小吹隆文/福住廉/村田真/酒井千穂 |
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11/26〜12/1 |
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野嶋革 展
11/26〜12/1 番画廊[大阪] |
銅版画といえばカリカリと彫られた線が特徴だが、野嶋の作品は全然違う。海や森などの風景が、ピクトリアリズム写真のようにソフトフォーカスで表現されているのだ。なかでも、一枚の版を彫り進めながら、水平線から日が昇る情景を定点観測的に表わした5点組の連作はとてもユニークである。本人曰く、「表現したかったのは、光と水を体感させるような画面作り」。一体どんな方法で作っているのだろう。制作方法を聞き出せなかったのが残念だった。
[11月26日(月) 小吹隆文] |
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山元ゆり子 展
11/16〜12/9 shin-bi[京都] |
薄暗い展示室の中央にはドアが起立し、周辺の床には落ち葉が敷かれている。ドアの手前には台と書籍が。書籍に書かれた通りにドアスコープを覗くと、目の前の風景が一変して見え、思わずドアを開けてしまった。……結局何も起こらないのだが、一瞬とはいえ自分がファンタジーの世界にいたことは確かだ。シンプルな仕掛けで濃密な物語世界を作り上げた手腕は、鮮やかというほかない。
[11月30日(金) 小吹隆文] |
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シェル美術賞
11/21〜12/2 代官山ヒルサイドフォーラム[東京] |
昭和シェル石油株式会社が主催する絵画の展覧会。審査員は本江邦夫(多摩美術大学教授/府中市美術館館長)、中井康之(国立国際美術館主任研究員)、蔵屋美香(東京国立近代美術館主任研究員)の3名。彼らが選んだ絵を見ても、どうして評価されたのかまったく理解に苦しんだが、その反面、サガキケイタによる超細密画や佐藤岐夜美によるパステルウレタン画が、主題的にも技法的にも、目を引いた。それにしても「画壇の登竜門」を自任する美術賞だけあって、応募資格を「40歳以下」に限定しているが、少子高齢化社会にあって、登竜門の門戸を若者だけに開放し、お年寄りに門前払いを食わせるやり方は、時代錯誤も甚だしい、ナンセンスの極みというほかない。無垢な若者を相手にしているかぎり審査員の沽券が脅かされることはないのだろうが、己の専門性が通用しない異分野で生きてきた自分より年配の方々の中から、「あっ」と息を呑むような未知の絵画が生まれ出てくることに、どうして期待しないでいられるのだろうか。既存のヒエラルキーを死守しようとする保守的なメンタリティが美術の貧困をもたらしていることを改めて確認させられた。
[12月1日(土) 福住廉] |
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中野正貴
11/13〜12/5 リトルモア地下[東京] |
人っ子一人いない都市風景を撮影した「TOKYO NOBODY」で知られる写真家・中野正貴の個展。その原点ともいえる1980年代のアメリカの都市生活者たちを撮影した写真を発表した。原色で彩られた人びとの姿は、「TOKYO NOBODY」とは対照的に、じつに豊かな人間性を感じさせたが、その一方やはり人形のような人工性をどこかで感じさせる不思議な魅力を湛えていた。
[12月1日(土) 福住廉] |
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山中賀與子 作品展
12/1〜12/24 ギャラリーKai[大阪] |
育児のため展覧会活動を休んでいた山中が、約5年ぶりの個展を開催。以前は様々な土地へ赴き、その地で得た感興や情景を撮影していたが、新作の被写体はすべて子供。神戸郊外のニュータウンで暮らす彼女の日常と地続きの表現である。子供の写真といえば梅佳代が思い浮かぶが、彼女があくまで子供目線で肉薄するのに対し、山中の表現はずっとジェントル。そこはやはり母の目線ということか。同時に客観的な観察眼も併せ持っており、被写体との距離の取り方に独特の美学を感じた。
[12月1日(土) 小吹隆文] |
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