artscapeレビュー

横木安良夫「追い越すことのできない時間 Catch it if you can」

2023年07月15日号

会期:2023/05/30~2023/06/11

Jam Photo Gallery[東京都]

横木安良夫は1949年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、篠山紀信のアシスタントを務め、1975年からフリーの写真家として活動し始めた。以後、ファッション・広告写真からドキュメンタリーまで幅広いジャンルで活動してきた。近年は文筆活動も精力的に展開している。

今回のJam Photo Galleryでの展示は、その彼がこれまで撮影してきた膨大な量の写真群のなかから、さまざまな「時間」のあり方を感じさせる写真をピックアップしたものである。被写体の幅はかなり大きく、撮影期間も1972年から2015年ごろまでに及ぶ。いわば、一人の写真家の眼差しの年代記とでもいうべき構成だが、あえてアトランダムに、キャプションも一切入れずに大小の写真を壁に配置した展示がとてもうまくいっていた。一点一点の写真が、自分自身でそれぞれの物語を語りかけてくるようで、楽しく、充実した時間を過ごすことができた。

なかに1点だけ、ジョギング中の少女を車で追い越しながらシャッターを切った3枚の写真を、あとでつなぎ合わせた合成写真があった。ストレートな写真が並ぶなかでは、かなり異質に見えるのだが、逆にこのような遊び心の発揮の仕方に、横木の写真家としての可能性が現われているようにも感じる。彼の写真の世界には、まだ奥行きがありそうだ。切り口を少しずつ変えながら、あるいはテーマをもっと絞り込んで、連続展を開催することも考えていいのではないだろうか。


公式サイト:https://www.jamphotogallery.com/exhibitions#comp-lh18gi8a

2023/06/09(金)(飯沢耕太郎)

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