村田真/酒井千穂 |
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4/2〜4/3 |
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芸術都市パリの100年展
4/25〜7/6 東京都美術館[東京] |
コロー、ドラクロワからユトリロ、フジタあたりまで、1830〜1930年のパリを舞台に描かれた絵画、彫刻、写真などを展示。カタログにパリ市の人口推移のグラフが載っていて、1831年に70万人台だったのが1921年には300万人に達している。この1世紀にパリは急激に発展し、芸術都市として確立していったのだ。展示は「都市」「市民生活」「男女のドラマ」などに分かれているが、のっけからセーヌ川に架かる橋の絵が何点も並び、おっと思わせる。が、感心するのはそこだけで、あとは作品も構成もとりたててどうってことない。
[4月24日(木) 村田真] |
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英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展
4/25〜7/13 森美術館[東京] |
1984年の第1回受賞者マルコム・モーリーから、昨年のマーク・ウォリンジャーまで、イギリスのターナー賞受賞者の作品を集めている。これが「イギリス現代美術」かといわれると、ひととおり代表的作家はそろっているようで、なにか違うような気もする。それなりに評価の定まった巨匠が選ばれていた初期のころと、有望作家の登竜門的存在となった最近とでは評価基準が異なるし、細かく見れば毎年ビミョーに違っているし。だいたいなんでデイヴィッド・ホックニーは選ばれなかったんだろう。アメリカに税金を収めているからか? 日本で人気のデイヴィッド・ナッシュやアンディ・ゴールズワージーもお呼びでないのは、結局イギリスではマイナーな作家だったってことだ。ところで、2006年受賞のトマ・アブツは初耳だが、小さめのキャンヴァスになにを描くか決めずに描き始め、あれこれ試行錯誤していくうちに完成させるという作品。今回の出品作品のなかでもっとも地味なもののひとつで、できあがった作品自体どうってことないが、なぜか妙に惹かれるなあ。こんなのにターナー賞やるイギリス人はやっぱクレージーだ。
[4月24日(木) 村田真] |
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ペリー&ハリス
4/26〜6/22 江戸東京博物館[東京] |
日米修好通商条約締結150年を記念して、黒船を率いて日本を開国させたペリーと、初代駐日総領事を務めたハリスに焦点を当てた特別展。これを見ると、当時の両国の世界観の違いが如実に表われていておもしろい。たとえば、アメリカ人の描いた石版画《ペリー久里浜上陸の図》と日本人の描いた錦絵《米船渡来旧諸藩士固之図》とでは、似たような情景を描いているのになんでこんなに違うの? アメリカ人の冷徹なリアリズムに対して、日本人は夢でもみているようなお祭り騒ぎ。これじゃあ勝てっこないよ。もっと極端なのはペリーの肖像画で、日本人は天狗のように描いている。まあこれは想像で描いたからしようがないけど。もうひとつおもしろいのは、ペリー艦隊に随行したドイツ生れの画家ハイネによる日本の風景画。幕末の寺子屋、お祭り、かまくらの大仏などが白黒の油彩画で描かれていて、まるでレンブラントの版画みたい。
[4月25日(金) 村田真] |
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ホスピタルサーカス第一回公演 空想力学的さんぽ図鑑
4/25 滋賀県立小児保健医療センター隣接・みどりの広場[滋賀] |
守山市にある滋賀県立小児保健医療センターに入院、通院中の子どもたちを対象に昨年11月から毎週ワークショップを行なってきたホスピタルサーカス。一連のワークショップによる子どもたちの制作物から物語と舞台美術を構成し、野外での舞台公演を行なった。平面美術作家の井上信太をはじめとする5名のスタッフが中心となり、パフォーマンス分野で活躍する犬飼美也妃、音楽家の林加奈など、さまざまなアーティストや芸大生、ボランティアスタッフの協力を得て創りあげたワークショップの集大成だ。ノーキャストの舞台だが、物語のナレーションとともに、子どもたちがつくった色とりどりの平面の生き物が巨大な仕掛けによって動きだし、サウンドスケープ・ピアニストの小松正史、林加奈、ホスピタルサーカス代表の坂井基紀のライブセッションの音が会場を盛り上げた。来場者にはホスピタルサーカスの活動ドキュメンテーションとなるDVDと物語絵本のプレゼントも配布されたが、これらも徹底的に手づくりにこだわったもの。本番では、入院中の子どもたちが裏方となって舞台美術が動き出す仕掛けの紐を引っ張り、舞台のスタッフとして活躍していた点も興味深い。アーティストと子どもたちが病院という特殊な環境のなかで生み出した世界には、美術という引き出しの新しい可能性がいっぱい感じられて実に素敵だった。
[4月25日(金) 酒井千穂] |
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