村田真/酒井千穂 |
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11/11〜11/12 |
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分離派会館セセッシオン(secession)[ウィーン] |
保守的な芸術協会から分離して革新を目指したクリムトらの活動拠点であった分離派会館は、一階と二階が美術ギャラリーにもなっていて、定期的に若手作家の展覧会が開かれている。ウィーンでは初雪が降った日だったけれど、この日は観光客だけでなく、地元の大学生と思われる若者のグル−プが多く訪れていた。そんなに広い会場でもないのに、《ベートーヴェンフリース》のあるはずの地階の入口がどこにあるのか見つけられず、何度も2階までの階段を上ったり降りたりしてしまった(実際にはとてもわかりやすいところに表示があったのに)。どちらかというと小さな空間だが、いつまでもそこで眺めていたいと思うほど心地よく、時間が経つのを忘れそうになる。椅子に座って壁の上部に描かれた壁画を見上げていると、他の鑑賞者の鼻歌が聞こえてきて、それはずいぶん長いあいだ続いた。《ベートーヴェンフリース》の世界にひきこまれると、なかなか戻ってこれなくなるようです。
[11月11日(日) 酒井千穂] |
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BRAUWEISS RUCKSEITE
9/19〜3/28 MAK(オーストリア応用美術博物館)[ウィーン] |
オーストリア応用美術大学(オーストリア美術工芸大学)に隣接するMAK。なぜかそんなに大規模な施設だとは想像していなかったので、その面積とコレクションの圧倒的な数に驚いた。中世の細やかな組み木細工がふんだんにあしらわれた家具から、陶磁器やガラス、テキスタイルなど、テーマごとに分類された展示室は、現代の作家のインテリアデザインにまでおよび、すべて見て回ると一日はあっという間に過ぎてしまう。なかでも16〜17世紀のレースのコレクションは見応えがあった。これほどたくさんのレースを見たこともないが、細やかな仕事の技術と表現の幅広さにはため息がでる。ウィーン工房の活動を紹介するコーナーは、ホフマンやコロマン・モーザーのデザイン原案と完成品の陳列もあり、作り手の思いの変遷もうかがえて面白い。地下では、複数の企画展も開催されていたのだが、なかでも強烈だったのは、パーマネントコレクションである東アジアとイスラム教に関連する陶磁器や古代の青銅器、木製品などを紹介する展覧会。ただ茶碗や皿が並んでいるだけではない。高台や底面が正面に向けられていて、ごろりんと全部ひっくり返った状態で展示されている。器だけでなく仏像までも。なんて罰当たりな……とも思うけれど、転がっている仏像が並ぶ会場がユニークで笑ってしまった。器の底に記されたサインやメーカーのマークから「裏側に隠された美意識」に注目するというテーマだったけれど、ドイツ語の解説が読めず悔しい思いをした。
[11月11日(日) 酒井千穂] |
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Zimmer kuche.kabinett.vol1
11/12 [ウィーン] |
ウィーン美術アカデミーで絵画を学ぶ学生5人が企画した一晩だけのグループ展。同校に在籍中の小沢さかえがメンバーとして参加し、作品を発表していた。会場はもともと住居空間だったアパートの空き室。貸しギャラリーのないウィーンでは、学生が外で発表できる機会は皆無に等しいという。卒業を来年に控えた彼女たちは、自分たちで絵を展示する場所を探し、今後も同じメンバーによるグループ展を月一度のペースで開催していく構えなのだそう。今回はその第1回目だったが、4つの部屋の壁は赤やグリーンなど、本当に生活空間だったのか?と思うような色ばかり。しかし、絵画の展示が難しそうなそれらの空間に作品は負けていなかった、というよりも、あたかもずっとそこにあったもののように馴染んだ感があり、どの部屋の展示もよかった。5名の展示というだけでも難しい試みだろうが、強烈な空間を活かして見事に全員の作品が調和していたのも拍手。雰囲気が似ているものも多いという印象もあるけれど、今後、それぞれの表現がどんな方向へ向かうのか次回以降の発表が気になる し、もしも機会がまたあるならばぜひ見たいところ。
[11月12日(月) 酒井千穂] |
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HMC
11/12〜17 東京造形大学ZOKEIギャラリー[東京] |
近藤昌美ゼミに集まったグラフィック、アニメ、絵画など専攻の違う学生たちのグループ展。HMCとは「Hiper Mixed Cicada」の略称で、「ミクスト・チカーダ」はおそらく「コンドウ・ゼミ」の意訳と思われる。発想も技術もやっぱり学生だが、《鳥獣人物戯画》の登場動物が徐々にのらくろ風、手塚治虫風、少女マンガ風に変化していく矢部美幸の作品が目を引いた。ありがちといえばありがちだけど、もう少し完成度を高めたらおもしろくなるかも。
[11月12日(月) 村田真] |
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日本彫刻の近代
11/13〜12/24 東京国立近代美術館[東京] |
高村光雲から若林奮まで日本近代彫刻の100年を振り返る企画。明治期の工芸的木彫に始まり、西洋的ヴォリューム表現を導入して、抽象彫刻にいたる大きな流れは、まるで絵に描いたようにわかりやすい。彫刻を絵に描いてどうする。木で石を彫った(つまり石をモデルにした木彫)橋本平八の《石に就て》にあらためて感銘を受ける。ポイントは、この「木の石」がすっぽり収まるサイズの台座にある。
[11月12日(月) 村田真] |
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森淳一 展
11/7〜27 日本橋高島屋6階美術画廊X[東京] |
カスヤの森にも出していた森の個展。なんか最近、高島屋が現代美術に急接近してきたなあ。出品は、エイリアンの骸骨みたいな、あるいはトゲトゲ植物の標本みたいな木彫が大中小5点に、デカルコマニーっぽいドローイングが4点。これを先の「日本彫刻の近代」に位置づけるとしたら、初期の工芸的木彫にいちばん近いんじゃないか。
[11月12日(月) 村田真] |
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