artscapeレビュー

クリエイティブアイランド中之島、大阪中之島美術館

2021年11月15日号

[大阪府]

クリエイティブアイランド中之島の国際ミーティング「都市のアーカイブ──その実践と創造的活用」のイベントに登壇した。最初にシカゴ美術館のアーカイブ・ディレクター、ナサニエル・パークスとフランクフルトのドイツ建築博物館のアーカイブ部長、カチャ・ライスカウによるレクチャーの収録映像が流されたが、前者は建築家のダニエル・バーナムも創設に関与しており、近現代の建築を誇りにする街ならではの活動、後者は図面だけでなく、模型も積極的に収集しつつ、今後のデジタル・データの課題を紹介していた。ちなみに、シカゴはニューヨークに先駆けて、世界で最初の高層ビルの近代都市を実現し、現在はそうしたレガシーを活用しつつ、シカゴ建築ビエンナーレや日常的にさまざまな建築ツアーなどを開催し、シカゴ美術館では建築展も企画されている。もちろん、日本でもようやく国立近現代建築資料館が登場したが、都市との連携はなく、立体物は収集しておらず、まだ十分とは言えない。

来年2月に開館する大阪中之島美術館は、アーカイブを重視し、積極的に推進しつつ活用するという。そこでイベントが始まる前に、遠藤克彦が設計した美術館を見学する機会に恵まれた。外観はシンプルな黒いキューブだが、内部は一転して複雑な空間の構成である。立体的な動線が交錯する迷宮風のデザインはピラネージ、艶やかさはジャン・ヌーヴェルを想起させるだろう。また南北や東西軸に沿って、大きな開口から外の風景が見えるのも、効果的である。大都市の中心部において、ビルの内部ではなく、巨大空間をもつ独立した美術館の建築は、意外とこれまでの日本になかったはずだ。そもそもクリエイティブアイランド中之島のプロジェクトは、各種の美術館やホールなど、文化施設のネットワークをつくりながら、新しいものを生みだすことをめざしている。大阪中之島美術館はその重要な一翼を担うはずだ。

また、コロナ禍のためにしばらく入りづらかった安藤忠雄による《こども本の森 中之島》 (2020)もようやく訪問した。あわせて手前の道路が広い歩行空間になり、昔から中之島に対するプロジェクトを提案してきた彼にとって、ここに建てることの意味が大きい建築である。また日建設計による隣の《大阪市立東洋陶磁美術館》(1982)は、室内のあちこちから外の風景が見え、特殊な自然採光を試みるなど、さまざまな工夫がなされていた。陶器の美術館だからこそ可能になった展示の空間だろう。


大阪中之島美術館



《こども本の森 中之島》



《こども本の森 中之島》



《大阪市立東洋陶磁美術館》



《大阪市立東洋陶磁美術館》


クリエイティブアイランド中之島「都市のアーカイブ ― その実践と創造的活用」

開催日:2021年9月30日(日)
会場:大阪中之島美術館×アートエリアB1国際ミーティング
プレゼンテーター:ナサニエル・パークス(シカゴ美術館アーカイブ・ディレクター)、カチャ・ライスカウ(ドイツ建築博物館アーカイブ部長)
ディスカッサント:五十嵐太郎(建築史・建築批評家、東北大学大学院教授)、渡部葉子(慶應義塾大学アート・センター教授)
モデレーター:植木啓子(大阪中之島美術館学芸課長)、木ノ下智恵子(大阪大学准教授、アートエリアB1運営委員)

2021/09/30(木)〜2021/10/01(金)(五十嵐太郎)

2021年11月15日号の
artscapeレビュー