ジョン・ウォーターズ展/Counter Culture展/East Village USA展/釜山・ビエンナーレ/サンパウロ・ビエンナーレ/アン・ソフィー・シデーン個展
ニューヨーク/ニューミュージアム・オブ・コンテンポラリーアート 神谷幸江
●2004年担当の企画および抱負
昨年12月から海を超えての引っ越しの末、ニューヨーク、ソーホーにあるニューミュージアム・オブ・コンテンポラリーアートにてキュレトリアルのポジションに就いている。
美術館の名前にある通り、77年の設立以来「美術館の新しい形」を模索してきた所だが、今年から大きな転機を迎える。5月に現在の場所をクローズし、2年間特定のスペースを持たずに活動を続け、2006年春、ロウア−イーストサイド(Bowery St. &Prince St.)の新サイトに完成予定の新建築にて再オープンする。設計はコンペにて妹島和世・西沢立衛のSANAAに決定し、昨年秋にはデザインも公表された。地下2階地上7階。各層が「だるま落とし」のようにずれ重なっているので、どの階も天井の一部から自然光が差しこむ開放的な空間が特徴的である。美術館の引っ越し。それまでの期間は美術館を作品をおさめる「箱」とする概念から離れて、これからのインスティテューションのあり方を検討し、実験的実践をする貴重な時間となる。
現在の場所での最後の展覧会となり、コーディネーションを担当している次回展は、カルトな映画監督として独特の作品世界を作り上げているジョン・ウォーターズ展である。マスカルチャーにインスピレーションを受け、写真、映像の複製性に魅了されたアーティストでもある彼の創作活動を、劇場的演出で紹介する本展は、分野越境的な今日の美術表現のパイオニアとしての視点を発見できるものにもなるだろう。
また今後予定されている展覧会は、夏に移転後の拠点となるバウアリ−通り界隈のいくつもの店鋪を会場にするCounter Culture展(ウェブサイトから無料ダウンロードできる解説を、聞き歩きながら街の巡ってのツアーが楽しめる仕掛けを準備中)。秋にはグラフィティー、もしくはある種のムーブメントと捉えられるに過ぎなかった80年代前半のイースト・ヴィレッジのアート・シーンを検証するEast Village USA展。NYのアートシーンの一時代を、美術史の中で確かに捉えなおそうとする試みを控えている。
■神谷幸江
ニューミュージアム・オブ・コンテンポラリーアート、アソシエイト・キュレータ
「アンダーコンストラクション:アジア美術の新世代」(国際交流基金フォーラム+東京オペラシティアートギャラリー、2002−2003年)、「スペースジャック!」(横浜美術館アートギャラリー+横浜ポートサイドギャラリー、2001年)をはじめとする展覧会を手掛けたほか、朝日新聞、美術手帖、Art Asia Pacificほか国内外の雑誌、カタログに記事を執筆。昨年12月より現職。