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artscapeレビュー

森と湖の国──フィンランド・デザイン

2013年02月01日号

会期:2012/11/21~2013/01/20

サントリー美術館[東京都]

一般的にフィンランドのデザインには、生活に密着し、機能的・合理的でありつつも、美しさを追求したものが多い。短期間に消費されてしまうのではなく、長期にわたって作られ続け、売られ続け、そして使い続けられるデザインである。フィンランドのガラス・デザインにも同じことが言える。本展は、フィンランドのガラス・デザインの歴史を辿り、そしてこれからのデザインを考える展覧会である。フィンランドのガラス産業の歴史は、ヨーロッパの他の国と比べてそれほど古くはない。産業として本格的にガラスが製造されはじめたのはスウェーデン統治下の18世紀半ばで、ロシア統治下(1809~1917)の19世紀後半から拡大する。イッタラ社が設立されたのも1881年のことである。デザインを重視し、国際市場で高く評価されるようになったのは、家具や陶磁器と同様に1950年代。戦後、外貨獲得という国策もあって、デザイナーと職人のコラボレーションによって、モダン・デザインをリードする製品が作られていった。カイ・フランク、タピオ・ヴィルッカラらのデザインは、まったく古さを感じさせない。しかし問題は、現在そしてこれからのガラス・デザインであろう。アートとしてガラス作品を作り、国際的に活躍するアーティストも増えている。ハッリ・コスキネンを最後に現在イッタラ社では企業デザイナーを内部に抱えず、作品ごとに外部から招聘するかたちをとっているという。となると、イッタラ、ひいてはフィンランド・デザインのアイデンティティはなにを拠り所にすることになるのだろうか。「優れた品質によって、人々に、『自分は長く大切に使えるものの選択をした』という満足感を与えること。そして、それを人々が買える範囲の、できる限り押さえた価格で提供する……人々が『これは自分のライフスタイルへの投資なのだ』と思って買っていってくれる、それこそがイッタラ社のブランド力だと思う」というコスキネンの言葉★1は、海外製品との熾烈な競合に曝されている日本メーカーのプロダクトにとっても非常に示唆的である。[新川徳彦]

★1──『森と湖の国──フィンランド・デザイン展図録』(サントリー美術館、2012、174頁)。

関連レビュー:フィンランドのくらしとデザイン──ムーミンが住む森の生活

2013/01/19(土)(SYNK)

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