毎月1日、15日号発行の美術館・アート情報をお伝えするWebマガジン(次回4月3日更新予定)

artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

TWS-NEXT @tobikan 「クウキのおもさ」

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会期:2017/02/18~2017/03/05

東京都美術館ギャラリーB[東京都]

トーキョーワンダーサイト(TWS)の展覧会やレジデンス・プログラムに参加したアーティストから、青木真莉子、伊藤久也、友政麻理子の3人を選抜した企画展。青木は中央に壇を設けて3面のスクリーンを立て、映像を流しているが、なんか見る気しないなあ。食いつきにくいというか、すっと入っていけないんでね。伊藤は弟の死をきっかけに始めたという人体彫刻を、野原や渋谷の交差点、雪道などさまざまな場所に置いて作者とともに撮影。それらの2ショット写真を壁に並べ、向き合うように実物の彫刻を対置させている。これは明快。友政は床に椅子や机、ブルーシート、ほうき、タライなどを散乱させ、壁に映像を何本か流している。《お父さんと食事》シリーズは、松本やブルキナファソなどさまざまな場所でテキトーなオヤジを見つけ、食事しながら会話する様子を撮ったもの。《あれは、私の父です》は、そこらにあるものを「父」だと言い張るビデオ。どれも1時間前後あるので見てないが、見ないでもおもしろい。これが「食いつき」のいい作品。

2017/02/26(日)(村田真)

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東北芸術工科大学卒業・修了展[東京展]

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会期:2017/02/23~2017/02/27

東京都美術館[東京都]

数千いや数万匹の蚊をほぼ原寸大で描写した萩原和奈可の《ユスリカの光》、半円筒状の画面にヘビの抜け殻だけをデカデカと描いた横濱明乃の《呼吸する刻》、高橋由一と東北芸工大の接点を探る久松知子の《三島通庸と語る》、同じく久松知子の《藝術界隈のつくり方》、幅6メートルはありそうな画面いっぱいにバブリーな金魚みたいな泡を描いた小野木亜美の《Babble─想像のはじまり》、料理の絵を20枚の小さな画面にアップで描いてコメントをつけた立石涼子の《すずこバイキング》がすばらしかった。ちなみに最初の3人は日本画専攻の大学院生。

2017/02/26(日)(村田真)

パロディ、二重の声 日本の1970年代前後左右

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会期:2017/02/18~2017/04/16

東京ステーションギャラリー[東京都]

「パロディ」の展覧会ならパルコあたりでやってるだろうけど、「1970年代前後左右」という限定つきだと(左右ってなんだ?)わかる人にはわかるというか、50歳以上にはピンと来るものがある。それはマッド・アマノの「パロディ裁判」であり、赤瀬川原平の『櫻画報』であり、雑誌の『ビックリハウス』だったりする。同展はそのど真ん中を行く企画。まずプロローグとして、最初の部屋には山縣旭(レオ・ヤマガタ)によるモナリザのパロディが40-50点ほど並ぶ。作者は今年83歳で、作品の大半は昨年つくられたというから同展の主旨からそれる番外編だが、1978年に「日本パロディ展(JPS)」でパルコ賞を受賞した経歴から特別展示となった模様。それにしても80歳すぎても人真似(パスティーシュ=文体模写というらしい)に専念とは、見上げた根性だ。展示は、60年代の篠原有司男、赤瀬川原平、横尾忠則、立石紘一(タイガー立石)らネオダダ、ハイレッドセンター周辺から始まり、木村恒久のフォトモンタージュ、誌面が白紙の『週刊週刊誌』、つげ義春の『ねじ式』をパロッたつげ義悪(長谷邦夫)の「バカ式」と赤瀬川原平の「おざ式」、読者投稿で成り立った『ビックリハウス』の創刊号から130号まで全巻、といった具合に進む。
ここまで来て、ふと思う。60年代の前衛美術にはまだ社会批判や毒があったが(パロディという言葉はまだあまり使われてなかった)、70年代になると政治性や芸術性の薄いナンセンスなパロディが蔓延していくのは、なぜなのかと。それはおそらく、70年安保闘争の敗北に連動して過激な批評精神が後退し、「シラケムード」が漂ったことがひとつあるだろう。もうひとつは、同展のオオトリとして控えていた「ミスター・パロディ」ことマッド・アマノの、いわゆる「パロディ裁判」も影響しているのではないか。これは写真家、白川義員の写真を無断使用して訴えられ、法廷闘争の結果アマノの敗訴となったもの。最高裁の判決が出たのは80年代だが、その過程で権威や権力(実際は「著作権」だが)に楯突くとヤケドするぞと、みんなビビったのかもしれない。いわば自主規制が働いて、パロディの矛先が内側に向かったということは考えられる。余談だが、パルコが始めた「日本パロディ展」は1980年に「日本グラフィック展」に発展、そこから出てきたヘタウマやニューペインティングが80年代のアートシーンの一角を占めていく。そう考えると、60年代の毒のある前衛美術は、70年代にパロディとして毒抜きされて、80年代に再びアートシーンに還流したといえるのではないか。

2017/02/26(日)(村田真)

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あざみ野フォト・アニュアル 新井卓 Bright was the Morning ─ ある明るい朝に

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会期:2017/01/28~2017/02/26

横浜市民ギャラリーあざみ野[神奈川県]

「あざみ野フォト・アニュアル」の7回目は新井卓の個展。新井の特徴は際立っていて、ひとつはダゲレオタイプ(銀板写真)を使うこと、もうひとつはおもに原発や原爆に関連するモチーフを撮っていること。今回はさらに見せ方にも工夫を凝らしている。《Here and There─明日の島》シリーズは、会場が暗いうえ銀板なのでなにが写ってるのか判然としない。そこで近づいてみると、センサーで天井から吊り下がった電球が灯り、六ヶ所村や原発事故周辺を写した風景写真が見える。この明かりを灯すエネルギーも原発だったら、とふと思う。と同時に銀板だから自分の顔も映し出され、否応なく自分が原発と向き合わざるをえなくなる仕掛けだ。一方、《明日の歴史》シリーズは広島と南相馬の子供を撮ったポートレートだが、こちらはセンサーではなく自動的に明かりが少しずつ移動していき、明かりが灯ってるあいだ、その子供のインタビュー音声が流れる仕掛け。そこまでやる必要あるか? とも思うが、新しい試みとして評価したい。ほかに記憶に残る作品が2点。《2014年3月23日、比治山公園より西北西に見かけの高度570mの太陽、広島》は、長いタイトルどおり、原爆が爆発した高度に太陽が見かけの上で達した瞬間を捉えたもの。画面の中心よりやや上に、いまだ核融合を起こし続けている太陽が刻印されている。恐ろしい写真だ。もう1枚、《2012年2月25日、陸前高田の松》は津波で1本だけ残った松を撮ったものだが、意図したものかどうか知らないけれど、これがキノコ雲に見えてならない。

2017/02/25(土)(村田真)

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篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE by KISHIN

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会期:2017/01/04~2017/02/28

横浜美術館[神奈川県]

平日の昼間なのにけっこうな混み具合。チケット売り場の前には列ができている。横浜美術館としては珍しいことだ。エスカレータで昇って正面の壁に、ポスターや宣材に使われたジョンとヨーコの接吻写真。よく見るとふたりともあんまりやる気なさそうだ。最初の部屋は暗い。壁が黒くて写真(巨大プリント)にだけ照明が当てられている。モデルは美空ひばり、夏目雅子、三島由紀夫、渥美清らで、この部屋のテーマは「ゴッド」。みなさん死者ですね。怖いのは美空ひばりの写真で、本人の右に大きな仏壇、左上には母や弟ら親族の遺影が入った黒縁の額が写ってる。画中画ならぬ写真中写真というか、この部屋の黒い壁が一種の黒枠みたいなもんだから、遺影中遺影というべきか。イエイ! ちなみにひばりの写真は粒子の粗さが目立つが、1970年に自害した三島はもちろん、ひばりも夏目もデジタルカメラで撮られたことはなかったはず。彼らはみんな光学時代の神々なのだ。だからなんだ? といわれても、へえそうなんだ! と納得するだけですが。ともあれ、これ以降の部屋に比べても、この部屋は死臭に満ちている。
この後、ピンク・レディー、北野武、南沙織、安室奈美恵、長嶋茂雄、山口百恵、檀蜜ら「スター」のポートレートが続き、歌舞伎とディズニーランドを撮った「スペクタクル」の部屋へ。これは華やか、このケレン味がいちばん紀信らしいかも。これを見ると蜷川実花が紀信の正統な後継者であることがわかる。ひとつ提案だが、ディズニーランドの登場人物や、次の部屋の大相撲の関取たちを撮ってつなげたパノラマ的写真(「シノラマ」なんて呼んでいた)は、継ぎ目が歪んで不自然なので、3曲か4曲の屏風仕立てにしたらどうだろう? 似合うと思う。その次が、大相撲のほか、宮沢りえ、樋口可南子らのヌードがある「ボディ」の部屋で、ここがいちばん混んでいた。そして最後が「アクシデンツ」と題して、被災地を背景にした名もなき被災者たちのモノクロポートレートの部屋。前室の混雑がウソのようにみんなそそくさと去っていく。実際この最後の部屋はとってつけたようにしか感じられなかった。

2017/02/24(金)(村田真)

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村田真

1954年生まれ。『ぴあ』編集部を経て、美術ジャーナリスト/BankARTスクール校長。著書=『美術家になるには』ほか。共著=『橋を歩いてい...

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2017年03月15日号