2018年10月15日号
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artscapeレビュー

安彦祐介「あびこのスナップ コドモリミテッド」

2012年08月15日号

会期:2012/07/17~2012/07/22

TOTEM POLE PHOTO GALLERY[東京都]

安彦裕介は日本大学芸術学部写真学科の助手をしながら、コンスタントに作品を発表し続けている写真家。1990年代の初め頃に「写真新世紀」や「写真ひとつぼ展」のようなコンペでたびたび入賞し、写真という表現メディアの特性を巧みに活かしつつ、現実世界の見え方を変容させていく作風で注目された。野口里佳から、彼女が大学在学中に安彦の言動から多大な影響を受けたと聞いたことがある。
今回のTOTEM POLE PHOTO GALLERYでの個展でも、その姿勢は基本的に変わっていない。パノラマサイズのフォーマットのカメラ、あるいは手製の4×5インチ判のカメラを使って赤外線フィルムで撮影し、「バライタ印画紙にプリント後、とある種類の薬品にて調色」した作品が並ぶ。赤外線フィルムを使うことで、モノクロームの画像のグラデーション、コントラストに変調をきたし、さらに「調色」によって色味も違ってくる。それが青、緑、茶色などのどんな色調に転ぶのかは、「やってみないとわからない」のだそうだ。そんな偶発的で不安定な画像のあり方が、今回の「コドモ」というテーマにはぴったりしているのではないだろうか。過渡期にある存在である子どもたちの妖しさ、不気味さ、とらえどころのなさが、安彦の錬金術的なテクニックによって、とてもうまく引き出されているのだ。技術と表現意欲のバランスが、どちらか一方に偏ることなく、むしろ生産的に働いている希有な例なのではないかと思う。
次回の個展のテーマはもう決まっていて「オヤジリミテッド」だそうだ。彼がまたどんな匠の業を見せてくれるのかが楽しみだ。

2012/07/19(木)(飯沢耕太郎)

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