毎月1日、15日号発行の美術館・アート情報をお伝えするWebマガジン(次回10月1日更新予定)

artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

日伊国交樹立150周年特別展 アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち

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会期:2016/07/13~2016/10/10

国立新美術館[東京都]

ヴェネツィアのアカデミア美術館所蔵作品を中心とする展示。アカデミア美術館にはビエンナーレに行くたびに訪れるが、ウフィツィやヴァチカンに比べれば質量ともにかなり見劣りする。ヴェネツィア絵画を代表するティツィアーノはプラドをはじめ各国に分散してるからもともと少ないし、ティントレットはあるけど代表作はサンロッコ同信会館に集中してるし、自慢できるのはジョヴァンニ・ベッリーニ、カルパッチョ、それにジョルジョーネの《嵐》とヴェロネーゼの《レヴィ家の饗宴》くらい。もちろん今回は《嵐》も《レヴィ家の饗宴》も来てないけど、ベッリーニとカルパッチョは小ぶりながら特徴を備えた佳品が1点ずつ出品されている。ティツィアーノは2点あるけど、大作《受胎告知》は美術館ではなくサン・サルヴァドール聖堂から拝借して来たもの。でもこれ借りちゃったら祭壇は空っぽ? 出品点数は計57点と控えめで、なんだかヴェネツィア的な華やぎに欠けるなあ。

2016/08/31(水)(村田真)

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「KOGEI かなざわ2016」記者発表

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会期:2016/08/31~2016/08/31

dining gallery 銀座の金沢[東京都]

金沢21世紀美術館の「工芸とデザインの境目」を中心に、秋に金沢市内で展開されるイベント「KOGEI かなざわ」の記者発表。冒頭で最新ニュースとして、東京国立近代美術館附属の工芸館が2020年までに金沢に移転することが決定したと発表。グッドタイミングですね。続いて、「KOGEI かなざわ」の核となる「工芸とデザインの境目」(2016年10月8日~2017年3月20日)について、同展監修のデザイナー、深澤直人から説明がある。工芸とデザインの違いはなにか? 工芸は職人が手でつくるけど、デザインは機械が大量生産するとか、工芸は古ければ古いほど価値が増すけど、デザインは新しければ新しいほど価値が高いとか。そんな両者の境目を提示していくという。これはおもしろそう。そのオープニングから3日間、金沢市内の工芸店やギャラリーを中心に「かなざわKOGEIフェスタ!」を開催。街全体で工芸に触れてもらおうという趣向だ。そのほか、「金沢21世紀工芸祭」(2016年10月13日~2017年2月26日)、「第3回金沢・世界工芸トリエンナーレ」(2017年1月21日~2017年2月11日)など、秋から来春にかけて工芸イベントが目白押し。こんなに工芸一色に染まっていいの?

2016/08/31(水)(村田真)

トーマス・ルフ 展

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会期:2016/08/30~2016/11/13

東京国立近代美術館[東京都]

トーマス・ルフはドイツの現代写真を代表する作家のひとり。展覧会はよく知られた「ポートレート」シリーズから始まる。人の顔を正面から撮った写真だが、みんな有名人ではないし(ルフの友人たち)、どれも無表情でつまらない。そんなどうでもいい人のポートレートを、縦2メートル以上の大きさに引き延ばして並べているからおもしろい。被写体の属性に関心が向かない分、写真そのものを意識してしまう。これらの写真は「これらは写真である」と語っているだけなのだ。だからおもしろい。初期の「室内」シリーズも「ハウス」シリーズも基本的に同じで、ごくありふれた室内や建物をまるで「見本」のように撮っている。これらが80年代の作品で、90年ごろから天体写真「星」シリーズが始まるが、これは自分で撮った写真ではなく、天文台が天体望遠鏡で撮影したネガを元にしたもの。つまり天体を撮っているのではなく、天体を撮った写真がモチーフなのだ。同様のことはその後の「ニュースペーパー・フォト」「ヌード」「jpeg」「カッシーニ」と続くシリーズにもいえそうだ。これらはそれぞれ新聞に掲載された写真、インターネットのポルノサイトから拾ったヌード画像、圧縮されモザイク状に変容したデジタル画像、人工衛星から送られた天体画像を元にした作品で、一見バラエティに富んでいるけれど、すべて写真(画像)自体をモチーフにしている点で共通している。そして見ていくうちに気づくのは、ゲルハルト・リヒターとの近似性だ。「ニュースペーパー・フォト」はリヒターの初期のフォトリアリズム絵画を思わせるし、ネット上の画像を処理して虹色の画面を創出した「基層」シリーズは、リヒターの「アブストラクト・ペインティング」シリーズを彷彿させるし、「ヌード」シリーズの《nudes yv16》などは、リヒターの《Ema》そっくりだ。これは偶然ではないはず。リヒターが絵画による「絵画」を目指し、絵画の探求から写真に接近したとするなら、ルフは写真による「写真」を目指して絵画の世界に近づいたからだ。

2016/08/29(月)(村田真)

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第5回 新鋭作家展 型にハマってるワタシたち

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会期:2016/07/16~2016/08/31

川口市立アートギャラリー・アトリア[埼玉県]

この新鋭作家展は公募で作家を選ぶのだが、ただ作品を審査して入選作を展示するのではなく、市民も作品づくりに参加し、一緒に展覧会をつくっていく1年がかりのプロジェクトなのだ。そのため審査もポートフォリオ、プレゼンテーション、面談と3段階に分けて慎重に行なわれる。で、今年選ばれたのが大石麻央と野原万里絵という同世代のふたり。大石は、ハトのかぶりものと黄色いTシャツを着けたハト人間のポートレートを展示。これは会期前に開かれた「着るアート体験&撮影大会」で、100人を超す市民にかぶりものと黄色いTシャツを着けてもらって撮影。これらの写真に加え、ハト人間の等身大の像も展示している。野原は高さ5メートル、幅10メートル近い大絵画2点の出品。木炭でステンシルの技法を使って描かれたモノクロ画面だ。こちらは「パンと炭で巨大壁画に挑戦」というワークショップを開催。子供たちが型紙を使って野原とともに協働制作を行なった。大石は同じマスクとTシャツを使い、野原は型紙をステンシルとして用いる点で、どちらも「型」を重視していることから、タイトルは「型にはまってるワタシたち」になったそうだ。美術館ほどの規模もコレクションもない施設だが、それだけに市民に密着した活動に磨きがかかっている。

2016/08/28(日)(村田真)

ときたま展 ぷらたま生誕!

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会期:2016/08/22~2016/08/27

巷房[東京都]

ペラペラの透明なプラスチック板「プラバン」に、油性ペンで絵を描いて切り取り、トースターで熱すると3分の1ほどに縮まって手ごろなアクセサリーとなる。知らなかった。ときたまは1年前これにハマって半年足らずで千個を越えた。次にサイズを大きくしたり、3枚組み合わせて自立する彫刻にしたりどんどん進化。全部で1500個ほどになり、「ぷらたま」と名づけて個展を開くことにしたという。3階の巷房1では大作(といっても30センチくらい)を百個ほど、地下の巷房2では透明な袋に入れた小品を千点ほど、階段下には数百個を床にインスタレーションしている。しかしいくらハマったとはいえ、絵を描くのが好きじゃなかったと自認する人(だから描かれているのは抽象パターン)が、1年たらずで1500個もつくるか? 本人いわく「人間、何がやってくるか分からない。天からやって来たとしかいいようがない」。抽象パターンといい、天啓といい、集中力といい、ある種のアウトサイダーアートを思わせる。

2016/08/26(金)(村田真)

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村田真

1954年生まれ。『ぴあ』編集部を経て、美術ジャーナリスト/BankARTスクール校長。著書=『美術家になるには』ほか。共著=『橋を歩いてい...

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2016年09月15日号