2017年09月15日号
次回10月2日更新予定

artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

神戸港と神戸文化の企画展 神戸 みなと 時空

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会期:2017/01/25~2017/12/28

デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO[兵庫県]

神戸開港150周年を記念して、デザイン・クリエイティブセンター神戸KIITO(旧神戸市立生糸検査所)では、①「TOY & DOLL COLLECTION」②「陳舜臣と神戸ミステリー館」③「鈴木商店記念館」の三本立ての展示が行なわれている。それぞれ、神戸ゆかりの文化/文学/産業を軸にして、①は世界と日本の玩具を、②は陳舜臣の神戸を舞台にした推理小説『枯草の根』『三色の家』等に登場する場所を再現、③では小説やテレビドラマ『お家さん』でも知られ、大正期に日本一の総合商社となった神戸の「鈴木商店」の歴史を扱う。なかでも興味深いのが、日本玩具博物館との共催による人形文化の展示。日本の郷土玩具、世界の乗り物玩具のほか、とりわけ目新しかったのは、企画展示の「神戸人形」。これは明治中期に神戸で生まれたからくり人形で、土産物として海外にも輸出されるほど人気を博したという。なんとも面白いのが題材のほとんどがお化けであること、当時は「お化け人形」とも呼ばれた。木目を生かした素朴な木の造り、からくりは目が離れたり口を大きく動かしたり、夕涼みしたり釣鐘を持ったりするユーモラスなお化けは日本文化ならでは。大正期以降には量産されて、色調が黒地と赤に統一されたが、戦後に生産は衰退した。阪神淡路大震災で廃絶するも、現在は同館が復元の形をとって再興を目指しているところだという。港町で栄え世界へ渡った神戸人形、次世代への伝承を望みたい。[竹内有子]


「お化け人形」の展示風景

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創造性を紡ぐ拠点を目指して──デザイン・クリエイティブセンター神戸|近藤健史:キュレーターズノート

2017/8/5(土)(SYNK)

2017 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展

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会期:2017/08/19~2017/09/24

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

今年51回目を迎えるボローニャ国際絵本原画展。この子供用絵本の見本市に伴うコンクールでは、応募は過去最多だったそうだが、26カ国、75作家が入選した。そのうち、日本人は6名。今回は加えて、メキシコの作家フアン・パロミノが神話を基にした物語『はじまりの前に』の原画(第7回ボローニャSM出版賞受賞記念絵本)が特別展示されている。回を重ねる度に、デジタルメディア、フォトショップやイラストレーターによる作画が増えているのを実感する。ひとくちに絵本原画といっても、技法はさまざま。布のテクスチュアと丁寧な針の運びが映える刺繍作品、シルクスクリーンにサイン入りの作品、コラージュに手書き文字が楽しい作品、など。展覧会ちらしの表に取り上げられている、マリー・ミニョ(フランス)の作品は、色鉛筆のみで仕上げられた、独特な筆触の仕上げが際立つ。表現性も同様に幅広いが、ポップアートを思わせるような作品が多く目についた。美術館を一巡りすると、まるで夏の世界旅行に出かけたような、非日常の気分を味わえる。異国の社会文化を知るだけでなく、絵本を通じて、複数の感情が喚起されるからだ。[竹内有子]

2017/8/19(土)(SYNK)

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追悼水木しげる ゲゲゲの人生展

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会期:2017/07/26~2017/08/14

大丸ミュージアム・神戸[兵庫県]

2015年、93歳で亡くなった水木しげるの生涯を彼の作品とコレクションから振り返る展覧会。少年期から晩年に渡るまでのスケッチや絵画、『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』に代表される漫画の原稿から、エッセイ、出版物、愛蔵品等まで、幅広い展示物によって彼の人生と人となりを網羅的に知ることができる。水木は少年時代に天才画家と呼ばれたそうだが、それも納得するほどの画力。多彩なジャンルを手がけたなかでも、絵本や童画の愛らしい作品は、後年の妖怪画とは異なる水木ワールドで驚く。また彼は図案職人を目指したこともあり、本展では珍しいデザイン作品を見ることもできる。とはいえ、水木の仕事に決定的な影響を与えたのが、戦争の体験だったろう。本展では戦記漫画や手記原稿が展示され、生々しい体験を伝える。以後、紙芝居画家を経て、漫画家デビューしてから1960年代以降の活躍はファンならずとも、よく知っているところ。やはりなんといっても鬼太郎シリーズに見られる、水木のキャラクター造形の面白さには感服する。どんな先例にも負わない、個性的なキャラクターの数々は、水木がいかに作画資料を熱心に収集研究して、新奇性を追究したかを示している。水木の人生を追っていくと、彼のあらゆる経験や哲学が作品世界にいきいきと息づいていることに気付く。そして、自らの波乱万丈な生涯を感じさせないような、「なまけ者になりなさい」と記された水木のあたたかい言葉に、ほろっとさせられる。本展はこのあと、福岡、名古屋、沖縄に巡回する。[竹内有子]

2017/8/12(土)(SYNK)

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拡がる彫刻 熱き男たちによるドローイング 植松奎二 JUN TAMBA 榎忠

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会期:2017/07/04~2017/09/28

bbプラザ美術館[兵庫県]

「彫刻とドローイング」をテーマに、現代美術家の3人植松奎二、JUN TAMBA、榎忠の作品と空間展示を月替わりで紹介する展覧会。現在、デュッセルドルフと日本にアトリエを構え活動する植松奎二の展示は、最新作のインスタレーション《見えない軸─水平・垂直・傾, Invisible axis Horizontal, Vertical, Inclination》を会場の中央に設置、四方を1969年から2017年までのドローイング作品群で囲むように構成した。《見えない軸》は、中央に据えられた石とさまざまな角度で傾く金属の柱(真鍮)とワイヤーを用いて、本来は不可視の「重力」を、事物のあいだに看取される関係性を通して表わそうとする。また、2×4メートルを超える大きさのドローイング《浮く石, Floating stone》は、同館で公開制作されたもの。タイトルが示す通り「巨大な石が宙に浮かぶさま」の描写は、現実にはありえない奇想の空間を創出する。このような、普段私たちが知覚することのない「重力」についての気づきは、ひいては、宇宙/地球/人間の存在に関わって「大事な見えないものとは何か」を考えることにもつながってゆくだろう。植松の作品は、世界の構造への普遍的な問いから鑑賞者個人の内面に至るまで、多様なレヴェルの気づきを与えてくれる。[竹内有子]

2017/7/30(日)(SYNK)

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AMBIENT 深澤直人がデザインする生活の周囲展

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会期:2017/07/08~2017/10/01

パナソニック 汐留ミュージアム[東京都]

携帯電話などの電子機器から家電、家具、インテリアまで、深澤直人がこれまでにデザインしてきた多彩な仕事を紹介する展覧会。展覧会タイトルの「ambient」を辞書で引くと「周囲の、環境の」という訳が出る。この「ambient」を、深澤は「ものとものの間にある空気」と説明する。そこで思い出したのは、2009年に21_21 DESIGN SIGHTで開催された深澤直人の展覧会「THE OUTLINE 見えていない輪郭」だ。深澤直人のプロダクトと藤井保による写真で構成された展覧会が提示していたのは、プロダクトそのものではなく、プロダクトとその周囲との関係によって現われる「輪郭」だった。写真は当然静的なものだったが、照明を入れた乳白色アクリルの上に展示されたプロダクトの輪郭は、それを見る人の視線の移動によって絶え間なく変化する。平面図には現われないかたち、視線の移動によってシームレスに変化する輪郭の美しさを見せる展覧会だった。そして今回の展覧会は「ambient」。「周囲」が意味するものは、「輪郭」が示す「線」ではなく「空間」あるいは「空気」。その「空気」を見せるために、展示室はキッチン、ダイニング、リビング、浴室などの居住空間に見立てて造作され、そこに深澤がこれまでに手がけたプロダクトが配されている。観覧者はケースに展示されたプロダクトを単体で鑑賞するのではなく、モデルルームのような室内に置かれた作品の周りをめぐり、空間とプロダクトの関係性が生み出す「空気」を体感することになる仕掛けだ。
そのような生活空間一式が深澤の仕事のみで構成できていることはその仕事の多彩さを語っており、またメーカーがさまざまであるにも関わらず、価格帯もさまざまであるにも関わらず、そこには一貫したスタイルを見ることができる。しかしその一貫性は、アーティストの作品スタイルに見られるそれではなく、デザイン思想によって生み出されるもの。深澤のデザインはしばしば「アノニマス(無名の)」と呼ばれる。たとえば、無印良品の壁掛式CDプレーヤー(1999)やパナソニックのドライヤー(2006)は、デザインに詳しい者ならば深澤直人の仕事と知っているが、メーカーは深澤の名前を出していないので、この製品のユーザーのどれほどがそのことを知っているだろうか。筆者はこの夏、無印良品の店頭で新しいスーツケースを試してみて、シンプルでとても使い勝手が良く手頃な価格の製品という印象を持ったのだが、本展を見てはじめてそれが深澤デザインだということを知った。消費者は、深澤直人のプロダクトをデザイナーの名前ではなく、いいデザイン、しっくりくるデザイン、使いやすいデザインという視点で手にとるのだ。そしてメーカーが深澤に期待していることもまた、スター・デザイナーのブランドで売るのではなく、造形的な差別化ではなく、触れたとき、使ったときに違いが分かるデザインということなのだろう。総数100点以上のプロダクトが紹介されている展示空間は、デザイン関係者のみならず、ふつうの生活者にとっても、「よいデザインとは何か」という問いに対するひとつの指針、デザインが場にもたらす「空気」の存在を教えてくれる。[新川徳彦]


会場風景

2017/08/15(火)(SYNK)

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