橋詰宗の記事

今回の投稿が最後の投稿になりますが、ここ数カ月で思ったこと、そしてこれからの活動内容をひとつ。

このブログ開始と丁度同じ頃来日し、なんども投稿でとりあげたAbakeたちが先日3ヶ月のレジデンスを終え、ロンドンに旅立っていきました。僕もRCA時代からの付き合いもあり、かなり頻繁に彼らと行動に共にしたり、一緒に蕎麦を作って映画を鑑賞したり、本屋で食事会をしたりしました。最近では彼らの出版物に関するレクチャーをワークショップ形式で行ったりと、短い時間でしたが非常に内容が濃い時間をいっしょに過ごしました。

丁度いまTokyo Wonder Siteで彼らの展示会をやっていますが、その展示を見て改めて再認識したのは、彼らが東京という未知の場所に滞在し、そこでパーソナルに感じた事やコンテキストをたくみに操って作品を制作している事です。いま展示中のSuzuki Hotelというホテルも渋谷の某公園にひっそりと建てられ、訪れる人を待ち続けています。彼らが行ったSuzuki Afficeも東京の秘密の場所、目に入らない場所という情報をうまくあやつって作品を作っていました。

展覧会といった特別な場所でも長い時間彼らと過ごしましたが、思ったのは彼らの中でものを作ること、選ぶこと、音楽をきくこと、人とあうこと、話すこと、食べること、そいういったこと全ての中に境界がなく、つねにそれらを並列なものとしてうけとめてその中から面白いことを発見していく眼差の重要さでした。東京にいると恐らく永遠に気づかない、そしてヨーロッパに滞在していた僕らのような人間でも帰国後時間がたってしまうと忘れがちなことを再認識させてくれました。

彼らがこの数カ月で行ってきた実践はこれからの東京で何かを行う原動力にきっとなると思ってます。それはAbakeと関わりをもった人たちみんなが思っていることだろうし、そんなみんなでいま東京でいままでにない仕組みを作ろうという動きも少しづつでてきています。

個人的なところでは来月の5月下旬、目黒のCLASKAというホテルの2フロアを利用してDIYをテーマにしたイベントを企画しています。DIYとは日本人のイメージする日曜大工としてのそれではなく、モチベーションを指す言葉として使われていて、日常パッシブな状態で日々を過ごす事から一歩前進し、身の回りのものやことをたくみに組み合わせて生活をゆたかにするという意思がこめられていて、そのイベントでは会場に来た人と参加クリエイターや企業が共にものを作る、という事を考えています。そんな人と人とがつながるための足場づくりそのものも、編集的な作業と思っていて、デザイナーという職業を行いながら同時にそのような活動を今後は拡張していければと思っています。イベントの詳細については後日CLASKAのホームページ等で掲載されると思いますのでどうぞお楽しみに。

短い間でしたがどうもみなさんありがとうございました。
それではまた!

さて、前回の投稿の続きです。オラファー・エリアソン展意外にも見所がいろいろありました。もともと建築が素晴らしいのと、東京よりわざわざ行くという事もあり、毎回いろんな展示にわくわくします。

オラファー・エリアソン展のあとに併設のライブラリーをちらっと見ていたら、僕がデザインした紋黄蝶がウィンドウに堂々と展示されていました。これはうれしかったなぁ。なんで展示してあるかというと、後述のミナの展示が開催されていたからなんですね。思わぬ出会いにとても嬉しくなってしまいました。

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先週、個人的な白川郷の旅行の帰り道に金沢21世紀美術館に立ち寄ってきました。目的はもちろんオラファー・エリアソン展です。僕が丁度RCAのインタビューでロンドンに滞在していたときにTATE MODERNで展示していた太陽のインスタレーションに強い感銘を受けて、いつか日本でも彼の大規模な展示が見たい、と思っていただけに嬉しさもひとしおでした。

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さて前回の投稿の続き、SOCIAL PASTA 7の会場の様子です。

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全面スクリーンに「UNDERGROUND」が投影されました。日本人と外国人が入混ざっているので、プロジェクターを2台同じ位置において、1台の字幕以外の部分をかくして上下に英語と日本語の翻訳を表示!まさにバイリンガル。

先日、Suzuki Åfficeの関連イベントとして開催された "SOCIAL PASTA 7"に参加してきました。このイベントはロンドンでÅbakeやその友人が不定期に開催している夕食会・ワークショップで、日本での開催は今回がはじめてになります。


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2月10日に発売されました誠文堂新光社のグラフィックデザイン雑誌『アイデア』339号の特集、「ぼくらのデザイン、みんなのデザイン」に作品を掲載していただきました。4ページにわたって、ミナ・ペルホネン、YCAMなどの最近の代表的な作品の紹介をしていただき、あわせてゼロ年代のデザインとこれからのデザインについてのインタビューも掲載されました。また、同号巻末に収録された「2000年代雑誌ガイド──日本の場合」の紙面デザインも担当させていただきました。

これまで、『アイデア』というとみなさんのイメージされるように20世紀のデザインの巨匠やゼロ年代に入ってからはかなり個性的な特集の記事で話題をつねに集める雑誌です。僕も父が仕事の関係で購読をしていたので子どもの頃から手にしていた、いわゆるデザインの王道の雑誌として有名ですが、今回は主に20代後半〜30代後半の活躍するデザイナーにフォーカスをあてて特集が組まれています。

タイトルが示すとおり、これまでとデザインのあり方が着実に、そして急速に変わろうとしています。そんな流れに編集長の室賀さんも非常に敏感にアンテナを張っていて、今回光栄なことに記事を書いていただくことになりました。

東京ピストル、原田さん、中野くんといった同世代のデザイナーが一同になっている事だけでもとても嬉しかったのですが、個人的に良かったなと思うのはそんな若手といわれる人たちの声を文字でしっかり読めた事です。それぞれのデザインにももちろん個性が表われているのですが、同時にそれぞれの思うデザインへの姿勢、眼差しは明らかにこれまでのデザインの思想から一歩踏み出したものになっています。

産声を上げたその時から産業と共に極度な専門領域として発達してきたデザインという考えが、ここに文章を書いているデザイナーや周囲で確実に他領域にわたった活動へと変貌していっています。「デザイン」という主体的な行為ではなく、価値や認識が変わるきっかけを与えることのできる足場のような役割にデザイナーの使命は変容しているように思います。そんなことをこのアイデアの文章を読んで再認識したと共にこれからだぞ!とみんながお互いにそれぞれの背中を押してくれているような、とても嬉しくなる特集です。大手書店ではだいたい取り扱いもありますし、近所の自分のお気に入りの小さな本屋でもかまいません。ぜひいちど手にとって読んでみてください。

下記の『アイデア』のブログにも情報が掲載されていますのであわせてご覧いただけると光栄です。
http://www.idea-mag.com/jp/publication/339.php

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先日の食事会の途中でÅbäkeのMakiから思わぬものをもらいました。手渡されると、それはロンドンに住んでいた人なら非常に馴染みの深い、tube(地下鉄)のマップ。「開いてみて!」とMakiから言われてなにげに開いてみると、中もこれまで見慣れていたマップが印刷されています。でも良く見るとなんだかシンプルになっている。。。その次の瞬間気づいたのはTubeのマップの中心に描かれていて、かつそのマップのシンボルとしても機能していたテムズ川が見事に削除されている事!さすがに驚きました。リサーチしたところ昨年Tubeのマップをリデザインした際に様々なディティールに変更を入れ、その中にテムズ川を取り除くという案も盛り込まれていたのです。もちろん他の修正に関して見やすくなったな、と思うところも多々あるのですが、さすがにテムズ川の件はロンドン市民から大避難がおこったらしく、おなじくMakiから手渡された昨年12月版のマップにはしっかりとテムズ川がカムバックする、という結果になったみたいです。

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そんな12月までのテムズ川のないマップにMakiがひょこっとグレーの紙を上にのせました。よくみると、、、。

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Tubeの地図と同じサイズの紙に、ありし日のテムズ川を書いて、町の地図の中にこの紙を差し込んだみたいなんです!なんというか、本当に彼らほど日常生活とものを考えていること、つくることがつながっている人もいないなぁ、と思いました。突拍子もないデザインやスタイリッシュなデザインでなく、なにか日常の小さな問題から大きな問題までちょっとしたアイデアで手助けできたり問題解決ができる可能性をデザインという行為が持っていることを実感しました。日本に帰国してしばらくして、彼らのような本当にピュアな心でものづくりをしていくことがむずかしかったり、間に合わせで形を作ってしまっていた自分に反省するとともに、なんだか忘れていたロンドンのフレッシュな空気が通り抜けていった感覚でした。いやぁ、それにしてもこの作品は敵だなぁ。

そんな彼ら、ある日本人アーティストとなにやら変なイベントを企画しているようです。まだオフレコですが近いうちにその話もレポートできると思いますのでお楽しみに。

先日、とあるロンドンのグラフィックデザイナー達との夕食会に参加しました。Åbäkeというデザイングループで現在とある機関のアーティスト・イン・レジデンスで東京に滞在中です。実は彼ら、僕がRoyal College of Artに留学していた時のチューターです。グループ名からして「どうやって読むの?」と思われる方もいらっしゃいますが、実は読みからして解釈は様々。「アバケ」、「オーベーク」、「オバケ」と人によって読み方も様々です。これまでも様々なデザインプロジェクトやDesignTideなどのイベントで来日していた彼らですが、今回の滞在は3ヶ月と長期間でこれからどんな活動をしていくのか非常に楽しみな人たちです。


ともすれば日本を含む文化圏や先進国においてデザインとは非常に表層的な観点から行われる事がありますが、彼らのアプローチはまったくその逆をいくもので、彼らのデザイン哲学においてはコンテキスト、リサーチ、日常、実践といったキーワードはとても重要なものです。


既に彼らのユニークな活動はスタートしていて、来日して成田空港から滞在先までまっすぐに向い、そこから一週間強の期間一歩も出ずにその環境を内部から知る、というプロジェクトを既にスタートしています。その一環で僕や他の友人・知人関連を招待しての食事になりました。実際にどうやって食事などは調達しているの?と疑問に思われるかもしれませんが、親しい友人達にしばらく差し入れをして貰っていたそうです(笑)。僕が日本には素晴らしい出前のシステムがあるよ!と伝えたらとても興味深そうにしていました。はじめは既に来日する前に日本の社会構造や問題をリサーチして、ひきこもりやニートといった問題を踏まえてのコンセプトだと思ったのですが、むしろ彼らがこれから長期間活動する拠点となるレジデンスの環境を内部からよく知るところからはじめよう、というコンセプトだそうです。


活動の拠点ロンドンにおいて彼らは非常にユニークなワークショップやレクチャーを頻繁に開催しています。日本でもお馴染みなものでは「Total Trattoria」という夕食会のイベントがありますが、これはプロダクトデザイナーで親交の深いMartino Gamperや知人達で開催された会で、出される食事はもちろんの事、使用される食器や机、その他必要なものを彼らがデザインをして友人を振舞う内容になっています。その様子が収録されたブックレットも出版されています。


先日の夕食会はマイ箸を持参で各自得意料理の具材を用意してその場で作る、という事になっていましたのでそんな彼らに喜んでもらえるものと思い、ユニークな野菜寿司の具材を用意してワークショップ感覚でみんなで楽しくお寿司を作りました。


彼らの基礎にある哲学や活動はいまの自分のに非常に大きな影響を与えています。それについては次回の投稿で書きたいと思っています。それまでに下記のURLにて彼らの活動やTotal Trattoriaについて読んで知ってみてください。


http://www.myspace.com/abakespace

http://www.dezeen.com/2008/03/10/total-trattoria-by-martino-gamper/

http://imomus.livejournal.com/124195.html


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みなさまはじめまして。橋詰宗と申します。
新年あけましておめでとうございます。

年始より暫くの間、artscape BLOGにて記事を書かせていただきます。多くの方が私が何をやっているのかご存じないかと思いますが、デザイナーとしてアートディレクション、グラフィックデザイン、ブックデザイン、ウェブデザインと言ったコミュニケーションに関わる活動をしております。

他のブロガーの方がアートに関連する仕事に携われている方の中でなぜデザイナーがブログを?と思われる方も多いかもしれません。いままではその専門領域に集中的に携わる方々が記事を投稿するブロクが多かったように思われます。実践の場においてもデザインや芸術の領域が必要以上に細分化され、その事が多くの可能性を狭めていっていたように思えます。多くの方々が持たれているその価値観が最近、急速に変わろうとしています。

私は現在東京を拠点に活動をしていますが、世界有数の大都市であるこの場所で創造的な活動や仕事に携わる方の並列なコミュニケーションがあまりにも少ないことをこれまでは痛感してきました。しかしゼロ年代という時代に社会に出て、ようやく精力的に活動を行うことができるようになった主に私と同世代の様々な領域の方々が色々な場所で新しい可能性を模索しようと動き始めているのを感じています。

それと呼応するようにアートと芸術、日常と非日常といった分節化されていたものも少なからず身の回りで関係性が変わってきています。私は主に建築やアート、ファッションという領域で活躍される方々や団体とお仕事をさせていただいていますが、これまでとは全くちがった関わり方や仕事のやりかた、アウトプットが生まれてきている事を実感しています。

例えばワークショップのカタログを単にデザインするだけでなく制作プロセスそのものをワークショップの文脈に落とし込んだり、ファッションカタログを制作する際にそれがどれだけエモーショナルなものとして、その人の日常と関わってくるのかを考える。このような形態やスタイルばかりに目をやるのではなく、デザインが社会・日常の中で時間軸や空間性を伴いながらあり続ける事を考慮することはもはや紙やモニターといった一元的な世界でグラフィックが語られる限界を示唆しているように思います。そしてその関係性を見つめる眼差しは他のデザインの領域や芸術においても共有される視点だと考えます。その点において私がデザイナーとしてアートの領域をメインにしながらもより横断的な考えをこの場で書くことができればと思っています。

それでは皆様よろしくお願いします。

ブロガー

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