村田真/酒井千穂 |
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9/5~9/6 |
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Animal Scape 井上信太
9/23〜10/5 海岸通ギャラリーcaso[大阪] |
羊飼いプロジェクトの井上信太がこれまでに各地で行なわれた「羊飼いプロジェクト」の映像や平面作品を展示。展示空間の真ん中で不規則に時々ゆっくりと回転するミラーボールが、逆さまに吊るされた平面の動物たちを妖しげに照らしてなんともシュールだ。薄暗い空想の森のなかの物語がこれから始まるという舞台のような雰囲気。この日は大阪城ホール、NPO大阪アーツアポリアが企画運営する「アーティストの話を聞きませんか?」という作家よるレクチャーも開催された。そもそもこの展示は、「ハート大阪秋まつり:10月12・13の中之島は大きな帆船」のプログラムに連動したもので、井上は10月12、13日に中之島の水辺に2000余りの「不思議な水鳥」をイメージした平面作品を設置する予定。行政主催のこのプロジェクト、開催日に向けて準備が整いつつあるなかでも、大幅な予定変更が突然告げられたり連絡の行き違いで困ることが何度もあったそう。講座では、そんな状況で制作する作家としての切実な思いや井上自身の制作スタンスが率直に語られた。その後参加者からは、これまでの活動の経緯や資金といった誰もが気になる美術活動にまつわる質問がいくつも飛び出していたが、ときどき悩み苦笑しながらも井上は真摯な態度で答えていた。こんな裏話を聴ける機会はなかなかないが、20人弱の参加者が気軽に質問できるような和やかな雰囲気で、アーティストや美術との距離も縮まったに違いないと感じられる時間だった。今後の開催にも期待したい。
[9月27日(土) 酒井千穂] |
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塩保朋子「Cutting Insights」
8/29〜9/27 SCAIザ・バスハウス[東京] |
これはすごい。バスハウスの空間に合わせ、高さ6メートル幅3.5メートルの紙をミリ単位で細かく切り込んで吊るしてある。その切り込みは全体で川の流れか昇竜のようにも見え、さらに正面から照明を当てて、裏の壁に切り込みのネガを映し出す仕掛け。細かい根気のいる作業をこなす忍耐力と、全体を見渡せる大局的な視点を合わせもった作家だ。
[9月27日(土) 村田真] |
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安部泰輔「猫のしっぽをたどる話」
9/20〜10/19 HIGURE17〜15 cas[東京] |
谷中から西日暮里へ。黄金町バザールにも出ていた、いや前回の横浜トリエンナーレにも出ていた安部くんの個展。ここでも相変わらずミシンで縫っている。
[9月27日(土) 村田真] |
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帝銀事件・60年:獄窓の画家・平沢貞通展
9/21〜28 ギャラリーTEN[東京] |
西日暮里から根津へ。帝銀事件の死刑囚として無実を訴えながら獄死した平沢の、未公開を含む獄中期の作品40点あまりを集めた展示。作品はおそろしく稚拙だが、それもそのはず、獄中の彼には描くべきモチーフも画材も物理的・精神的余裕もないのだから。だから彼は記憶を頼りに、限られた画材で、死刑の恐怖に怯えつつ描いたのだ。でも以前、丸木美術館かどこかで死刑囚の描いた絵を見たことあるけど、画材はたしか色鉛筆かボールペンだけで、油絵はもちろん水彩画もなかったように記憶する。しかも平沢の描いた紙はそれらに比べてはるかに大きい。だとすれば、平沢死刑囚は制作に関して特別待遇を受けていたのか。そもそも彼は死刑を執行されず約40年間獄中にとどまり、95歳の天寿をまっとうした。これはなにを意味するかというと、当局は平沢が冤罪であることを知りながらいまさら判決はくつがえせないので、獄中である程度の自由を保証しつつ生き殺しにしたのではないかと。もちろん憶測にすぎないが。
[9月27日(土) 村田真] |
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ヴィルヘルム・ハンマースホイ──静かなる詩情
9/30〜12/7 国立西洋美術館[東京] |
知らなかった。デンマークを代表する画家だそうだ。室内に女(おもに画家の妻)がたたずむ情景を描いた絵が多く、フェルメールをはじめ17世紀のオランダ風俗画を彷佛とさせる。ということはチラシでもわかるが、実物に接して目を引かれたのは絵筆のタッチだ。キャンヴァス地が見えるくらい薄塗りだが、縦横に筆触が走り、まるで筆と絵具でキャンヴァスを織り上げていくような描法だ。こんな描き方もあるんだ。
[9月29日(月) 村田真] |
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