artscapeレビュー

吉野英理香「WINDOWS OF THE WORLD」

2022年12月15日号

会期:2022/11/12~2022/12/10

amanaTIGP[東京都]

吉野英理香がamanaTIGPの前身であるタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで個展「MARBLE」を開催したのは2018年だから、ひさびさの展覧会ということになる。だが、五官を柔らかに刺激しつつ、現実と幻影の間に像を結ぶような彼女の作品世界のあり方は健在で、しかもその洗練の度を増しているように感じられた。

吉野は1990年代半ばにモノクロームの路上スナップ写真の撮り手として登場した。だが、2010年代にカラー写真の制作を開始してからは、むしろ身近な日常の断片にじっと目を凝らし、その微かな身じろぎを画面に刻みつけていくような作風を育てあげていった。被写体に過度の感情移入をすることを注意深く避け、むしろ吉野自身の眼差しに収束することのない、普遍的とさえいえるような視覚世界を探求し続けてきたのだ。今回の「WINDOWS OF THE WORLD」でも、水面の反映、ガラス窓の映り込み、階段の表面の反射、鳥の影など、純粋な視覚的表象へと関心が集中しているように見える。

ただ、バート・バカラックの曲名をタイトルにしていることからもわかるように、その視覚世界は単純に純粋化、抽象化されているのではなく、聴覚、触覚、嗅覚などとも連動するように組み上げられている。一見、外国で撮影されているように見えて、すべて彼女の住む北関東の街の周辺にカメラを向けていることも含めて、現実世界の様相を、そのリアリティを保ちつつ、微妙にずらしていく手際はより鮮やかなものになりつつある。なお展覧会に合わせて、図版51点をおさめた同名の写真集がPAISLEYから刊行されている。


公式サイト:https://www.takaishiigallery.com/jp/archives/27841/

2022/11/16(水)(飯沢耕太郎)

2022年12月15日号の
artscapeレビュー