村田真/酒井千穂 |
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1/22〜1/23 |
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横山大観 展
1/23〜3/3 国立新美術館[東京] |
没後50年だそうだ。生誕140年でもある。ということは90歳の天寿をまっとうしたわけだが、長寿ぞろいの院展のなかでは珍しくない。安田靫彦94歳、奥村土牛101歳、小倉遊亀105歳、先日亡くなった片岡球子が103歳。日本画家ではないけれど、木彫の平櫛田中など107歳だぞ。みんな岡倉天心(50歳)の倍くらい生きている。もちろん長生きすればいいってもんじゃない。ぼくは長いあいだ大観のよさがわからなかったが、今回あらためて見て、やっぱりわからなかった。でもひとつわかったのは、富士山をはじめとする凡庸な画題にしろ、ころころ変わる技法やスタイルにしろ、日本画においては欠点とは見なされないということだ。むしろ凡庸な画題は「国民的画家」ならではのポピュリズムの証だし、ころころ変わる技法やスタイルは「日本画の革新」といいかえることができるらしい。つまり横山大観こそ凡庸で没個性的な日本画のスタンダードを築いたということだ。
[1月22日(火) 村田真] |
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澤朋幸──nature trail
1/14〜1/26 ギャラリーwks.[大阪] |
京都市立芸術大学で漆工を学ぶ澤朋幸の初個展。カマキリやシオカラトンボといった昆虫のほか、水面に見立てられたつややかな漆黒の台にアメンボと睡蓮が浮かぶなど、身近な自然が漆工の手法で繊細に再現されていた。虫の羽や乾いた落ち葉の軽やかな物質感もみごとだが、サンプルといったもののように、ただ器用に再現しただけでない情緒を感じる。漆といえば、これまで私は塗り重ねる手法による色の奥行きやその重厚感に見入ることが多かったが、風の感触や温度までも想像するようなはかない透明感を引き出していた。
[1月23日(水) 酒井千穂] |
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繕いの光景II──Memory and an ideal view
1/21〜1/26 Oギャラリーeyes[大阪] |
二人の若い作家が描く架空の風景が展示されていた。ソファーやタイツなど、生活の身の回りにあるものをモチーフに、図と背景、空間のスケールが交錯するような見立ての風景を描き出す羽部ちひろ。一方。絵本のような湖畔や山の景色や動物を鮮やかな色彩で描いているが、その静寂な時間のイメージやタッチがどこか不安な印象をも与える上浦の作品。どちらもそれぞれに物語を喚起する。上浦の「きらきらはじける」という作品には、鹿と、キラキラとした光の粒子のようなものが描かれていたが、これらのモチーフは流行なのだろうか。それとも敢えて描いているのだろうか。最近よく見かけるので気になった。
[1月23日(水) 酒井千穂] |
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田口美早紀「もゆげ帽子」
1/15〜2/16 複眼ギャラリー[大阪] |
関西の情報誌『Lマガジン』で毎号イラストを掲載するイラストレーターであり、アニメーションも手がける田口の個展。とてもシンプルな絵だが「うさんくさい」という言葉がぴったりの、描かれた人物の動作やなんともいえない微妙な表情に思わず笑いがこみ上げる。二人乗りの自転車のように、3つの眼鏡やサンバイザーがひとつにつながったものを装着し、並んだ三人組シリーズが特に可笑しい。真ん中の人物の身動きの取れないどこか固い表情を思い出すと今でも愉快だ。大笑いではなく、くすぐられるようなとぼけた魅力。
[1月23日(水) 酒井千穂] |
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タケミチアキ展
1/15〜1/20 立体ギャラリー射手座[京都] |
「粗品」でもらうようなタオルやリサイクル布を紫色に染めて継ぎ合わせ、中に詰め物をしたモコモコの巨大な物体が天井からぶら下がってゆっくりと揺れていた。最初は巨大なタマネギのように見えたけど、よく見ると底にクラゲのようなたくさんの足(?)がついている。人間に汚染された世界に順応しながら、進化して生きる生物らしい。新種の生物を表わしていたけれど、パンパンに膨れ上がって宙づりになっている色ムラだらけのそれは人間そのものにも思えた。
[1月23日(水) 酒井千穂] |
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