毎月1日、15日号発行の美術館・アート情報をお伝えするWebマガジン(次回2月1日更新予定)

artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

「クオーター・パウンダー」(マクドナルド)のデザイン戦略

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基本はチーズバーガーで牛肉パテが通常の2.5倍、重量にして約113gとなったマクドナルドのスペシャル・メニュー「クォーター・パウンダー」が現在、地域限定販売されている。クォーター・パウンダー」というメニュー名は、過去にもまた日本以外の国でも使われたことがある。今回の日本での展開で特筆すべき点は、入念に仕組まれたイベントの実施とともにデザイン性の高いグラフィックデザインを駆使した大胆で緻密な告知戦略である。まず11月に「マクドナルド」名を出さずに「クォーターパウンダー」というショップを東京・青山に出店し、既存のマクドナルド・ハンバーガーとの差別化を図った。メニューのロゴや店舗のデザインは、たとえば、HMVやTOWER RECORDSなどのお洒落なレコード販売店のグラフィックに通じる黒と赤を基調にした大胆なデザインを採用しており、従来のファミリー路線とは一線を画している。グラフィック媒体に用いられるコピーには挑発的な言葉が並ぶ。たとえば「ハンバーガーをナメているすべての人たちへ」など(その色使いや挑発的なメッセージは、現代美術のバーバラ・クルーガーなどのメッセージ性の高い作品を彷彿とさせる)。現在では、地域限定で普通のマクドナルドの店舗でも売られているが、そのクルーのユニフォームの背にはその言葉がプリントされている。この現象をどう見るべきか? 昨年、マクドナルドは100円の「プレミアム・ロースト・コーヒー」を出して、その価格と味の良さで業界を震撼させた。同様に、「ジャンク」なイメージを払拭し、実質的な「食事」のアイテムとして定着させようというプレミアム路線が垣間見える。「ハンバーガーをナメている……」という挑発的なメッセージは本音のメッセージであろう。もちろん味とサービス、そして価格が伴わなければ、消費者は納得しない。その挑戦的な姿勢こそが、熾烈な外食戦争のなかで、マクドナルドに勝利をもたらしている理由なのである。それは企業のデザイン力の問題でもあるのだ。

クォーターパウンダー公式サイト
クォーターパウンダー メニュー情報

公衆無線LAN普及の鍵は? ハンバーガーとiPhoneと…

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インターネットが浸透し始めた21世紀初頭、公衆無線LANは近いうちに爆発的に広まるかと思いきや、現実はこれまで遅々として進んでこなかった。とはいえ、公衆無線LANを望むユーザーは潜在的に増えており、またそのために必要な通信環境は整ってきたといえよう。ネットブックやスマートフォンは、公衆無線LANの利用によりさらに本領を発揮するだろう。ソフトバンクモバイルは、こうした利用者のニーズを先取りするかのように、iPhone 3Gユーザーに「公衆無線LANし放題」(BBモバイルポイント)を無償提供することを昨年11月に発表。これにより、iPhoneで、マクドナルドの店舗、JR駅構内、空港、カフェなど、全国約3,500カ所のアクセスポイントで無線LANを利用したインターネット接続が可能になる。2008年の携帯電話契約数で、Softbankは、純増数の面で、docomoとauを抑え一位に輝いた(累計契約数、2,000万件を突破)。iPhoneは、Softbankの端末のなかでも常に上位に位置しており、iPhone投入はSoftbankの業績好調に少なからぬ影響を与えている模様である。公衆無線LANのサービスの充実度は、まだまだ地域によって格差が激しい。しかし、着実に増えてきているのは確かである。それにより、私たちのネットライフスタイルは少なからず変わっていくはずである。また、それに応じた新たな製品とデザインが登場するだろう。

ソフトバンク BBmobileネットワーク
47News
ソフトバンク 累計契約数2,000万件

グラフィック・デザインの鬼才、木村恒久、他界(享年80歳)

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フォトモンタージュの技法を駆使した作品で知られるグラフィック・デザイナー、木村恒久氏が、昨年12月27日、逝去された。60年、日本デザインセンターの設立に参加(後に独立)。65年、戦後第2世代のグラフィック・デザイナー、粟津潔、福田繁雄、宇野亜喜良、永井一正、和田誠ら11人が集まって開催したグループ展「ペルソナ」に参加するなど、戦後の高度経済成長期に頭角を現わしたデザイナーのひとりであった。60年代末から70年代の日本社会の転換期には、デザインの仕事と並行して、雑誌『デザイン批評』等で粟津潔たちとともに、舌鋒鋭いデザイン・社会批評を展開。1979年、現代社会を鋭く批評するフォト・モンタージュ作品を集成した『キムラカメラ─木村恒久のヴィジュアル・スキャンダル─』(パルコ出版)を出版。79年度の毎日デザイン賞を受賞。81年に開催された『ボードリヤール・フォーラム'81』の討論会では、来日したフランスの哲学者ジャン・ボードリヤールと文明論を闘わせた。ご冥福を祈りたい。

デザインのリサイクル スウォッチの復刻プロジェクト

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スウォッチ社は、近年、しばしば過去のモデルの復刻版をリリースしている。昨年の復刻版のひとつに、1999年に発表された時計で、日本では関西空港や銀座エルメスビルを手がけたイタリア人建築家、レンゾ・ピアノがデザインしたモデルがある。スケルトン・ボディで時計のムーブメントがむき出しに見える。そのムーブメントの各部が丁寧に、ビビッドに色分けされた時計である。その名は「ジェリー・ピアノ」。機械的な構造をそのままデザインとして見せるという考え方は、リチャード・ロジャースと共同で設計に関わったポンピドゥーセンターの建築の理念に通じる。昨年末には日本のショップでも見られるようになった。時計は、機能的には成熟した製品であるがゆえに、デザイン的な差別化がより重要になっている。スウォッチ社設立来、膨大な種類の時計がリリースされてきた。そのなかで、デザイナーの意志が貫かれた際立った時計がいくつも存在する。デザインを復刻すること、言い換えれば、デザインをリサイクルすることは、今後のデザインのあり方の一端を示している。優れたデザインであれば、リサイクルに耐えうるデザインの力を有しているはずである。筆者は、思わず、ジェリー・ピアノ復刻版を銀座で買い求めてしまった。

プレビュー:京都dddギャラリー第211回企画展 グラフィックとミュージック

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会期:2017/01/20~2017/03/18

京都dddギャラリー[京都府]

グラフィックデザインと音楽の関係は、19世紀までさかのぼれる。トゥールーズ=ロートレックやミュシャが描いたミュージックホールの絵画やポスターはその先駆けと言えるだろう。レコードという複製媒体が登場し、音楽が一大産業になってからは、レコードジャケットやポスターが盛んにつくられ、両者の関係は切っても切れないものになった。そうした歴史を名作ポスターでたどるのが本展である。個人的には、音楽がインターネットで配信されるようになってからジャケットを見る楽しみが減ったと思っているので、レコード・CDジャケットも扱ってほしい。しかし今回はポスター展とのこと。それはそれで各時代の名作音楽ポスターが見られるのだから良しとしよう。さらに欲を言えば、会場に音楽のBGMを流す、会期中にレコードコンサートを行なうといった趣向があっても良いと思う。身勝手な要望ばかり並べたが、どのような展示になろうとも見に行くつもりだ。

2016/12/20(火)(小吹隆文)

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2017年01月15日号