昨年一年間、毎月欠かさず開催する個展「XXXX STREET SNAPSHOTS」(photographers' gallery)を継続した王子直紀の活動は、もっと注目されるべきである。ノーファインダーのストリート・スナップという、古典的な手法を愚直に続けているだけのように見えるかもしれないが、その愚直さは今日ではむしろ、批評的な意味を持つように思われる。写真家という主体が公共空間においてスナップする行為が、今日の管理社会において忌避されつつある一方、ウェブカメラのような非人称的な視線が世界全体をスキャンしつつあるという相矛盾した現況において、王子の活動は二重の意味で批判的な視線を差し向けていると言える。スナップショットによって得られる、アクシデンタルにシャッターが切られたかのようなその画像は、非人称的な眼差しの気味の悪さに近似する一方で、同時に過去の写真家たちが築き上げてきたスナップショットという手法の歴史にも再考を促すという点において、見た目以上に過激な試みである。なお王子は、川崎とソウルにおけるスナップを併置した興味深い写真集『TELOMERIC』(photographers' gallery)を昨年上梓していることも、付記しておきたい。