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artscapeレビュー

書籍・Webサイトに関するレビュー

三浦基『おもしろければOKか?』

発行所:五柳書院

発行日:2010年1月

京都を拠点に活動する三浦基(劇団「地点」主宰)の演劇論。表題の問いは、物語の奴隷状態から演劇を解放し、空間芸術・時間芸術としてとらえようとする三浦の思いが反映されている。議論は必然的に戯曲に演出がどう対峙するかに集中する。けっしてわかりやすい本ではない。しかし、演出家というものはここまで演劇を考えているものなのかと、読んでいて〈演劇なるもの〉の深淵を不意に覗き込ませられた気持ちになる。この体験はなかなか得難い。三浦本人も難渋するさまを隠さない。「どうだろうか。私だって意味がわからない。このでたらめさには、自分でも嫌気がさすが、しかし、これだけのことを思ってしまったことは本当であり……」。この正直さはチャーミングだ。演出家は演劇がわかって演出しているわけではない。手探りで自分の実感を頼りに闇を進む。その振る舞いがトレースされている。「私は今、きっと無理を言い出している。本当に自由な『時間』を求めているのだから」。三浦の望みは演劇がどんな主体性も関与しない「時間」そのものとなること。それを語る寄り道にムンクが不意に現われる。唐突さに笑い、引き込まれる。現代演劇論としてのみならず読み物としても魅力的な本である。

2010/02/28(日)(木村覚)

『エクス・ポ テン/ゼロ』

発行所:HEADZ

発行日:2009年12月

第二期の『エクス・ポ』第0号は、第一特集が「演劇」(455頁分)。平田オリザ以後であり、さらに岡田利規以後とも言うべき今日の演劇の怒濤の展開を、編集発行人である佐々木敦が独自の嗅覚でまとめあげている。取りあげられている作家(脚本家、演出家)は以下のとおり。前田司郎、松井周、岩井秀人、平田オリザ、中野成樹、多田淳之介、タニノクロウ、飴屋法水、下西啓正、岡田利規、宮沢章夫。また、昨年の春に話題となったイベント「キレなかった14才♥リターンズ」に参加した作家たちも、彼らの座談会が掲載されフォローされている。もしあなたがまだ彼ら若い演劇作家の作品に触れていないならば、ここに名前のあがった作家たちの上演をチェックしてゆくことで、日本の演劇の現在と未来を知ることにきっとなるだろう。筆者も前田愛実、九龍ジョー、佐々木敦との座談会に参加しており、そこでは岡田利規的演劇とは別の可能性を示す存在として快快が話題になっている。ぜひご一読いただきたい。

2010/02/28(日)(木村覚)

カタログ&ブックス│2010年02月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

荷風と明治の都市景観

著者:南明日香
発行日:2009年12月30日
発行:三省堂
価格:2,800円(税別)
サイズ:B5判

赤レンガが嫌いだったという、永井荷風の都市景観に対する考えをたどった一冊。何がよい建築とするのか、そしてどのようにして美しく都市を形成していくのか。それを明治という東京の原点となる時代から考えることができる。


WINDSWEPT WOMEN:老少女劇団

著者:やなぎみわ
発行日:2009年11月01日
発行:青幻社
価格:2,940円(税込)
サイズ:A4判

2009年ヴェネチア・ビエンナーレ日本館出品作家に選出され、いま日本で最も注目されるアーティスト、やなぎみわ。本書ではヴェネチア・ビエンナーレでの内側を解説。撮影風景や、写真の額の作りや、搬入設営など細かな部分にも焦点を当てる。


乾隆帝の幻玉──老北京骨董異聞

著者:劉一達
翻訳:多田麻美
発行日:2010年01月25日
発行:中央公論新社
価格:3,360円
サイズ:B5判

北京の旧市街地を縦横に走る横町、「胡同」を歩いていると、その昔ながらの風景や人々の今の暮らしぶりが目に入ってくる。そこでかつて繰り広げられていた物語を生き生きと想像しようとすると、意外と手掛かりは少ない。本書では、かつての胡同の文化、北京っ子たちの暮らしぶり、そこで生まれた豊かなドラマにもう一度触れることができる。作者である劉一達氏が、膨大な数の人々を丁寧にインタビューし、実に豊かなディテールを表現している。


レベッカ・ホルン

著者:東京都現代美術館
発行日:2009年11月
発行:中央公論新社
価格:2,800円
サイズ:B5判

2009年10月31日(土)から2010年2月14日(日)まで東京都現代美術館で行なわれていたレベッカ・ホルン展のカタログ。日本での初の個展ということで、28歳で参加した「ドクメンタ5」の初期の作品から、最新作まで映像・絵画・彫刻・インスタレーションを含む主要作品約130点を紹介。

2010/02/15(artscape編集部)

フランク・ロイド・ライト『自然の家』

発行所:筑摩書房

発行日:2010年1月10日

フランク・ロイド・ライト、87歳(1954年)のときの著作の翻訳。同書は、すでに遠藤楽訳による『ライトの住宅』(彰国社、1967年)として出版されているが、富岡義人による読みやすい新訳で出版された。1936年-1953年と題された第一章と、1954年と題された第二章による構成であり、訳者よれば、創世記から福音書に至る旧約聖書・新約聖書に見立てられて編集されているのではないかという。師のサリヴァン事務所で主に住宅を担当したライトは、大きくいえば、独立後、プレーリー(草原)型住宅から、ユーソニアン住宅(ユーソニアは、サミュエル・バトラーの用語でアメリカのこと。Usonia : United States of North America)を経て、有機的建築に至るが、本書ではユーソニアン住宅から有機的建築に至るライトの思考が力強い文体で描かれる。特に強調されるのは「単純性」や「統合性」といった概念である。有機的建築の本質は単純さであり、それは単なる簡素な単純さとは別のものだとライトはいう。複雑化する人生の中で、勇敢に単純であることによって自由が得られるのだという、ライトの強い思想が全編にわたって感じられる。本書は、ライトの年譜や建築地図もつけられており、ライトの入門にも絶好の本であろう。なお、2009年でライトは没後50年を迎えた。

2010/01/31(日)(松田達)

イリヤ/エミリア・カバコフ『プロジェクト宮殿』

発行所:国書刊行会

発行日:2009年12月15日

ロシアのアーティストによる夢のアイデア集というべき本である。「プロジェクトを集積した宮殿を造る」というメタファーが述べられているように、建築的にも読めて興味深い。実際、建築家ならば、アンビルドやユートピア的な計画になるだろう。ちなみに、プロジェクト宮殿のインスタレーションは、バベルやタトリンによる第三インターナショナル記念塔など、文化史的な記憶を背負う螺旋の構造体になっている。もっとも、建築家がある種の社会性をおびた提案を行なうのに対し、アーティストはときには馬鹿馬鹿しい、あるいはほほえましいイノセントな発想を行なうことが重要だ。本書をめくると、さまざまな思いつきがスケッチ付きの仕様書として記述されている。例えば、「空飛ぶ部屋」「いちばん合理的な刑務所」「雲をあやつる」など、日常と夢のあいだを往復するためのウイットに富んだプロジェクトが続く。

2010/01/31(日)(五十嵐太郎)

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