村田真/酒井千穂 |
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6/20 |
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国立西洋美術館 [東京] |
来年の開館50周年を前に、ル・コルビュジエの建築が重要文化財に指定され、世界文化遺産にも推薦された上野の西洋美術館を、某出版社の編集者たちと探訪。ロダン《考える人》の前で待ち合わせ、コロー展を横目に(まだ見てない)常設展示室へ。つべこべいいながら建築をチェックしていくと、なるほど普段は見逃していた空間の細部が浮かび上がってくる。中央の吹抜けのホールからスロープを昇って2階の展示室に入り、ホールの周囲を一周するように見ていくわけだが、コルビュジエは展示室が手狭になったらその外側に展示室を設け、四角い渦巻き状に増殖していくことを考えていたという。敷地の問題もあって物理的には不可能だが、考え方としてはライト設計のグッゲンハイム美術館や由一の構想した螺旋展画閣を平面化したものに近い。ところで、普段ほとんど気にしなかったが、2階の展示室からさらに上へ幅の狭い階段が3本ほど延びているのをごぞんじだろうか。これはおそらく上階(中3階?)に小品を見せる天井の低い展示室があるはずだが、ぼくの記憶では入った覚えがない。いつから使われなくなったのだろう。あと、展示壁面のすぐ前に円柱が立っていたりして、美術館建築としては考えられないようなデザインもある。
[6月20日(金) 村田真] |
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チェ・ウラム「Anima Machines」
5/27〜6/28 スカイ・ザ・バスハウス[東京] |
圧巻は、吹き抜け空間に吊り下げられた5メートルはあるかと思われるブドウの房のような金属彫刻。その骨格が、デュシャンがレディメイド作品に使ったビン乾燥器(天地逆)を連想させるのは偶然か。そこにつぼみを閉じた花の彫刻が鈴なりにぶら下がり、一つひとつが順々にゆっくりと花びらを広げ、明かりを灯していくのだ。作者はおそらく不気味さをねらったのではないかと思うのだが、ここまで見事につくり込んでしまうと観客はうっとり見とれてしまい、アートより商業用ディスプレイとして活用したほうが採算が合うんじゃないかと、よけいな心配をするのだった。
[6月20日(金) 村田真] |
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青春のロシア・アヴァンギャルド
6/21〜8/17 Bunkamuraザ・ミュージアム[東京] |
カンディンスキーやタトリンは少ないけど、マレーヴィチとピロスマニは10点ずつあるという変わった構成。アリスタルフ・レントゥーロフやヴァシーリー・シュハーエフら知らなかった作家も多く、ロシア・アヴァンギャルドの広がりが堪能できる。ふと思うのは、それ以前の19世紀絵画とその後の社会主義リアリズム(つまりアヴァンギャルド以前と以後)も併設すれば、これらがいかに先鋭的だったかがわかるのに。
[6月20日(金) 村田真] |
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細川真希展 増殖:真希モード
6/18〜6/25 Bunkamuraギャラリー[東京] |
目のでかいちょっとレトロなキャラがレオナルドやフェルメールの名画に侵入する、ま、ありがちな絵。
[6月20日(金) 村田真] |
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ハマヤキ故郷へ帰る
4/26〜6/22 神奈川県立歴史博物館[神奈川] |
明治初期に超絶技巧の陶磁器が輸出用につくられていたのは知っていたが、その生産地のひとつが横浜だったとは知らなかった。もちろん港が近いせいだが、関内を中心に陶磁工や絵付師、商店などがひしめいていたという。圧巻は高浮彫の花瓶。器の表面に鳥やネズミや草花を浮き彫りにしている、というより、別につくったものを貼りつけていて、鳥の頭なんか10センチくらい飛び出しているのだ。かと思えば逆に、内側にえぐり込まれた沈彫ともいうべき(とはいわないが)花瓶もあって、明治マニエリスム全開なのだ。この展覧会、大して宣伝してないにもかかわらず口コミで話題が広まったらしく、すでにカタログは売り切れ、チラシすらないという。
[6月20日(金) 村田真] |
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影絵人形劇蝸牛車──シッポ団による「シッポ団の夕飯会」
6/19、6/20 スガマチ食堂[京都] |
食事つきの影絵人形劇の公演。大人ばかりの予約客で満員、しばらく体育座りで過ごさなければならないほどぎゅうぎゅうの小さな会場(食堂)の3つの壁面で楽しい音楽の生演奏とともに繰り広げられるセリフのない物語。かわいいモチーフや、色とりどりの光と影のヴィジュアルイメージは繊細な美しさで目を見張るけれど、ストーリーが強烈。登場した鶏はあっけなく殺されて鍋の中に放り込まれるし、ハンプティ・ダンプティもあっさりとゆで卵に。シュールな内容だが知的な雰囲気に包まれていて完全に大人の世界。そして7つの演目が発表されたこの影絵夕食会、実際の料理のメニューにも「鶏のフライパン焼き」「ハンプティ男爵の丘」など、物語とリンクしているネーミングがついていて、見た目の工夫も細かい!影絵というイメージから、正直言って甘くみていた(すみません)が、ひとつずつの要素がどれもファンタスティック。このひととき自体が素晴らしい作品になっていた。
[6月20日(金) 酒井千穂] |
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