巡回美術展、と聞いて私たちが思い浮かべるものは人によって異なるだろう。行く先々で行列を生む海外著名館のコレクション展や、各地の美術館学芸員が対象領域における研究成果をもち寄って実現する共同企画、さらに国境を超えて主要都市をツアーするものなど、その規模も性質もさまざまだ。
日本の巡回展では会場となる美術館等に加え、新聞社やテレビ局などのマスメディアが大きく関わってきたのも特徴といえるだろう。また近年は、日本の巡回美術展に長く関わってきた美術館連絡協議会(美連協)が新型コロナ禍後の2022年度に事務局業務を停止し、2023年度から再開するなど、情勢も変化している。そこで現場各所の声も取材しながら、日本の巡回美術展のこれまで・これからを考えてみたい。
(前編より)
展覧会は踊る、そして進む
前編では、日本における巡回美術展のこれまでを概観した。後編では今後の可能性や課題を考えてみたい。大前提として、巡回展とはある展覧会が大枠の内容は維持したまま複数の会場をめぐっていくものと言える。しかし、ひとつの展覧会が巡回する先々で変化することによる可能性もまたある。
すぐに連想するのは、1997年に始まった「Cities on the Move」展だろう。当時30代前後だった、ハンス=ウルリッヒ・オブリストとホウ・ハンルゥによるこの挑戦的な企画は、当時激変下にあった「東アジアにおける都市の変容」をテーマに、ウィーンのセセッション館から各都市へ巡回。巡回先でも新たな作品が制作され、会場構成も変化した。美術展も「変容する都市」となり、「動き続ける展覧会」にもなった試みだと言える★1。ただ、個性派キュレーターたる両者の役割が大きいぶん、巡回先各館はむしろこれを迎え入れるかたちであったかもしれない。
転じて、会場各館の学芸員を大きく巻き込みながら、いわばArtist on the Moveとも言えそうな展開を見せたのが、2022年に高松市美術館と静岡県立美術館で開催された「みる誕生 鴻池朋子展」、およびこれに連なるかたちで2024年に青森県立美術館で開かれた「鴻池朋子展 メディシン・インフラ」である。
この取り組みは巡回展ではなく「リレー展」という言葉で呼ばれ、鴻池は各開催地域の人々や歴史とも関わりながら、行く先々で展覧会の内容を変化させていった。高松では自身の作品に加えて参加各館の学芸員が選んだ高松市美術館のコレクションが並び、静岡では美術館の裏山も体験の場となり、青森では先行2館の担当学芸員も現地での新たな試みに関わった(Curators on the Move?)。作品形態という点でも、完成済の絵画や彫刻が各地をめぐっていくかたちを超え、地域の協力によるプロジェクトやイベント、展示が各地で行なわれた。
端的に言えば、作家の実践が結果的に美術をめぐる制度や既成概念に対する問いかけ・揺さぶりを生み、これに学芸チームが伴走・協働することで、従来の巡回展と大きく異なるものが生まれたケースだろうか。青森県立美術館の担当学芸員・奥脇嵩大氏は同展について以下のように語っている。
「実際にこのリレー展の肝は、動きながら変わり続けていく鴻池さんの『変化』そのものだったし、その変化を受け止めながら補足する場所としての美術館のあり方だったと思います」★2
当然というべきか、そこに必要な労力や試行錯誤は、従来の典型的な巡回展に比して大きくなるだろう。一方で、開催各館がバトンをつなぎ、あるいは並走する動きのなかで、それぞれが手渡し/手渡されたものを考えることになったのも興味深い。
「みる誕生 鴻池朋子展」(2022/7/16-9/4)、展示風景、高松市美術館[撮影:永禮賢 写真提供:高松市美術館]
「みる誕生 鴻池朋子展」(2022/11/03-2023/1/9)、《高松→越前→静岡皮トンビ》、静岡県立美術館の裏山での展示風景[撮影:永禮賢 写真提供:静岡県立美術館]
「鴻池朋子展 メディシン・インフラ」(2024/7/13−9/29)、「オープニング・トーク」の様子、青森県立美術館[撮影:小山田邦哉 写真提供:青森県立美術館]
展示内プロジェクト《車椅子アレコバレエ》のために全国の美術館から館内アレコホールに集まった車椅子に乗り込み展示室に集まった観客。彼彼女らの頭上ではモンゴル狼の毛皮《狼メリー》が回転と停止を繰り返す。壁面には《顔毛皮 狐》、ライチョウやセミの《凧》
巡回先ごとの工夫——地域性・空間性ほか
この例ほどでなくても、従来から巡回先の美術館等で、各々の空間特性や歴史的文脈に基づくアレンジがされることはあった。そしてこうしたケースは、今後いっそう活発になるかもしれない。2025年に豊田市美術館と東京国立近代美術館で開催された「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」は、翌年に兵庫県立美術館に巡回した。同館館長の林洋子氏によれば、その際に以下のような工夫がなされた。
まず同展では、14作家の多彩な実践を紹介するうえで、明確な章立てなどは設けなかった。代わりに、身体、素材、空間などをめぐるいくつかのキーワードがあり、各館ではこれらを活かしつつ会場構成を考案★3。兵庫では、同県にゆかりの深い具体美術協会にいた白髪富士子、田中敦子、山崎つる子、そして兵庫で生まれ育った江見絹子の重要性も意識した構成とした★4。また、話題の展覧会と安藤忠雄設計による特徴的な美術館空間のコラボレーションという側面も発信し、加えて同時期のコレクション展では、やはり具体メンバーとして活動した金山明、白髪一雄らの作品も紹介して館全体のつながりも企図された。
「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」展(2026/3/25-5/6)展示風景、兵庫県立美術館
手前の作品は白髪富士子《白い板》(1955/1985)、兵庫県立美術館(山村コレクション)。その奥には多田美波の作品が並ぶ。壁面左から《周波数37305055MC》など小品6点、つづいて《周波数37303055MC》。中空に浮かぶのが《周波数37303030MC》[写真提供:兵庫県立美術館]
林氏は「当館では巡回企画においても、それを自分たちの地域で行なう意味を考えながら取り組みたいのです。また、近年の巡回展では東京などで先に開催すると、地元の方々でもそちらへ先に行ってしまうことがある。こうした状況で地方館に何ができるかは考え続けていきたいです」と語った★5。
ほか、会期中の関連イベントをいかに工夫できるかなども、各会場での工夫のしどころだろうか。出品作家の多くが物故作家である場合や、各地のコレクション等からなる場合などは、アーティストが直に関わる度合いが相対的に低く、巡回先での創意の主体は各館学芸チームに委ねられる部分が大きいはずだ。上述のような環境下において、自館での鑑賞体験をどう用意するかが改めて問われているとも言える。
巡回展のオルタナティブ
ここで、本稿前編でふれた動きの先に、またはオルタナティブ的に展開する動きもみておきたい。本稿前編でふれた、新聞社など大手メディア企業が主導する巡回展がある一方で、それらとは異なるかたちで得意分野の美術展(巡回展含む)に携わる企画会社もある。
株式会社キュレイターズは多数の藤田嗣治展をはじめとする美術・デザイン展に携わり、企画に加えて海外作品の借用コーディネート、図録制作などにも関わる。株式会社アートインプレッションは複数のリサ・ラーソン巡回展を企画してきたほか、西欧近代美術などのさまざまな巡回展に企画協力している。株式会社青幻舎プロモーション(旧・京都美販)は浮世絵、日本画、近現代絵画、さらに絵本作家や漫画家の展覧会も扱うほか、ひろしま美術館や笠岡市立竹喬美術館のコレクションを巡回させる企画にも関わってきた。グループ会社の青幻舎が図録や関連書を担当するケースが多いのも特徴だ。
「“カフェ”に集う芸術家─印象派からゴッホ、ロートレック、ピカソまで」展 展示風景 企画協力:株式会社キュレイターズ[写真提供:三菱一号館美術館]
1989年設立のキュレイターズをはじめ、特に新しい動きではないが、各々に強みがあるようでユニークな企画が見られる。美術館側からみると、館の自主性をめぐる課題(協働・伴走なのか委託・管理なのか)はここでも存在するだろう。他方、新聞・テレビなど大手メディアの主導する美術展が、本業の情勢変化もあってか、多様さよりも集客・収支重視の企画志向をより強めているとの指摘もある。また、大手メディアのアドバンテージのひとつに宣伝力があるが、近年はSNSやネットメディアの台頭で、これも独壇場ではなくなった感はある。だとすればそのオルタナティブとしての役割も、こうした企画会社に今後いっそう期待されるかもしれない★6。美術館側としては、このあたりも含めて外部とどのように協働できるかが要点になるだろうか。
官側の動きとしては、国立美術館同士での巡回展として「マチス展」(東京国立近代美術館と京都国立近代美術館、1981)や、近年では「没後50年 鏑木清方展」(同、2022)がある。また国立美術館とそれ以外の美術館が共同主催した展覧会としては、森村泰昌「[空装美術館]—絵画になった私」展(東京都現代美術館、京都国立近代美術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、1998)や、「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」(東京国立近代美術館、大阪中之島美術館、2024)などがある。なお上述5件はいずれも大手新聞社が主催・共催に名を連ねる。こうした協働のあり方については、国・公・私立館および連携企業、それぞれの予算やミッションをとりまく状況とその変化(例えば独立行政法人化や指定管理者制度の影響、また前述の大手マスメディア連携の変化など)も気になるが、また別の機会にふれられたらと思う。
他方、これも前編でふれたように、国立美術館所蔵作品による展覧会を各地の美術館で行なってきた「国立美術館巡回展」は、2025年度から国立アートリサーチセンター(NCAR)による2つの新事業に移行した。「国立美術館 コレクション・ダイアローグ」は、開催希望館と国立美術館それぞれの所蔵作品で構成する展覧会。これにより双方のコレクションの「対話」を生み、新たな光を当てることを目指す取り組みである。もうひとつの「国立美術館 コレクション・プラス」は同様のアイデアを小特集展示に応用したもので、国立美術館からの作品は1点から数点となる★7。両事業とも開催希望館からの応募を経て審査・採択される。
以前の国立美術館巡回展は、毎年度1〜2件がやはり公募で採用された美術館で開催されてきた。ひとつの企画が複数館を巡回することもあれば、単館開催となることもあった。つまり「巡回」の対象は展覧会というより収蔵品であろう。新事業もこれと同様ながら、小特集含め開催件数を増やしつつ、会場館側コレクションの相互活用など、協働性を重視する方向が採られたと言える。応募する側の美術館等からすると、企画を考案する自主性が求められる一方、自分たちの予算規模等に合った活用ができるため、意欲のある館や学芸員にとっては好機となり得るのではないか。
美術館コレクションと巡回展のこれから
巡回美術展と各館コレクションの関係に関しては、前述の林氏から以下のような指摘もあった。
「かつては学芸員が他館の収蔵品情報を調べるのもひと苦労でしたが、各美術館の収蔵品データベースの整備やオンライン化が進んできた結果、以前にくらべずっと便利に検索・確認できるようになりました★8。このことは、館同士の貸し借りを行なううえで非常に大きな変化だと思いますし、各館学芸員の展覧会づくりにも影響していくのではないでしょうか」
また関連して、千葉県立美術館学芸員の笠木日南子氏からは、このような意見もあった。
「私は名古屋市美術館やゲーテ・インスティトゥート東京での勤務を経て、今春から千葉県立美術館に勤務しています。ここで自分に何ができるかを考える際に、ひとつには当館のコレクションをより活かせる方法を探れたらと思っています。
当館収蔵品を見ていくなかで、展示機会は多くない一方で注目すべき作品群が複数あると感じました。購入時期でいうと、主には開館した70年代から、予算が比較的豊かだったと思われる90年代にかけての収蔵品です。これらを活かす場は、もちろんまず自館内であるべきでしょうが、同時に、それ以外の場で鑑賞してもらう機会もあり得ると思っています。
例えば現在、日本各地を巡回している『わたしたちのルノワール 日本が愛した、幸せの画家』★9は、日本各地の美術館が収蔵するルノワールの絵画を集めて展示し、日本の西洋絵画受容史におけるルノワールについても考えるという企画です。こうした国内各美術館のコレクションを活用した企画展は、さまざまな切り口で考案し得るでしょうし、その際は巡回という形式にも利点があるのではと考えています」
日本における美術館の運営予算は全体的に厳しい状況にあると思われるが、収蔵品をめぐって、上述のような背景をもつ美術館はほかにも多いのではないだろうか。また近年、海外からの作品借用コスト(保険料・輸送費等)も増加しているとすれば、国内の名品を掘り起こして新たな視点を見出すアプローチは自然な反応と思える★10。その際、前述のようなデータベースなど共有リソースの充実はさまざまなレベルでの連携を促進し得るだろう。付け加えれば、建物改修などによる長期休館時に、自館コレクションを巡回させるような取り組みも、遠隔地の市民がふだん見られない名品にふれる機会となり得る。それぞれに利点も難しさもあるはずだが、鑑賞者にとっては有益であり、こうした動きが今後の巡回展企画にいかに反映されるかにも注目したい★11。
「巡回しない」という選択の背景
本稿の最後に、少し視点を変えて巡回展をめぐる環境をとらえてみたい。今回の関係者へのヒアリングでは、ここまで述べてきたこととは別に、しかし関連するいくつかの変化を示唆する声があった。前職の豊田市美術館で「未完の始まり:未来のヴンダーカンマー」(2024)、「ねこのほそみち」(2023)、「ホー・ツーニェン 百鬼夜行」(2021)、そして現職の東京オペラシティ アートギャラリーでは「ほぼ、空:青木淳 + リチャード・タトル」など独自性の強い企画を実現してきたキュレーターの能勢陽子氏は、次のように語る。
「豊田市美術館では巡回展をしないわけではありませんが、当初から館の方針として、充実した自館独自の企画を大切にする姿勢があったと思います。一方で、近年は各地の美術館で日本の中堅作家の個展も増えているように感じます。これはひとつには、新聞社などメディア主体の巡回美術展が、確実に収益の望めるブロックバスター展に集中してきたことが影響しているのではないでしょうか。
多大な輸送費や保険料がかかる巡回展に関われる美術館は、多くの入場者が望める都心の館か、分担金が支払える比較的予算のある地方館に限られるでしょう。他方、そうではない地方美術館はこうした状況下で、地域に立脚した美術館という意義からも、日本の中堅作家の個展などを積極的に開催するようになってきたのではとも思います。
こうした変化のもうひとつの背景として、美術館のトップが入れ替わり始めたこともあるのではないでしょうか。以前は公立美術館での個展というと大変な名誉で、年齢的にもキャリア面でもかなり成熟した作家であるべきとの考えが、館長や学芸課長の間でも強かったと思います。しかし近年は次の世代の学芸員が上のポジションに就き始め、より柔軟に幅広い企画が実現される機会も増えてきたのだろうと想像します」
一部の美術館にとっては、自館の展覧会事業における選択肢が限られるなかで、巡回展が大きな支えになってきた側面もあるだろう。そこから上記のような変化があり、また展覧会のありようも、参加型企画やアートプロジェクトなど多様化が進んできた。巡回展の現状をめぐっては、こうしたことも間接的に影響しているかもしれない★12。
こうした新たな展開の背景にあるのはポジティブな要素だけでなく、美術展・美術館の運営をめぐる苦境下での創意工夫という面もうかがえる。ともあれ、当然ながらこれは巡回展が良いか悪いかの話ではない。単館展でも巡回展でも、またブロックバスター型でも地道な共同研究型でも同様に、高く評価できるものとそうでないものはある。また、同一館のラインナップが内容面、運用面、労働面から複数の軸で構成されるのも当然だろう。そして何より、来場者に何が提供できるかということが、上述のさまざまな取り組みの根幹にある。
かつて「皆が同じように考えるとき、誰も深く考えない」と言ったのはジャーナリストのウォルター・リップマンだった。筆者としては、近年あらゆる場面で加速する物事の二極化も、これに近い性質があるように思う(極がひとつに集中するのも恐ろしいが、2つだけに見えてしまうのも分断しやすく厄介である)。リップマンが生んだ言葉「ステレオタイプ」が、類型化はときに危うい思考停止につながることも示唆したことは、自戒も込めつつ胸に留めおきたい。
とはいえ「だからこそ多様性を」との言葉で安易に着地させられるほど、現状は安泰ではないことも、今回の取材を通じて改めて感じられた。選択肢は限られているかもしれない。しかし当然ながら、単館展も巡回展も、そこで開催側が何を目指し、実際に人々の間で何が起きるかが肝要であろう。美術館等では、状況の変化もとらえながら、いかに自分たちのビジョンに沿う取り組みを実現できるかが変わらぬ課題と言える。そのためにはネットワークの再編も、組織の壁を超えた協働や連携も、さらにはローカリティへの注目や、ときには慣習逸脱的な挑戦も重要だろう。そしてこれらを考え続けるうえで、巡回展という形式はひとつのユニークな触媒でもあるように思った。
★1──日本からは森万里子、ホンマタカシ、曽根裕、小沢剛のほか、建築家の磯崎新、伊東豊雄、映画監督の北野武も参加。2000年までに、PS1(ニューヨーク)、ボルドー現代美術館、ルイジアナ近代美術館(コペンハーゲン)、ヘイワード・ギャラリー(ロンドン)、バンコク市内複数会場、キアスマ現代美術館(ヘルシンキ)を巡回した。https://artscape.jp/artscape/reference/artwords/a_j/cities_on_the_move.html
★2──「毛利直子×石田智子×川谷承子×奥脇嵩大| 制度の“凝り”を解きほぐす、抜け道のような方法は ──鴻池朋子の『リレー展』が美術館にもたらしたもの[後編]」(構成:杉原環樹)(artscape、2026年9月26日)https://artscape.jp/article/22431/
★3──関連して、各会場には全14種のZINE「別冊アンチ・アクション」も点在した。
★4──詳細は以下も参照されたい。
高嶋慈「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦(後編)」(artscape、2026年6月9日)https://artscape.jp/article/69930/
★5──巡回展における会場特性の違いや東京の優位性については、以下も参照した。
荒井保洋「キュレーターズノート:巡回展をつくる──『川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり』展」(artscape、2022年12月15日)https://artscape.jp/report/curator/10181294_1634.html
★6──一方で、メディア企業の美術展事業担当者が独立するケースもある。2021年設立の株式会社ウィステリアートは、産経新聞社事業局文化事業部で「怖い絵展」(2017~18年)などを担当した藤本聡が代表を務める。
★7──2026年度の「コレクション・ダイアローグ」は、国立西洋美術館が協力する兵庫県立美術館での「松方幸次郎×山村德太郎 蒐集のパッションーロダンを日本へ、具体を世界へ」を予定(10月10日開幕)。「コレクション・プラス」は国立国際美術館が協力する横浜市民ギャラリー「写すこと—再考:日本現代版画(仮称)」(2027年2月19日)など3件が決定した。
★8──日本全国の美術館等施設の収蔵美術作品を対象としたオープンなデータベースとしては、『全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」』がある。これは独立行政法人国立美術館国立アートリサーチセンター(NCAR)が運営するリサーチポータル「アートプラットフォームジャパン(APJ)」内で公開されている。https://artplatform.go.jp/ja/collections
また独立行政法人国立美術館は「所蔵作品総合目録検索システム」を公開している。https://search.artmuseums.go.jp/
★9──熊本県立美術館(2026年7月18日~9月13日)を皮切りに、以降は静岡市美術館、大分県立美術館、東京富士美術館で開催予定。監修者として三浦篤・大原美術館長が、企画協力としてTNCプロジェクトがクレジットされている。
https://artscape.jp/exhibitions/73414/
★10──例えば、「カンディンスキー 世界は鳴りひびく―日本のコレクションでたどる画業と反響―」(宇都宮美術館、宮城県美術館、長野県立美術館)。企画者として小檜山祐幹・宮城県美術館副主任研究員がクレジットされている。
https://artscape.jp/exhibitions/72783/
★11──なお本稿では主に日本国内の巡回美術展をテーマにしたが、日本における国際巡回展のあり方もまた重要であろう。例えば森美術館は開館初期から国際巡回展企画に取り組み、杉本博司、アイ・ウェイウェイ、塩田千春などの展覧会を行なってきた。これは「日本とアジア太平洋地域における現代美術の重要な拠点」としての同館のミッションに直結している。
★12──ほかにも今回行なった関係者ヒアリングでは、国際的な美術界における環境問題(温室効果ガス排出など)への意識の変化も聞かれた。これも今後の巡回展のあり方や会場数の設定に関わるトピックであろう。英国で設立されたギャラリー気候連合(Gallery Climate Collection [GCC])は環境に配慮したアートセクターの実現を目指し、輸送や梱包等をめぐる指針も公開している。日本から加盟する一般社団法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT]」は、アート・クライメイト・コレクティヴ・ジャパン(ACCJ)を運営。ウェブサイトではGCC資料の日本語版などが参照できる。https://accj.a-i-t.net/