村田真/酒井千穂 |
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10/2〜10/10 |
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BIWAKO ビエンナーレ2007
9/30〜11/18 滋賀県近江八幡市[滋賀] |
近江八幡市の旧市街一帯で開催中のBIWAKOビエンナーレ。今は使われていない商家や民家、酒蔵などの空き家を会場に、アーティストたちが失われてしまった土地固有の「風土」に各々の表現方法でアプローチする。廃墟と化してボロボロになってしまっていた多くの会場が、展示空間やライブ空間として見事に再生されていた。300年の歴史のある造り酒屋の元搾り蔵を会場にした、大舩真言の絵画作品の展示は幻想的だった。カビか酵母菌か分からないがまったりとした匂いが染み付いた、暗く湿った静かな空間に、深い奥行きを感じさせる不思議な光景が浮かび上がる。酒搾りの作業台だったのか、階段がついている台にのぼり、少し離れた距離から作品を眺めるのだが、徐々に暗闇に目が慣れていって、時間とともに絵画の表情が変わっていくように感じられる。訪れた日曜日の晩には、ヴァイオリンの演奏と電子音楽、大舩の作品のコラボレーションライブという素敵なイヴェントも開催された。さまざまな土地へ赴き、平面の「動物」の「放牧」という屋外展示活動を通じてその地域の人々と交流する「羊飼いプロジェクト」を続ける井上信太は、家まるごと一軒を舞台に映像や作品を展開。家の外も楽しい。塀の向こうから首の長いキリンが顔出していた。ジャン・ピエール・テンシンの、フィギュアアニメーションの装置や制作の行程を紹介する瓦ミュージアムでの展示とアニメの上映も面白い。タイムトリップしたような気分になる近江八幡の町をゆっくりと歩き回ること自体が実に楽しいイヴェント。もう一度行きたい。夕方になると、町の店という店がほとんど閉店してしまうのがちょっと寂しいけれど。
[10月21日(日) 酒井千穂] |
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タイムクレヴァスとの出会い──横浜トリエンナーレ2008に向けて
10/21 横浜美術短期大学4号館[神奈川] |
横浜トリエンナーレ2008の総合ディレクター、水沢勉氏の講演会。テーマの「タイムクレヴァス」について、パウル・ツェランの詩を引きながら解説。いわく、時間は無数の傷を負っている。しかしそれをだれも見ることはできない。感じることができるだけだ──そうした時間の傷=タイムクレヴァスを感じるツールとしての作品を集めたいという。前回とは打って変わって、かなり文学的で重厚な展覧会になりそうですね。
[10月21日(日) 村田真] |
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かえっこバザールinアートタウン
10/20〜 21 世田谷文化生活情報センター生活工房[東京] |
三軒茶屋で「かえっこバザール」が開かれ、発案者の藤浩志も来るというので見に行く。かえっこバザールとは、いらなくなったオモチャを子供たちが持ち寄って交換する場。かえるポイントという仮想通貨を設定していたりする点がミソ。会場は予想していたよりはるかに広く、はるかに大勢の親子連れでにぎわっている。もはやかえっこバザールは普通名詞として一人歩きしているんだ。同時に「カエルは続くよどこまでも──かえっこと藤浩志」展も開かれ、吹抜けのロビーにはペットボトルのシャンデリアが下がっている。ビニプラの廃品も分類整理すれば宝の山だということを教えてくれる。
[10月21日(日) 村田真] |
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PHスタジオ、ドキュメンタリー映画上映会「船、山にのぼる」
10/21 BankART1929ホール[神奈川] |
ダム建設で水没する地を舞台に繰り広げられたアートプロジェクト「船をつくる話」。PHスタジオが10年越しで進めてきたこのプロジェクトも、昨年ダムに水が入って船を浮かせ、丘の上に着地させることでひとまず終結を見た。その記録映画が本田孝義監督の手によって完成し、来年からの劇場公開に先立って上映された。これがよくできていて、ドキュメンタリー映画で1時間半というのは長いほうだが、ちっとも飽きさせない。もちろん素材自体のおもしろさが大きいとはいえ、それを1本の骨太なストーリーにまとめあげた本田監督の手腕はおみごと。
[10月21日(日) 村田真] |
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北原愛展──世界をどう区切るのか
10/23〜12/23 資生堂ギャラリー[東京] |
もう10年以上もパリを拠点に活動しているアーティストの、日本では初めての個展。今回はベルギー、ドイツ、イタリア、スペインなど、フランスと隣国の国境を立体化した作品を中心に展示。国境というテーマは日本にいてはなかなか浮かんでこないが、でもフランスだってスイスを除いて隣国と通貨は同じだし、出入国もノーチェックだから、もはや国境の意識も薄れつつあるのではないかしら。少なくとも南北朝鮮(あれは国境とはいわないか)や印パやイスラエルと周辺国の国境に比べたら。それに、国境という仮想の線をスライドさせて立体化するのもどうなんだろう。などと思いつつ、フランスとベルギーの《11m2の国境》に乗ってみたら、デコボコに足の裏のツボを押されて気持ちよかった。なるほど、国境にはこういう効能があるのか。
[10月22日(月) 村田真] |
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