小吹隆文/福住廉 |
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3/7〜3/11 |
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岩井優 Cleaner's high#1
2/28〜3/8 Otto Mainzheim Gallery[東京] |
ランナーズハイならぬクリーナーズハイ。環境を浄化するための手段としての掃除が自己目的化して快楽に到達する事態を岩井優はそう名づけた。会場には岩井が世界各国の旅先で買い集めた色とりどりの洗剤の容器が陳列され、来場者とともに床をただひたすら洗い、磨き上げるパフォーマンスを繰り広げた。じっさいに自分でやってみると、広い床に水をぶちまけ、ブラシでこすりあげ、磨き上げるという行為そのものが実生活の中で見失われて久しいことに気づかされ、まさにクリーナーズハイを体感することができる。掃除こそ日常生活と芸術が交錯する地点なのかもしれない。
[3月7日(金) 福住廉] |
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Aurora
3/1〜30 PANTALOON[大阪] |
イラストレーターやアーティストとして活動している塩川いづみ、のりたけ、服部あさ美、HIMAAの4人展。それぞれの作風が微妙に重なっており、また、作品の配置が考え抜かれたものになっていたため、まるで絵画でインスタレーションを作ったかのごとき興味深い仕上がりになっていた。いや、空間構成が緻密であるが故に各人の作風が重なって感じられたということか? とにかく、それだけ親和性の高い4人が集まったということだ。隙間はあるのに隙はない、独特の密度を持った空間に魅了された。
[3月9日(日) 小吹隆文] |
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20世紀の巨匠たち 美を見つめる眼 社会を見つめる眼
2/27〜3/17 大丸ミュージアム・梅田[大阪] |
ルイス・ハインからロバート・メイプルソープまで、20世紀を代表する写真家14人の作品が並ぶ。必ずしも各作家の代表作が見られたわけではないが、作品の質は上々。社会的ドキュメント、ストレート・フォト、ファッション写真がバランスよく配されており、初心者向けの教科書的展覧会として良くできていたと思う。個人的には、久々にルイス・ハインの作品を見られたので上機嫌。ウィン・バロックのプリントの美しさにも改めて感動した。
[3月9日(日) 小吹隆文] |
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誌上のユートピア 近代日本の絵画と美術雑誌 1889-1915
1/26〜3/9 神奈川県立近代美術館・葉山館[神奈川] |
19世紀末から20世紀初頭にかけての美術雑誌とその時代の近代絵画をあわせて見せる展覧会。雑誌と作品をあわせて展示することで、双方の相互関係を見せようとしていたが、当時のアーティストたちが作品を作ることと同じくらいの情熱をもって雑誌を作ることに熱中していたことがよくわかった。何より情報を渇望していたあの時代とは対照的に、情報過多の現在における美術雑誌は、はたして彼らに匹敵する熱情を誌面に注いでいるのだろうか、表現の場を求めて彷徨っていたあの時代とは比べ物にならないほど発表の場に恵まれている現在のアーティストたちは、彼らに勝る表現を顕示できているのだろうか。
[3月9日(日) 福住廉] |
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藤井俊治 展
3/10〜15 Oギャラリーeyes[大阪] |
人物をモチーフにした半抽象的絵画。パステル調の淡い色彩によるマットなトーンとグラデーションが美しい。近づいて見た時の抽象的な図柄も魅力的だ。サーモカメラという特殊な機器(赤外線を使って物の表面の温度を読み取る)から得られたビジュアルを基にして描いているらしい。温度を感知するには直接手で触れるしかないが、そうした触覚的要素をビジュアル表現に取り込むことで独自のリアリティを追求しているようだ。
[3月10日(月) 小吹隆文] |
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向き合えば省みる心──田中恒子コレクションによる太田三郎 展
3/11〜23 ギャラリーすずき[京都] |
太田三郎が1992年から取り組んでいるライフワーク的作品『Post War』シリーズ全点が展示された。太平洋戦争で亡くなった肉親の最後の様子を尋ねる顔写真入りのメッセージを新聞で見かけたことに端を発する同シリーズ。これまでに兵士の肖像、中国残留孤児、被爆地蔵、被爆樹、無言館、被爆者、軍人像の作品が作られてきた。ずらりと壁面に並んだ作品を前にすると自然と過去に意識が向かい、襟を正す気持ちになってくる。最近は一人称の内向的な表現が目立つので、余計に硬派なメッセージが響いてきたのかもしれない。なお、本展の作品は全て美術コレクターの田中恒子の所蔵品。コレクターとアーティストがタッグを組んだ珍しいタイプの企画展だった。
[3月11日(火) 小吹隆文] |
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