯させた大規模なインスタレーションを展開。前田×双子…組は、双子…の世界をモチーフに前田が油彩画を描く形。稲垣×植松組は、共作の映像作品とセットの一部を展示した。個展でもグループ展でもない作家同士の共演を目指したとのことだが、私見では稲垣×植松組が最も濃密な共同作業を実現したように思う。稲垣のパフォーマンスと植松の立体作品が融合した映像は極めて象徴性の強いもので、“意味の迷宮”とでも呼ぶべきシュールな世界を構築していた。
[10月31日(水) 小吹隆文] |
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鳥獣戯画がやってきた!──国宝『鳥獣人物戯画絵巻』の全貌
11/3~12/16 サントリー美術館[東京] |
鳥獣人物戯画絵巻の甲乙丙丁巻のすべてを公開した展覧会。ガラス越しとはいえ、右から左にじっくり丁寧に見ていくと、その生き生きとした描写を存分に味わうことができる。簡潔でありながらリアルな描写力はもちろん、画面構成から色調の濃淡にいたるまで、今から900年近くも前に描かれたとは信じられないほどの完成度に眼を奪われる。鳥獣戯画の系譜は12世紀に絶頂を迎え、その後は衰退していく一方だといわれているが、じっさい本展で鳥獣人物戯画絵巻の系譜に連なる墨画や白描画、戯画などを見ると、《放屁合戦絵巻》などのすぐれた例外があるにせよ、12世紀以後の絵巻物は明らかに質が低下しているのが一目瞭然だ。この国の現代文化の誇るべき起源を堪能して頼もしく思うか、その全盛期からの凋落ぶりに落胆するか、いずれにせよこの貴重な機会を逃しては話にならない。
[11月2日(金) 福住廉] |
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河口龍夫──見えないものと見えるもの
10/27~12/16 兵庫県立美術館[兵庫] |
展示室ごとに展開される大スケールのインスタレーションに驚かされた。兵庫県立美術館の巨大なスペースが十分に生かされたという感じだ。展示は初期の写真作品《陸と海》に始まり、床中にオブジェが配置された《関係─エネルギー》、そして河口のトレードマークとも言うべき鉛と種子を用いた諸作品へと移行。最後の部屋で空中に船を浮かべるファンタジックかつ壮大な《関係─浮遊する蓮の船》でカタルシスを迎えたのであった。「あぁ、鮮やかなエンディング」。そう思って室外に出たら、何とさらにもう1点、鉛に包まれた無数の羽ぼうきが天に向かって飛翔するインスタレーションが。意表を突いた演出が心憎い。同時開催の名古屋市美術館も見に行かなきゃ。すっかりその気にさせられてしまった。
[11月3日(土) 小吹隆文] |
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