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artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

つくるガウディ

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会期:2016/11/05~2017/03/31

INAXライブミュージアム[愛知県]

INAXライブミュージアムで「つくるガウディ」展を見た。「土・どろんこ館」会場の企画「つくるガウディ─塗る、張る、飾る!」は、左官とタイルの職人の手によりアントニオ・ガウディ「コロニア・グエル教会」の未完の尖塔を、4分の1スケールでつくるというプロジェクト。1898年に教会建設の依頼を受けたガウディは10年にわたって模型実験を続け、工事が始まったのは1908年。半地下の聖堂は完成したものの、構造実験を反映するはずだった地上部分は未完のままになった。この地上部分を、ガウディが残した構造模型の写真から教会の設計を考察した松倉保夫氏の『ガウディの設計態度』(相模書房、1978)を元に建築家の日置拓人氏が立体を起こし、工場で作った構造体を展示室に建て込み、左官職人の久住有生氏とタイル職人の白石普氏が仕上げていく。筆者が展示を見た2月初めには、丸太で組んだ足場の上でタイルと左官による仕上げの公開制作が行なわれていた。使われている土は愛知県豊田と兵庫県淡路のもの。タイルは白石氏がデザインし、ミュージアム内の「ものづくり工房」で製作されたオリジナルが用いられている。「コロニア・グエル」でガウディがどのような装飾を計画していたのかは分かっていないそうで、それならば再現の際には実現した地階部分や建設中のサグラダ・ファミリアに倣ってつくらないのかという疑問が浮かぶが、ガウディが現場の職人たちと対話しながら工事を進めていったことを考えれば、地域の素材を使い、現場の職人の技術に従うことが、その建築思想を再現するここでの方法論なのだ。タイルはあらかじめ焼いておかなければならないが、貼り方は現場で決まり、タイルの構成によって仕上げの土の色も決まる。完成は3月末。4月中旬から5月末にかけて完成披露展示が予定されている。これまでの制作風景動画を同ミュージアムのホームページで見ることができる(http://www1.lixil.co.jp/culture/event/080_live_m/003614.html)。
本プロジェクトの会場である「土・どろんこ館」は、2006年に日置拓人氏の設計と久住有生氏の左官仕事でつくられたもの。日置、久住、白石ら3氏が登壇して2月11日に同館で行なわれたトークセッションでは、企画段階で訪れたバルセロナでの珍道中(?)や、「土・どろんこ館」建設にまつわる裏話などが披露された。このほか、「世界のタイル博物館」企画展示室では約40年にわたってガウディ建築を実測し、手描きによる図面制作を行なってきた田中裕也氏(本展の総合アドバイザーでもある)の図面とその道具が展示されている。[新川徳彦]


左:「土・どろんこ館」会場風景 右:「世界のタイル博物館」企画展示室会場風景

2017/2/11(土)(SYNK)

渋谷達郎と大類真光による《西根の家》/辺見美津男《すべり台の家》

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[山形県、福島県]

今年も審査委員長の古谷誠章とまわる、恒例の東北住宅大賞の現地審査を行なう。ついに第10回となった。最初は山形の豪雪地帯へ。渋谷達郎と大類真光による《西根の家》を訪問する。自分の山の木を使いつつ、高齢者のひとり暮らしにとって、除雪の負荷を減らすことを考え、道路側に家を建て替えた。寄棟屋根の下、大きな開口で景色を眺めながら暮らす、のびやかな住宅である。
郡山へ移動。辺見美津男による《すべり台の家》を見学する。急勾配の売れ残った宅地を活用し、室内外とも段々の構成をつくり、ハイライトは子どもが遊ぶすべり台である。また隣のグループホームの斜面を無料で借りながら、緑化する。サービス動線はコミュニティ再生長屋と同様、片側にまとめる。その後、米蔵をリノベーションした辺見事務所において、懇親会を行なう。

2017/02/28(火)(五十嵐太郎)

大西麻貴+百田有希/o+h《Good Job! Center KASHIBA》

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[奈良県]

大西麻貴+百田有希による奈良の《GOOD JOB! CENTER KASHIBA》へ。コンペで設計者を選んだ、アートやデザインを通じた障害者の支援施設である。角地で大きく街に開く、明るくかわいい建築だった。構造を兼ねる互い違いに積まれた壁は、平面上においては斜めに配され、さまざまな場を生みつつ、奥に視線を引き込む。また2階はイケアのように、オープンな倉庫とみなし、空間を閉鎖させることなく、1階の回遊性を延長する。

2017/02/24(金)(五十嵐太郎)

岩瀬諒子/岩瀬諒子設計事務所《木津川遊歩空間》

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[大阪府]

大阪の西長堀から《木津川遊歩空間》へ。水都大阪の水辺再生コンペで、岩瀬諒子さん(U-35参加)が選ばれ、既存護岸の外側に段状の親水空間を張り出す。通常の土木と違う建築的ランドスケープだ。現場で岩瀬さんと遭遇、春に道路側との連結部も完成という。今後の使われ方、街への影響が興味深い。

2017/02/24(金)(五十嵐太郎)

神勝寺《松堂》《洸庭》

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[広島県]

福山駅から神勝寺へ。まず入り口で藤森照信が設計した《松堂》が出迎える。屋根のてっぺんに赤松をのせたテクスチャー建築であり(すなわち、テクトニックではない)、ほっこりさせる。神勝寺のエリアはかなり広く、1970年代のコンクリート寺院から古建築の移築や石山寺多宝塔の写しなどを散りばめる。
最後に名和晃平+SANDWICHによる《洸庭》を見学した。ブリッジを渡り、ダイナマイトで砕いた岩を並べた石の海原をぐるぐるまわって、ピロティで支えられた「山あいに浮かぶ舟のような建築」に到達する。屋根以外の表面がすべて杮葺きの建築であり、窓がない。下から船底を見上げる空間体験もきわめてユニークだ。そして《洸庭》の内部に驚く。ドアを抜けると、真っ暗闇で何も見えない。まるで演目「VESSEL」の冒頭のようだ。かすかな光源が揺れる水面に煌きながら、コンピュータではつくれない、複雑な映像的効果を生み出す。およそ25分のプログラムは、世界の創造のようだ。外部ではなく、内部に無限の海原を抱えた建築である。

写真:左上2枚=藤森照信《松堂》左下3枚=神勝寺敷地内、右上5枚=名和晃平+SANDWICH《洸庭》、右下=神勝寺模型

2017/02/23(木)(五十嵐太郎)

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2017年03月15日号