artscapeレビュー

植田真紗美「海へ」

2022年06月15日号

会期:2022/05/03~2022/05/15

百年/一日[東京都]

東京出身で玉川大学文学部リベラルアーツ学科、日本写真芸術専門学校を卒業した植田真紗美は、2018年の第19回写真「1_WALL」展でファイナリストに選出されるなど、このところ存在感を増している写真家の一人だ。昨年10月に、ファースト写真集『海へ』(Trace)を刊行し、仲間たちと共同運営している東京・恵比寿のKoma galleryで同名の個展を開催した。今回の東京・吉祥寺の古書店「百年」とその姉妹店の「一日」での展示は、同展のアンコール企画である。

一点一点が力強く、鋭角的に結晶しているように見える写真が並ぶ。それぞれの写真の相互関係もよく考えられ、練り上げられており、高度な表現力の持ち主であることがよくわかった。ただ、「海へ」というテーマ設定が、やや抽象的すぎて、植田の生のあり方とどのようにかかわっているのかがうまく伝わってこない。宇宙的な広がりを感じさせるスケールの大きな写真と、身近な身体的なイメージとの落差を、埋め切れていないもどかしさも感じた。植田が2013年から、布川淳子、川崎璃乃らとともに刊行している写真同人誌『WOMB』(2021年の11号まで刊行)にも、「海へ」シリーズが掲載されているのだが、こちらにはパートナーの男性など、より具体的なイメージが入っている。写真集・写真展の構成にやや迷いがあったのではないだろうか。

とはいえ、植田のような発想力と行動力を兼ね備えた写真家は、殻を破れば大きく飛躍していくのではないかと思う。その潜在能力を活かして、むしろひとつのテーマにより集中していってほしい。「一日」の展示スペースで上映されていたスライドショーには、また別な可能性を感じた。写真の点数をもっと増やし、音楽との相性を吟味していくことで、よりダイナミックな物語性を備えた作品世界が構築できるのではないだろうか。

2022/05/13(金)(飯沢耕太郎)

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