村田真/酒井千穂 |
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4/16 |
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南蛮の夢、紅毛のまぼろし
3/15〜5/11 府中市美術館[東京] |
南蛮とは安土桃山時代に交流をもったポルトガル人やスペイン人、紅毛とは江戸時代の鎖国期に交易のあったオランダ人のこと。だからこの展覧会は明治以前の西洋美術の影響をたどるもの、と思ったら、そう単純なものではなく、明治以降の画家たちが、長く封印されていた「南蛮」「紅毛」の歴史に触発されて描いた作品を集めた展覧会という、時空をワープする構造をもっているのだ。したがって、江戸期の洋風画や踏絵もあるけれど、大半は明治から昭和にかけての日本画で占められている。シーボルトが杉田玄白や平賀源内らに解剖を実演している(実際にはありえない)山村耕花《腑分》、司馬江漢や亜欧堂田善を描いた野田九浦《江漢画房》と太田天洋《亜欧堂先生》、キリシタンの殉教をロマンチックかつエロチックに表現した松本華羊《伴天連お春》や、三露千鈴《殉教者の娘》あたりに注目。
[4月16日(水) 村田真] |
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笹倉洋平 展
4/15〜4/26 ARTCOURT Gallery[大阪] |
2月に愛知芸術文化センターで開催された「アーツチャレンジ2008」は観に行けなかったけれど、そのときの出品作品を特別展示しているというので足を運んだ。137cm×950cmという大画面にペンで描いた夥しい数の線があるところでは荒々しく、あるところでは繊細に密集しながら拡散するドローイング。名古屋での展示環境には納得がいかなかった作家が大満足というだけあって、作品ひとつだけの贅沢な展示空間でそのドラマチックな美しさはみごとに全開だった。
[4月16日(水) 酒井千穂] |
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中西信洋 展 Halation
3/22〜4/19 ノマル・プロジェクトスペース[大阪] |
フリーハンドで描いた鉛筆の直線と余白がかたちを成していく《Stripe Drawing》の新作を中心にした中西の個展。先に徳島県立近代美術館で開催された「IWANO
MASAHITO 現代アートによる徳島再見」では、高さ5メートルの2壁面に、走行中の車から見た空というイメージのウォールドローイングを展開していて壮観だったが、今展ではホワイトキューブの展示壁面(4面)全体にドローイング。空間の真ん中に立って眺めていると図と地が揺らいで壁面に新たな隙間が現われ、不思議な浮遊感に陥った。
[4月16日(水) 酒井千穂] |
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野寺摩子「垢い山」
4/14〜4/26 ギャラリーwks.[大阪] |
工事などにともなって運ばれてくる建設残土の「山」が長い年月をかけて、さも昔からそこにあった小高い丘のように町の風景のなかに溶け込んでいく。作家の地元の町のさまざまな場所から撮影されたこの「山」は緑に覆われていて、一見ごく自然な風景のように思われるが、ここが作品の要であった。野寺は突如見慣れた風景を変貌させるこの「山」が象徴する個人の身勝手なさまに焦点を当てながら、同時に強い違和感もいつしかすんなりと消えてしまうという人々の無意識にアプローチしていた。そういえば、私の故郷に超大型スーパーができて久しい。最初は建設反対が叫ばれていたり「何年保つか」と人々に言われていたそのスーパーは今ではさらに繁盛しているという。たまにしか帰省しない私は、駅前の商店街が壊滅してがらりと変わってしまった町の風景には今でも違和感を覚えるが、結局そこへ買い物へ行ってしまう。
[4月16日(水) 酒井千穂] |
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