村田真/酒井千穂 |
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8/20~8/23 |
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長島美術館[鹿児島] |
両親の推薦で鹿児島市内を一望できる小高い丘の上にある長島美術館へ。海老原喜之助や黒田清輝、ミレー、モディリアーニなどの絵画、アリスティド・マイヨール、ロダンの彫刻、薩摩焼、ペルー、コロンビア、コスタリカの先史美術や装身具など、幅広いコレクションがすごい美術館。訪れたときは他に来館者はほとんどおらず、貸し切りのような雰囲気だったが、遠くなければ何度でも足を運びたいほど見応えがある。他に、夏休みの子ども向けの企画で「みんなだいすきアンパンマン やなせたかし展」を開催。もうこれはついでに見るくらいで、という軽い気持ちだったけれど(すみません)この最後の展示室でまた感動。89歳にして今も制作し続けているというのもさることながら、自ら手がけているのはストーリーやキャラクター、詩だけではなかった。自らの戦争体験が色濃く反映されているというアンパンマン(アニメ)のテーマソングは、氏の切実な願いが込められていて、歌詞を読めば読むほど感慨深い思いに。美術館を出ても「愛と勇気だけが友達さ」というフレーズがずっと頭の中を巡っていた。
[8月20日(水) 酒井千穂] |
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チャイニーズ・ドリームin丸の内──中国現代美術展
8/8~21 丸ビルホール[東京] |
もろ北京オリンピックにあわせた企画。主催はニッポン放送で、ツァイト・フォト・サロンのコレクションによる。ツァイト・フォト代表の石原悦郎氏が中国現代美術に注目したのは90年代のこと。そのころだったか、石原さんに「張暁剛(ジャンシャオガン)をどう思う?」と聞かれたことがある。今回は出てないが、無表情の人物を正面から描いた家族の肖像画で知られ、2年ほど前に中国現代美術としては最高値を記録した画家だ。石原さんは10年も前からいまの中国アートバブルを見越していたのだ。その石原さんもいうように、中国現代美術は西洋とは異なる文脈に立ちながら、というか異なるがゆえに、勢いがあって圧倒的におもしろい。満身創痍のスーパーマンや黄金のウンコを描く季大純(ジ・ダチュン)、サングラスをかけた馬ヅラのリアルな肖像画を描く周鉄海(ジョウ・ティエハイ)ら、29点の出品。
[8月20日(水) 村田真] |
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尚古集成館[鹿児島] |
そんなつもりはないのだけれど、訪れるところはなんだか「篤姫」絡みばかりになっていた。幕末島津斉彬の時代には集成館という工場地帯だった尚古集成館へ。島津光久がかまえた別邸、仙巌園(磯庭園)に隣接し、島津家伝来の文書や書画、薩摩切子や薩摩焼、機械類など約1万点を収蔵している博物館。本館では製鉄、造船、紡績といった工業生産で当時、近代化をリードしていた機械工場の雰囲気を再現した空間に、島津と薩摩の歴史や文化などを紹介する資料が展示されている。別館では斉彬の生涯をたどる島津斉彬展を開催。知らなかったけれど斉彬は絵が上手い。帰り道、この人がもう少し長く生きていたら歴史は変わっていただろうなという例え話で盛り上がった。
[8月21日(木) 酒井千穂] |
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neoteny japan
7/18~9/15 鹿児島県霧島アートの森[鹿児島] |
長島美術館でポスターを偶然目にして、父にリクエストして霧島まで連れて行ってもらった。精神科医であり、現代美術のコレクターである高橋龍太郎氏のコレクションから80点を紹介する展覧会。奈良美智をはじめ、できやよい、名和晃平、さわひらき、山口晃など、90年代以降の日本の現代美術のアーティスト33名の作品を展示。幼さ、かわいい、アニメ、オタクなど「neoteny(幼形成熟の意)」をキーワードにこの世代が生み出した表現世界を多角的に読み解くというものだったが、そのテーマについて考えるのも充分の内容とボリュームで、年老いた両親との話も尽きなかったのも嬉しい。それにしても北九州市立美術館もアクセスが悪いが、ここは一体どんな人が訪れるのだと思うくらいの山奥でさらに遠い。野外ではアーティストが実際に来館して構想・制作したという22の作品のほか、館内には草間彌生や村上隆の作品なども展示。西川勝人のほおずきをイメージした白い彫刻のあるアプローチエリアがとても美しかったが、またしても大雨で野外作品のコレクションを見てまわるのを断念しなければならず心残りだ。
[8月22日(金) 酒井千穂] |
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五姓田のすべて
前期:8/9~31/後期:9/6~9/28 神奈川県立歴史博物館[神奈川] |
洋風画の横浜絵を創始した五姓田芳柳を始祖とし、息子の義松、娘の幽香、養子の二世芳柳ら五姓田派の作品を集めたもの。展示室は狭いうえガラスの陳列ケースが並んでいるので、掛軸仕立ての横浜絵や大きめの油絵は壁に、水彩や素描はその手前に寝かせて見せている。それでも足りず、9月には展示替えをするという。最後の部屋には弟子たちの著した美術の教科書なども出ていて、高橋由一や黒田清輝が追求したモダニズム絵画とはひと味違う、もうひとつの明治美術をかいま見せてくれる。
[8月23日(土) 村田真] |
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