小吹隆文/福住廉/村田真/酒井千穂 |
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12/3〜12/5 |
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中村協子 展「思い出せない思い出」
12/3〜12/8 Oギャラリーeyes[大阪] |
子供が書いた落書きや絵日記が並んでいると思ったら、実は全て中村による再制作。自分や友人たちからかき集めた絵日記などをもとに、そっくりに模写し、再構成したのだという。中村がこんな展覧会を発案したのは、思い出に対する懐疑がきっかけ。自分のアルバムをめくっていると、その時のことを思い出せない写真ばかりが並んでいて、思い出に関係する写真が残っていなかったのだという。自分だけの大切な思い出も、実は都合の良い幻影にすぎないということか。見た目はほのぼのとした作品だが、その背後には虚無の荒野が広がっている。
[12月3日(月) 小吹隆文]
記憶をテーマにした中村協子の新作展。修学旅行や夏休みの絵日記、小学校の卒業文集などをモチーフにしたドローイングやコラージュ作品が並んでいた。中村が今展でアプローチするのは、残った写真を見てもその当時の状況がよく思い出せない、あるいはこのような絵を描いた覚えがないという記録や、それによって刷り込まれる自分の記憶とはちぐはぐな「思い出」の違和感である。ただ、アニメや当時流行の(?)キャラクターが描かれていたり、マンガの吹き出しに脈絡のつかめないセリフが加えられた子ども時代の「証拠」としての再現イメージがあまりにもリアルだ。見ていると自分の記憶と体験のイメージが見事に重なり、思わず笑いもこみ上げてくる。パロディがうますぎて、刷り込まれるというポイントよりも、なんで子どもはこんなものを描いちゃうんだろう、という違和感のほうに関心が集中してしてしまった。
[12月8日(土) 酒井千穂] |
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西岡桂子 展「本気がいっぱい」
12/4〜12/9 ギャラリーマロニエ[京都] |
大量の布切れ、ぬいぐるみなどの玩具、アクセサリー、その他様々なものが縫い付けられたジャンクのオバケみたいな作品が出品されていた。西岡のテーマは「装飾」。ファインアートの世界ではネガティヴな響きを持つ装飾を突き詰めることで、むしろ芸術上の突破口を開こうとしているようだ。デコ電(装飾過剰な携帯電話)をモチーフにした作品もあり、現代のポップカルチャーとの関連性も大。ギャルファッションやアートトラックなど日本独自の装飾文化にも精通しており、確信犯的バッドテイストの作品として、今後の展開が注目される。村山留里子のフォロワーと見なされる可能性は高いが、村山の唯美性に対し西岡は卑俗性が持ち味である。
[12月4日(火) 小吹隆文] |
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山野千里 展
12/1〜12/24 ヴォイス・ギャラリーpfs/w[京都] |
エリマキトカゲの傘だから《エリマキパラソル》、イカがカヤックになっているから《イカヤック》など、生き物と言葉遊びが融合した陶オブジェを出品。ほとんどが掌に乗る大きさで、愛玩用に人気を博しそうな可愛らし造形だ。表面には細かい絵が描かれているが、線描部分は筆ではなく、表面を掘ってそこに黒や茶色の陶土を摺り込んでいるのだとか。可愛いふりして実はテクニシャンなのである。動物の造形も、簡略化しつつも特徴を捉えていて実に上手い。
[12月4日(火) 小吹隆文] |
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今日の作家シリーズ48 垂直なる地平:国谷隆志
12/4〜12/22 大阪府立現代美術センター[大阪] |
2つの展示室を持つ大阪府立現代美術センター。A室では、赤いネオン管48本を2段重ねに並べて空間を仕切る《Spaceless Space》と、2つの砂山の片方からスコップで砂をすくい、もう片方の上部にある底の抜けた砂時計に注ぐ《Sand
Sculpture》が。別フロアのB室では、白いネオン管を曲げて作られた《Sign》7点が出品された。作品自体の造形もさることながら、配置により空間性や時間性など、美を形成するエッセンスを抽出するのが国谷の特徴。彼の資質が十分に発揮され、引き締まった美空間を作り上げることに成功した。
[12月5日(水) 小吹隆文] |
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矢尾板克則 小屋 展
12/5〜12/23 iTohen[大阪] |
柱を組んで壁を張った、まさに掘っ立て小屋と同じつくりの陶オブジェや、渋い風合いの陶板状の作品、ロマネスクな趣をたたえたトルソの様な女性像などを出品。小屋と陶板状の作品は、表面のひび割れや剥落、風化したような色合いが特徴だ。この風合いは、焼く前に化粧土を何層か塗り重ね、自然に剥落が起こるまで乾燥させてから窯に入れることで得られるのだとか。新作なのに風雪を積み重ねてきたかのような存在感があり、独自の景色を見せてくれる作品だった。
[12月5日(水) 小吹隆文] |
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