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展覧会レビュー
小吹隆文/福住廉
2/20〜2/26
BOOK ART 2008 Japan-Korea 展
2/18〜3/1 Gallery Den[大阪]
BOOK ART 2008 Japan-Korea 展
日韓の中堅及びベテラン作家12人(それぞれ6人ずつ)が、「本」をテーマにグループ展を開催。本といっても体裁は様々で、オーソドックスなものからポートフォリオ、巻物、本を紐で縛ったオブジェなど、とてもバラエティに富んでいた。手袋さえすれば作品に触れられるので、自由にページを行き来したり、鼻が触れそうになるほど間近に作品を寄せたり。濃密な体験を通して、いつもよりアートとの距離が近づいたような気がした。
[2月20日(水) 小吹隆文]
生野毅の俳句朗読と上野雄次のはないけ所作─燐舞─
2/22〜23 GALLERY MAKI[東京]
生野毅の俳句朗読と上野雄次のはないけ所作─燐舞─
俳人の生野毅とはないけの上野雄次による即興パフォーマンス。生野によって読み上げられた言葉の羅列と上野によるパンキッシュなはないけの所作が、時として交錯することはあるにせよ、それぞれ別々に進行していった。全体を貫いていたのは、じつに暴力的な空気感。暗がりの中から現われた生野がたびたび口にする「ボンッ」という言葉は、次第に「ブォン」、「ブ・オン」へと変化していったが、これは単語を音節で分節化しながら言葉の解体を図っていたようだし、上野は壁面に薔薇をハンマーで力いっぱい打ちつけ、鉄線で薔薇をぐるぐるに巻きつけたかと思えば、それらを一気に引きちぎり、挙句の果てにガスバーナーで薔薇を焼きつけてしまった。俳句や生け花といったジャンルからはとても想像できないほど暴力的な迫力は、しかしたんに破壊的な衝動の現われというわけではなく、破壊と生成を幾度も繰り返すことで、どうにかして未生の言葉やはないけのかたちを手繰り寄せようとする試行錯誤の過程を表わしているように見えた。妥協と馴れ合いの産物としての安易なコラボレーションが横行するなか、暴力と暴力を対峙させるこのようなコラボレーションこそ、いまもっとも必要なのではないだろうか。
[2月22日(金) 福住廉]
森村誠 展「白い風景」
2/21〜3/23 ギャラリーOUT of PLACE[奈良]
森村誠 展「白い風景」
辞書などの書籍のなかにある特定の文字だけを切り抜き、何千もの断片を瓶詰めした作品で知られる森村誠。今回は、昨年にアーティスト・イン・レジデンスで訪れたパリで作った新作が披露された。それらは、町のキオスクで売られている観光地図を用い、特定の単語(例えば「fuck」ならfとuとcとk)のみを修正液で塗り潰したものだ。膨大な時間と労力を投じて白く塗り潰されていく地図と、そこから醸し出される乾いた空虚感。ナンセンスな言葉遊びの世界に、森村の真骨頂を感じた。
[2月23日(土) 小吹隆文]
平成19年度 第31回 東京五美術大学連合卒業・修了制作展
2/21〜3/2 国立新美術館[東京]
多摩美術大学、女子美術大学、東京造形大学、日本大学芸術学部、武蔵野美術大学の卒業・修了制作展。日本画、洋画、版画、彫刻に分けられた上で、しかしジャンルはおろか大学の区分も曖昧になるほど大量の作品が大きな空間にあふれていた。そうしたなか特徴的だったのは、女子美のレベルの高さと版画の充実度。無数のカエルによって構成されたダルマを浮世絵のような色彩で描き出した塩崎絵梨香(女子美)の版画《ダルマガエル》は、部分的には動物であり、全体的にはモノでありながら、カエルとダルマがそれぞれ人間に見える不思議な作品だ。深沢香(多摩美)の版画《畳の記憶》は、畳を丸ごとそのまま転写した愚直な作品だが、いかにも湿度を湛えた日本的な風景をシンプルに再現しているのに加えて、水平に置かれていた畳を垂直に移し変えて見る視点の転換という意味でも興味深い。また、満員の通勤電車が街中を龍のように練り走る光景を描き出した熊沢未来子(ムサビ)の日本画《脱線》も都市の日常的な風景にひそむ異常性を浮き彫りにしていて、面白かった。
[2月25日(月) 福住廉]
第11回 岡本太郎現代芸術賞(TARO)展
2/9〜4/6 川崎市岡本太郎美術館[神奈川]
岡本太郎現代芸術賞の入選作品を見せる展覧会。趣向も作風もバラバラなアーティスト24人による作品が一堂に会した。菊の御紋を刷り込んだブラックミラーによって構成されたインスタレーションを発表した塩津淳司や布にインクを塗り固める技法によってマンガを描き出した耀樹考鷺鶯、「のびあにき」というキャラクターに扮して会場内で眠り続けた金子良などが目を引いた。これらの作品を一括して総括することは困難を極めるが、おそらく太郎による「今日の芸術」というテーゼの意味を作品の制作をとおして反芻し続けることが今後の課題となるのではないだろうか。
[2月26日(火) 福住廉]
Index
2/20〜2/26
BOOK ART 2008 Japan-Korea 展
生野毅の俳句朗読と上野雄次のはないけ所作─燐舞─
森村誠 展「白い風景」
平成19年度 第31回 東京五美術大学連合卒業・修了制作展
第11回 岡本太郎現代芸術賞(TARO)展
2/27〜3/1
染谷聡 展 Heritage of “S”
クリテリオム72 飯田淑乃
大阪・アート・カレイドスコープ2008「大阪時間」
苅谷昌江 展「Meeting」
3/5
町田夏生 展─《乙女》の衝動─
藤原陽子 個展 いろもたぬ原形のむれ
田中幹 展
わたしいまめまいしたわ──現代美術にみる自己と他者
サラ・ジー展
船、山にのぼる
3/7〜3/11
岩井優 Cleaner's high#1
Aurora
20世紀の巨匠たち 美を見つめる眼 社会を見つめる眼
誌上のユートピア 近代日本の絵画と美術雑誌 1889-1915
藤井俊治 展
向き合えば省みる心──田中恒子コレクションによる太田三郎 展
3/15〜3/20
縄文──いにしえの造形と意匠
東野哲史 展「WKM/○○」
お帰り集団蜘蛛
第8回 21世紀の作家─福岡 和田千秋「障碍の美術X──祈り」
霜倉真二 写真展「水彩色」
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