2017年06月15日号
次回7月3日更新予定

artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

鈴木のぞみ個展 Mirrors and Windows

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会期:2017/05/22~2017/06/03

表参道画廊[東京都]

窓や鏡に焼きつけた写真を10点ほど展示。窓と鏡は外界を見透す、または写し出すことから、しばしば絵画や写真のたとえとして用いられてきた。鈴木はその窓と鏡に外界のイメージを定着させることで「たとえ」を固定化しようとする。窓ガラスには実際にその窓から見えた風景が焼きつけられ、手鏡にはそれを使っていた人物の顔、壁掛けの鏡には室内風景がプリントされる。窓や鏡が長年見続けてきた光景が、こうして永遠に焼きつけられたわけだ。窓ガラスの風景はニエプスの最初の写真を想起させ、鏡はダゲレオタイプの銀板を思い出させる。そして窓にも鏡にも枠(額縁)がはめられていることも偶然ではないだろう。絵画出身の作者らしい発想だ。

2017/05/31(水)(村田真)

裏声で歌へ

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会期:2017/04/08~2017/06/18

小山市立車屋美術館[栃木県]

栃木県小山市に初めて足を踏み入れた。東北新幹線だと宇都宮駅のひとつ手前が小山駅だが、美術館は在来線で小山駅のひとつ手前の間々田駅になる。空っ風の吹きそうな殺風景な街だが、なぜか展覧会のポスターだけはあちこちに貼ってある。あんまり宣伝しがいのなさそうな展覧会なのにね。そもそもどんな展覧会なのかどこにも解説がなく、唯一手がかりになりそうなのが、カタログに一部転載されている丸谷才一の「裏声で歌へ君が代」という一文だ。それについてはあと回しにして、会場を一巡してみて、どうやら「声(音)」と「裏」に関する作品が選ばれていることはわかった。
大和田俊は石灰岩が溶けるかすかな声、國府理は水中のエンジン音を聞くインスタレーションで、加えて地元中学校の合唱コンクールの映像もある。本山ゆかりはアクリル板の裏から描いているし、五月女哲平は裏面はおろか側面も見えない窮屈なスペースに抽象画をはめ込んでいる(しかもタイトルは《聞こえる》)。もうひとつ、明治から昭和初期にかけてブームになった軍艦や戦闘機を描いた「戦争柄着物」が出ているが、これは羽裏や襦袢に描かれることが多かったからだけでなく、君が代は恋歌だったという先の丸谷の「裏話」にも通じるからかもしれない。ちなみに、大和田と五月女は地元出身で、地元中学校の合唱も含めて意外と地元愛が強い。街にポスターが貼られているのもうなずける。

2017/05/28(日)(村田真)

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MADSAKI 個展

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会期:2017/05/19~2017/06/15

カイカイキキギャラリー[東京都]

大作が10点以上。いずれも着物をつっかけたヌードの女性がさまざまな姿態を見せている図。スプレーでざっくり描き、黒で輪郭をなぞり、液が滴り落ちている。目は黒のスプレーでプシュッ、プシュと吹いただけ、口は赤一線で鼻もないのに、妙にリアルに感じるのはなぜだろう。うまいからか? 写真に基づいているからか? モデルが嫁さんだからか? ぼくにはよくわからない。

2017/05/27(土)(村田真)

第60回 表装・内装作品展

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会期:2017/05/20~2017/05/27

東京都美術館[東京都]

昨年に引き続き「千人仏プロジェクト」を見に行く。これは東日本大震災の被災者に千体の仏画を木炭で描いてもらうという計画。昨年は930体余りだったが、昨秋ようやく千体を突破、表装した計1006体の仏画が床から天井まで埋め尽くすさまは圧巻。いちおうフォーマットが2パターンほどあるようだが、フォーマットどおりに忠実に描く者もいれば、サル顔やタヌキ顔に改変するヤツ、原型を留めないほど崩すヤツ、主催者の意図を忖度しない投げやりなヤツもいて、興味深いものがある。さて、これを今後どうするかが問題だ。
ところでこの「表装・内装展」、当然といえば当然ながら、大半の出品者は図(絵)より地(表装)を見せようとするのだが、なかには変わり種もいる。例えば石井三太夫は、床の間の大きな写真を壁に掛け、そのなかに清水の舞台を描いた掛軸を掛けるという二重構造の作品を出品。コンセプチュアルな掛軸の試みだ。また、小鍋篤志は「うんこ」の文字をとぐろを巻いたかたちの絵文字に仕立てて軸装している。タイトルもそのまま《うんこ》。勇気あるなあ。

2017/05/24(水)(村田真)

千一億光年トンネル

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会期:2017/05/20~2017/08/06

ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション[東京都]

若手作家への支援なのか、コレクション展だけでは人が集まらないからなのか、理由はどうあれ、個人美術館が現代美術展を企画するようになったことは歓迎すべきだ。今回は奥村綱雄、Nerhol、水戸部七絵に浜口陽三を加えた4人展。奥村はビルの警備のかたわら、夜の守衛室で黙々と刺繍を制作しているという。さまざまな色を密集させた刺繍は縦横20センチ程度と小さいものの、仕上げるまでに1点1年以上かかり、これまで15点しか制作してない。そのうち7点を公開し、併せて守衛室で刺繍する自撮りポートレートや刺繍道具なども展示。Nerholは、少しずつ異なる木のかたまりを撮った「multiple-roadside tree」のシリーズが中心。これは街路樹の切り株をスライスして1枚1枚撮影し、プリントを重ねたもの。平面+奥行きに時間までも入れ込んだ4次元写真だ。水戸部は油絵具を鉄製パネルに大量に盛った半立体絵画。だが、あまりに重いため4点中3点は寝かせている。モチーフはすべて人体か顔。いずれの作品も時間の蓄積を感じさせ、それが「千一億光年」という大げさなタイトルになったんだと思う。

2017/05/24(水)(村田真)

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村田真

1954年生まれ。『ぴあ』編集部を経て、美術ジャーナリスト/BankARTスクール校長。著書=『美術家になるには』ほか。共著=『橋を歩いてい...

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