メディア・アートでは、アジア・パシフィック地域のメディア・アート関係者やセンターのネットワークが広がりつつある。「アジア・パシフィック」といっても地理的にその範囲は広く、地域や国の文化・政治・経済的背景がまったく異なるため、それぞれが地域に根ざした活動を行いながらも互いに連携していくシステムを構築していく必要がある。前述のDigi-Portalを契機に、複数のセンターや大学、人々が情報を共有し、いずれは共同プロジェクトやレジデンスの実施など、各地域が提供できるものをつなげて相補的に利用しあう、そのような動きに微力ながら関わりたいと思う。
山口情報芸術センター(YCAM)では、ダムタイプと池田亮司が2月中旬の発表に向けてレジデンスを開始している。池田は、映画館での実施(世界巡回)を前提とした新作ライヴをYCAMコミッションで制作するという。ダムタイプは、パフォーマンス《Voyage》およびインスタレーション《Voyages》の新ヴァージョンを制作、発表する。YCAMの開館にあたって、設計者の磯崎新氏とともにアーティストの立場から設備や機材を検討してきたダムタイプや池田が、その環境を自ら使用した成果としても期待したい。
政府がメディア・アートを推進しはじめた台湾では、今年いくつかのメディア・アート展が開催されるが、なかでも世界的なシーンを俯瞰する「NAVIGATOR - Digital Arts in the Making」展(Taiwan Museum of Art, Taichung, 4〜6月)は、自らアーティストとしても活躍するワン・ジュンジー(Wang Jun-Jieh)のキュレーションによるもので、日本からは藤幡正樹、エキソニモら数人が参加する。
ヨーロッパでは、ISEA2004年がバルト海をはさむ3都市―ストックホルム(スウェーデン)、タリン(エストニア)、ヘルシンキ(フィンランド)―を船で結び8月14日〜22日に開催される。「ネットワークド・エクスペリエンス」「ウェラブル・エクスペリエンス」「ワイヤレス・エクスペリエンス」と都市別に設定されたテーマは、メディア・アートがますます都市や日常へと浸入しつつあることを物語っている。
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