2025年最初の編集雑記です。実はartscapeにとって今年は、アート情報サイトとしてのスタートを切ってから30周年を迎えるメモリアルイヤー。さまざまな関連企画を仕込んでいるので、ご注目ください。

この年始、3日間ほど台湾に行ってきました。自分にとっては初の台湾。これまで自分が編集を担当したartscapeの記事のなかでも、台湾での展覧会や、台湾を出自にもつアーティストの作品について取り扱った記事は数多くありました(過去1年間+αだけでもこんなに)。

臺日藝評人交流 演劇批評家台北滞在レポート|山﨑健太:レビュー(2025年01月17日、23日)
①:批評編 https://artscape.jp/article/30428/
②:アーティスト交流編 https://artscape.jp/article/30442/


上原沙也加「緑の日々」|松房子:レビュー(2025年01月08日)
https://artscape.jp/article/28598/


「dialog() Asian Generative Art Exhibition 2024」vol. 2──台北展レポート|陳思宇/岩切澪(翻訳):レビュー(2024年12月11日)
日本語版:https://artscape.jp/article/27566/
中文版:https://artscape.jp/article/27552/


台湾のビデオ・アート(MAMリサーチ010/MAMスクリーン019)|松房子:レビュー(2024年09月05日)
https://artscape.jp/article/20642/


中央山脈と南部横貫公路(台湾)|山川陸:レビュー(2024年07月03日)
https://artscape.jp/article/16609/


樂窩與都會區的族人們, 唐佐欣《家有兩個名字》(THE WORLD Association and urban indigenous peoples, Tso-Hsin Tang《Luma’》/台北當代藝術館「貧窮人的台北:轉運站」より)|山川陸:レビュー(2024年06月04日)
https://artscape.jp/article/14748/


台湾の文学史と近代史|五十嵐太郎:レビュー(2024年05月16日)
https://artscape.jp/article/13357/


台湾の近代建築史|五十嵐太郎:レビュー(2024年05月14日)
https://artscape.jp/article/13345/


【台湾・屏東】「母なる島」の現在(いま)を生きる──第1回台湾国際オーストロネシアン・アート・トリエンナーレ|岩切澪:フォーカス(2024年02月01日号)
https://artscape.jp/focus/10189935_1635.html


【台北】あなたと私は違う星に住んでいる。──台北ビエンナーレ2020|栖来ひかり:フォーカス(2020年12月15日号)
https://artscape.jp/focus/10165936_1635.html

さまざまな書き手のフィルターを通して台湾という国の存在は身近に感じつつ、自分自身の眼や肌でも台湾を知りたい、という気持ちは長らくあり(加えて寒がりな自分は東京の冷え込みにすら耐えかねて)、「この日程ならいける!」と思い立ち年末に飛行機と宿を予約。ぎっしり充実した2泊3日でした。

旅の2日目は台北から新幹線に乗って南下すること約1時間、台中へ赴き、国立台湾美術館で開催中の2024アジアアートビエンナーレ「所有令人屏息的(How to Hold Your Breath)」(2025年3月2日まで)などを鑑賞。30組を超えるアジア地域のアーティストのなか、日本からは地主麻衣子氏や丹羽良徳氏が参加しています。

台湾高鐵(新幹線)の車内は日本の新幹線と驚くほどそっくりで、のぞみでは一昨年廃止されてしまった車内販売を思わずここで追体験してしまいました

国立台湾美術館

「所有令人屏息的─ 2024亞洲藝術雙年展」会場にて

建物とエントランスの広場の巨大さにまず圧倒される国立台湾美術館。館内で同時に複数開催されている展示はすべて入場無料で、しっかり観ようと思ったら丸一日かかります。先日公開したばかりの山﨑健太さんのレビューでも演劇批評家派遣を通しての台北滞在の様子をレポートしていただいていますが、そこで指摘されているような国家としての芸術文化支援をめぐる状況の日本との歴然たる違いは端々で感じられます。

町中を散策していると出会うたくさんの公園、そして樹木がことごとく良いのです

日本でもよく見かける自転車メーカー・GIANTのお膝元ということもあるのか、シェアサイクルの普及度の高さも印象的。筆者も滞在中、バイクや車を横目に台北・台中の街を自転車で疾走するなか、長らく統治下にあった歴史的文脈に息づく台湾のアイデンティティのあり方が、台北の街を東西南北に駆け巡る道路の名称といったところにも強く表われていることにたびたび思いを馳せました

情報としてだけ知っていた存在を実際に肌で感じて、自分のなかの距離感を確かなものにする経験を、今年もたくさんできたらいい。不安定な状況がなお続く社会のなかで、一人ひとりに少しでも多く、穏やかかつ豊かな瞬間がもたらされることを願う年始です。その一助にartscapeもなれますように。今年もよろしくお願いします。(g)