村田真/酒井千穂 |
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11/1〜11/4 |
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ヴェネツィア・ビエンナーレ
6/10〜11/21 ジャルディーニ地区ビエンナーレ会場内[ヴェネツィア] |
残念ながら森村泰昌展も、ヤン・ファーブル展も、アルテンポ展も、面白かったと聞いたいくつかの周辺企画展の会期はすでに終了していたけれど、素敵なチャンスは突然やってきたので、ヴェネチア・ビエンナーレにまだ間に合う!と思いきって旅立った。終了したものもあったけど、それでもメイン会場の“アルセナーレ”の企画展と“ジャルディーニ”の国別展を2日と半日の時間でじっくり見るのには時間がかかり、迷路のような石畳の道を急ぎ足で歩きまわった。
現地に午後に到着した初日、まずは、国ごとのパヴィリオンの集中するエリアから。こんな時期でも来場者は多く、アニメーションを映像作品を上映していたパヴィリオンはどこもほとんど込み合っていた。なかでも建設中の建物のように足場とネットで覆われたドイツ館は一度に25人だけしか入場できないせいで鑑賞者の長い列。最後尾に近づいたとき、「1時間くらい待った」という日本語が聞こえて並ぶのが億劫になった。ドイツ館を後回しにして、結局見逃してしまった人もいただろうな。滞在時間が限られる旅行者にはなかなかつらい。英国館のTracey Eminのドローイングは、エロティックで清々しさのようなものはまったくなかったのだけれど、脆く儚げで、印象をひきずった。森をイメージするような草花や木々が設置されたなかに、ガラスの箱が並ぶカナダ館。石の結晶のように組み合わせたミラーがあちこちに設置されていたが、それらに外光がキラキラと反射してファンタスティックな世界が出現していた。スーツとネクタイを着けた鳥のマネキン(?)が椅子に座っていたり、高い位置に立っているのが少し不気味で面白い。
[11月1日(木) 酒井千穂]
メイン会場のひとつ、アルセナーレへ。全体的に政治色の強い作品が展示された会場は、スピードと文明の進歩をテーマに掲げていた未来派思想を捉え直すという展示ではじまっていた。戦争、死のイメージが濃いなかで、ぽつりと壁の隅に設置された藤本由紀夫作品をみつけた。言葉の通じないもどかしさと、石畳の冷たい感覚と、深く重たいテーマの多い巨大な会場の緊張感に気持ちもからだも疲れてきた頃だったので、そこで藤本氏の作品と再会したのはいっそう嬉しく感じた。装置から耳にボワボワーンと響いてくる音を聞いていると、自分のちっぽけさを思って情けなくなったのと同時にホッと気分が落ち着いて、癒されるような気分だった。
[11月2日(金) 酒井千穂]
引き続き宿泊したメストレからヴェネツィアに向かい、李禹煥の展示館や、ビル・ヴィオラ展など周辺企画展を探し歩く。小さな教会の空間の正面・左右の3つのスクリーンで上映されていたビル・ヴィオラの映像を、3人の小学校低学年生くらいの子どもたちがちょこちょこと移動しながら取り憑かれたように見ていたのが印象的。現われては消える人物と、洪水のように溢れ出る水の映像をじっと見ていた3人が、そのうち、次はこっちのスクリーンだ!と予測し合って予定調和のように揃って次に始まる映像のスクリーンの前に座り込む。途中からは作品よりも、こそこそと教会の中を動く彼らのローテーションのほうが面白くなってしまった。
[11月3日(土) 酒井千穂] |
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福原信三と美術と資生堂展
9/1〜11/4 世田谷美術館[東京] |
企業メセナで知られる資生堂の文化的活動を紹介する、つまり「企業と美術」をテーマにした画期的な展覧会。第1部では、資生堂の初代社長であり写真家でもあった福原信三の写真・資料と、信三が設立した資生堂ギャラリーに関係した作家たちの作品を公開し、第2部では、定評のある資生堂の広告宣伝やパッケージデザインなどを紹介している。この1部と2部のつながりにもう少し説得力をもたせれば、なぜ企業が文化支援するのかという疑問に対するひとつの答えが返ってきたかもしれない。それにしても、いくらメセナ活動に熱心な企業とはいえ、公立美術館が一企業の展覧会を開くなんて、ひと昔前までなら考えられなかったこと。
[11月3日(土) 村田真] |
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LATE TITIAN and the Sensuality of Painting
10/16〜1/6 ウィーン美術史美術館(Kunst historisches Museum, Wien)[ウィーン] |
ヴェネツィアからウィーンへ移動。翌日、ヨーロッパ三大美術館のひとつといわれる美術史美術館を訪ねる。古代エジプト、ローマ、ギリシャから、中世、ルネッサンスの絵画という膨大なコレクションでも知られているが、豪華なその建築空間にまず感嘆。中央階段ホールで見上げるクリムトの装飾彫刻もさることながら、アルチンボルド、クラナッハ、ブリューゲルにベラスケス、そしてフェルメールの「絵画芸術(画家のアトリエ)」まで、美術の教科書に登場する超・有名な絵画が常設展示されていて、しかもそれをゆっくりと見ることができるのだから感動。ラッキーにも、16世紀の画家、ティッツィアーノの人生最後の25年に焦点を当てた大規模な企画展を、絵画修復師として同館に勤務しているバセク氏に案内してもらえた。最新の技術で科学的に分析、修復され、展示されたティッツィアーノの作品のなかでも《Nymph》 は、とても複雑で難しい修復であったらしいが、他にも自画像を含む肖像画や宗教画の展示室では、同じモデルやモチーフの複数のヴァージョンが並列され、その技法や筆遣いを鑑賞者が自らの目で確かめ、比較できるようになっていた。ティッツィアーノのテクニックと表現を知る材料として重要な役割を担う助手の存在にも注目するなど、多角的にその後半の人生と画業を考察していた。
[11月4日(日) 酒井千穂] |
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