2017年08月01日号
次回9月1日更新予定

artscapeレビュー

酒井千穂のレビュー/プレビュー

山部泰司展─溢れる風景画2014─

twitterでつぶやく

会期:2014/12/16~2014/12/28

LADS GALLERY[大阪府]

会場の入り口正面にどんと展示された200号の大作の迫力が印象的だった山部泰司展。森のなかを流れる川や滝。水の流れる風景が褐色を帯びた赤で描かれた絵画が多数展示されていた。一見均整と調和のとれた奥行きのある世界なのだが、よく見ると画面の遠近やモチーフのバランスに違和感を覚えて、こちらの感覚も少し混乱する。作品ごとにやたら画面の細部に目が引き寄せられるのもそのせいだろうか。画面にいくつもの時間と空間が入り混じり、じっと見ていると「見る」ということ自体を意識させられるから不思議。今展にはデルフトブルーのような青で描かれた作品シリーズも展示されていた。赤褐色の画面を眺め続けた目にそのブルーがなんとも心地よく映る。展示自体も魅力的だった。

2014/12/20(土)(酒井千穂)

宇加治志帆 Learning to be human

twitterでつぶやく

会期:2014/12/12~2014/12/21

FUKUGAN GALLERY[大阪府]

最近はアクセサリーなどの制作も行っているアーティストの宇加治志帆が久しぶりに個展を開催していた。平面作品、実際に身につけることができるウェア、立体作品をインスタレーションにした展示空間はリズミカルな色やかたちで彩られていて目にも心地良く、タイトルからイメージをつなぎあわせて連想を膨らますのが楽しい会場だ。ちょうど居合わせた他の来場者とともに、展示された貫頭衣スタイルのワンピースやスカートを着て一緒に写真を撮影することにもなったのだが、作家に立ち位置やポーズを指示され、まるでファッション雑誌かなにかの1ページをつくるように慎重に撮影が行われたのが面白かった。これもまた作品の一部だったのだろうか。視覚的なイメージがパズルを組み合わせていくように展開していく、映画みたいな展覧会。なかなか素敵だった。


会場の様子

2014/12/20(土)(酒井千穂)

国谷隆志展

twitterでつぶやく

会期:2014/12/09~2014/12/21

アートスペース虹[京都府]

国谷隆志といえばネオン管をつかった作品がすぐに浮かぶのだが、今展には、国谷が近年発表しているネオン管による言葉のインスタレーション作品のほか、読み終えた本から全てのページを切り離し、街中で行き交う人々にただ配布するというニューヨークとヴェネチアの二箇所で行われたプロジェクトのドキュメント映像作品も発表された。どちらも、『人は自己という存在や自らを取り巻く世界、事物のあり方に対してどのように向き合うのか』という存在と認識(までの時間)にアプローチする作品。映像として発表された本のページの配布プロジェクトに使われたのは、ミヒャエル・エンデの『モモ』とスタニスワフ・レムの『ソラリスの陽のもとに』だった。この二冊を選んだのはどうしてなのだろう。物語の先入観に妨げられてややピントが合わない感じがしたが、国谷の新たな制作への意欲もうかがえた個展。

2014/12/16(水)(酒井千穂)

プレビュー:蛇谷りえ×飯室織絵「ローカルへの“入り口”を編集する ~鳥取と長野から」『The World Above』刊行記念

twitterでつぶやく

会期:2014/12/20~2014/12/20

本屋B&B[東京都]

鳥取県で元旅館だった建物を譲り受け、2012年よりゲストハウス&カフェ「たみ」を運営する三宅航太郎と蛇谷りえ。「うかぶLLC」という社名で、このゲストハウスを運営しながら印刷物をメインとしたデザイン企画制作や地域文化振興を目的としたプロジェクトの企画なども行なっている。たとえば、「たみ」にて音楽家・野村誠によるピアノ演奏会を開催したり、地元の空き家を会場にアートイベントを催したりと、最近の彼らの活動にはますます興味をそそられる。
その「うかぶLLC」が台湾系アメリカ人の写真家パトリック・ツァイと共同制作した写真集『The World Above』(
http://ukabullc.com/works/2015/01/764.php)が先頃刊行された。今回の対談は「ひとりの青年が1年間におよぶ登山の旅に出る」というストーリーをもとに、鳥取の山々で撮影されたこの写真集の発売記念イベント。写真集も手に取ってみたいが、その制作エピソードや地域との関わりなど、ここではまた面白そうな「ローカルな地域への”入り口”」について聞くことができそう。

Patrick Tsai 写真集《The World Above》とカレンダー『The World Above』より

2014/12/14(酒井千穂)

鉄道芸術祭vol.4「音のステーション」プログラム

twitterでつぶやく

会期:2014/10/18~2015/12/23

アートエリアB1[大阪府]

京阪なにわ橋駅の地下一階コンコースに2008年に開設されたアートエリアB1。「文化・芸術・知の創造と交流の場」をテーマに、企業・大学・NPO法人が協同で、駅という特性やその可能性に着目したさまざまなイベントや展覧会を実施している。この会場を舞台に2010年よりはじまった「鉄道芸術祭」は多様なプログラムを展開するアートイベント。第4回目となった今回は〈音・技術・ネットワーク〉をテーマに開催された。「音」にまつわる制作活動を行っているアーティストの作品展示のほか、コンサート、公開ラジオ、トークライブなど多数のイベントが行われた。なかでも斬新だったのが実際に走行する電車内でのライブ・パフォーマンス「ノイズ・トレイン」。出演アーティストの伊東篤宏、鈴木昭男、和田晋侍とともに観客も中之島駅発の貸切電車に乗り込み、出発の中之島駅から樟葉駅で折り返す電車が、なにわ橋駅に到着するまでのおよそ一時間半の公演。放電ノイズを拾って音を発する伊東のオリジナル楽器、「OPTRON」のライブが行われた車両内部は人だかりで、私はあまり接近できなかったが、車窓全てのカーテンがひかれたなかでチカチカと強い光が明滅するその怪しげな車両はノイズ音と光がスパークする強烈な空間だった。2つの車両を移動しながら行われたサウンド・アーティストの鈴木昭男の《アナラポス》演奏、和田晋侍のドラム演奏空間など、観客はアーティストたちがそれぞれライブを行う車両を自由に移動しながらパフォーマンスや空間を楽しむのだが、その時間自体が刺激的で面白い。電車の走行音や車窓を流れていく外の景色、通過する駅の様子がいつもとは違うものに感じられ、新鮮。ユニークで独創的なイベントだった。


電車公演「ノイズ・トレイン」ウェブサイトhttp://artarea-b1.jp/archive/2014/1206629.php

2014/12/06(土)(酒井千穂)

▲ページの先頭へ

酒井千穂

1974年生まれ。美術ライター。「 アート遊覧 」などに執筆。

文字の大きさ