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学芸員レポート
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「草間彌生展〜クサマトリックス」/モエレ沼公園/
JRタワー・アートプロジェクト/札幌アーティスト・イン・レジデンス展
札幌/芸術の森美術館 吉崎元章
2004年担当の企画および抱負
 草間彌生展〜クサマトリックス(芸術の森美術館、6/5〜8/22)
 草間彌生といえば、水玉や網模様で平面や立体を埋め尽くす作品で知られる日本を代表する現代美術家の一人ですが、2004年度には全国巡回する回顧展をはじめいくつかの展覧会が予定されており、これまで以上に彼女に注目が集まることは必至です。
 その皮切りが森美術館の開館第二弾として2月からはじまる展覧会であり、6月からは札幌・芸術の森美術館にも巡回することになっています。すべて新作によるこの展覧会は、視覚すべてを包み込む環境型インスタレーションが部屋ごとに次々に展開するように構成され、来館者はさまざまな草間ワールドを全身で体験していくことになります。
 強烈な色彩の水玉模様の風船がいくつも浮かぶ水玉だらけの部屋、小さな電球が無限に増殖する空間を通り抜ける部屋、最近手がけている少女達の水彩ドローイングを約2.7メートルに立体化した人形がいくつも配置された部屋(天井、床、壁には少女のドローイングが埋め尽くします)、天と地に向かって無限に続く光る梯子のインスタレーション、草間自身が作詞作曲した楽曲を歌うビデオ作品投影の部屋・・・。海外での個展で高く評価された作品をさらにグレードアップしたものや、初公開の作品で彼女の新境地も見せるものなど、見応えたっぷりの展覧会です。
 森美術館と芸術の森美術館の展示室内の作品はほぼ共通していますが、それに加えて展示室に至るまでをも作品化しようとする試みもあります。六本木ヒルズといういかにも近未来的な都会的な空間と、自然豊かな札幌芸術の森の空間というまったく異なる二つの空間にどのように作品を展開するかも見所のひとつと言えるでしょう。札幌芸術の森では、美術館前庭の芝生や池に作品を展示する予定です。
 さまざまな年齢層の人々が楽しめ、新たな感覚を覚醒させる草間ワールドにどっぷりと漬かることができるとても刺激的な展覧会です。
2004年の気になる展覧会、動向
 昨年、北海道では彫刻の展覧会の充実ぶりが際だっていましたが、今年もその傾向がまだまだ続きそうです。いま分かっているだけでも、北の彫刻展(札幌彫刻美術館、8/2810/11)、彫刻家 堀内正和の世界展(芸術の森美術館、8/2910/11)、ナンモサ流政之展(北海道立近代美術館、9/1110/24)、寺田栄展(中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館、10/211/28)丸山隆展(芸術の森美術館、10/1712/5)などがラインナップされています。美術館以外でも、イサム・ノグチがマスタープランを手がけた桁外れに広大なモエレ沼公園が、いよいよ長年にわたる整備工事を終える予定です。また、昨年にJR札幌駅南口にオープンしたJRタワーでのアートプロジェクトは、彫刻だけではなく椅子や諸表示を含めたさまざまな空間に巧みにアートを持ち込みとけ込ませる手法が新鮮でしたが、今年3月の約1ヶ月間、一周年を記念して「ちいさな私のおにわ展」と題し、JRタワー内10ヵ所に一般公募による作品を展示します。多くの人が行き交う場所であるだけに、今後もさまざまな事業を通してアートをより身近なものにするものとして期待しています。さらに、札幌市では春に『札幌野外彫刻ガイド』(仮称)を2万5千部発行し無料配布する予定であり、今年はますます彫刻やパブリックアートに対する関心が高まる年になるのではないでしょうか。
 一方、「札幌アーティスト・イン・レジデンス展〜国境を越えた美術の冒険」(北海道立近代美術館、3/27〜4/4)も楽しみです。5年前にスタートした「札幌アーティスト・イン・レジデンス」(S−AIR)は、これまでに14ヶ国28人(3月までにさらに3人+α)の作家を国内外から招き、3〜6ヶ月間札幌に滞在させながら現地制作を支援しつつ、展覧会や講演会、ワークショップを通じて市民との交流を図ってきました。文化庁からの助成を中心にもともと5ヶ年計画でスタートした事業であったため、残念ながらこの展覧会を最後に終了となります。それだけにこの展覧会は、これまでの集大成という意味とともに、将来に向かっての強いメッセージを含んだものになるにちがいありません。2003年度には世界各地から問い合わせが400件以上集まるなど国際的な知名度を上げ、根付きはじめた活動だけに、何らかのかたちで継続されていくことを強く望んでいます。
[よしざき もとあき]
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