小吹隆文/福住廉 |
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5/25 |
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三瀬夏之介「僕の神さま」
5/13~5/25 neutron[京都] |
三瀬夏之介がフィレンツェでの滞在を終えて初めて作品を発表した展覧会。さまざまな和紙を継ぎ足し、全体の輪郭をゆるやかに形成していく手法はこれまでと同様だが、今回の新作はその全体の輪郭が楕円形に整えられている。距離を取って眺めてみると、まるで目玉に映りこんだ光景を覗きこんでいるかのような錯覚を覚える。必然的に両目の展示を期待してしまうが、三瀬の表現はいまや巨大な空間と真剣勝負する段階に到達しているのかもしれない。
[5月25日(日) 福住廉] |
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小山田徹監修 The Act of Looking 実測図の展覧会
5/13~6/1 VOICE GALLERY pfs/w[京都] |
石や木、動物の骨、日用品などの実測図の展覧会。方眼紙に描かれた実測図と、その素材であるモノが合わせて展示されている。博物学的な好奇心と手法によって丁寧に描かれた実測図は、その厳密な正確性が数学的な美しさを醸し出しているが、だからといって文字どおり客観的な実測はありえないのだという。たとえ同じ素材を描いたとしても、人によって着眼点が異なるため、たとえばどの面を正面として描くかという点に、ちがいが現われてくるそうだ。たしかにアートである必然性は微塵も感じられないが、しかし、こうした原初的な手わざを誰もが一度は経験したことがあることを思えば、実測図はたんに科学的な資料というより、絵画という自明の形式を現象学的に還元する、きわめて反省的な身ぶりとして考えることができる。
[5月25日(日) 福住廉] |
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液晶絵画
4/29~6/15 国立国際美術館[大阪] |
ビル・ヴィオラやブライアン・イーノ、やなぎみわ、森村泰昌、鷹野隆大、千住博などが参加する展覧会。「液晶絵画」とはなんのことだかわかりにくいが、本展がStill/Motionと訳されているように、どうやら絵画と映像のあいだを指し示す造語らしい。けれども、全体的に電機メーカーによる液晶テレビの展示会のようで、いったい何が問われているのか、まったく理解に苦しむ展覧会だった。動く絵画ということであれば、アニメーションの豊かな伝統を持ち出すまでもなく、やなぎみわや森村泰昌、あるいは小瀬村真美などの系譜がすでにあるが、鷹野隆大の写真や千住博の日本画が入っているところを見ると、その系譜を歴史化しようとしているわけではないらしい。ただ、特徴的だったのは、プロジェクターより液晶テレビを多用していたところ。これは画素数が飛躍的に高まった昨今の新技術を披露するというより、むしろ画面の隅々までクリアに撮影された映像をあくまでも絵画として帰着させたい企画者側の隠された欲望を反映していたように思えた。フレームが不確定なプロジェクターとは対照的に、液晶テレビは絵画と同様フレームがきっちりと確定されているため、絵画と同じように壁にかけて展示して、絵画と同じように鑑賞させることができるからだ。だが、絵画という領域じたいが不確定で無根拠であることが明らかになりつつあるいま、新たな技術の導入や異分野との融合によって絵画を増築しても、新たな廃墟を作り出すだけではないだろうか。それよりむしろ、ちょうど小山田徹が試行錯誤しているように、絵画という形式の根源にいちど立ち戻り、そこから絵画を再建するほうが、よっぽど健全ではないだろうか。
[5月25日(日) 福住廉] |
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