2018年12月01日号
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artscapeレビュー

2013年02月01日号のレビュー/プレビュー

JAGDAやさしいハンカチ展 Part 2

会期:2013/01/15~2013/02/17

東京ミッドタウン・デザインハブ[東京都]

東日本大震災の復興支援のためのプロジェクトである。デザイナーたちが東北の小学校でワークショップを行ない、232名の子どもたちが絵を描いた。この絵を素材に、JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)の会員385名がハンカチをデザインする。デザインされたハンカチは絵を描いた子どもたちに贈られるとともに、全国を巡回する展覧会会場で1枚1,200円で販売され、販売収益もそれぞれの小学校に還元されるという。子どもたちの描いた絵も楽しいが、それがデザイナーたちによってどのように「料理」されたかを見るのもまた楽しい。会場では子どもたちの絵とハンカチが別々に展示されていたが、両者を並べて見せても面白かったのではないかと思う。昨年度のプロジェクトは純粋にデザイナーたちがデザインしたハンカチを販売し、売れたハンカチと同数を被災地の小学校にプレゼントするというものであった。今年度は子どもたちとともにつくるというバージョンアップ版。正直なところ、この企画がどれほど被災地復興に役立つのかはよくわからなかったが、そのようなきっかけがなければ存在しなかったプロジェクトであることは間違いない。記憶を風化させないという視点からすると、東北に限定せず、全国でワークショップを展開するのも良いかもしれない。[新川徳彦]

2012/01/19(土)(SYNK)

approach200 1964-2012

会期:2012/12/03~2013/01/31

ギャラリーA4[東京都]

1964年、東京オリンピックの年に発刊された竹中工務店の企業PR誌『approach』(季刊)は、2012年12月に200号を迎えた。アートディレクションは田中一光、写真家には石元泰博、編集には瀬底恒。編集やデザインを通じた人と人とのネットワークの形成。そして充実した執筆陣。そしてなによりも約50年にわたって継続して刊行されてきた事実は、他の企業誌の追随するところではない。毎号のテーマは自社の仕事の紹介にとどまらず、建築を取りまく社会環境や歴史、人物など、多岐にわたっている。展覧会ではこれまでに取り上げられてきた内容を「Design & Art」「Nature & Environment」「Life & Education」「History & Heritage」「For the future」「People」の六つに分類し、紹介している。会場は、図書室のようなしつらえ。中央には閲覧用の大きな机があり、その周りに杉板製の本棚が配置されている。本棚には、六つのテーマで分けられた『approach』と、テーマに関連する建築、デザイン、文化、社会、民俗、文学等々の書籍が多数収められており、すべて手にとって読める。コーヒーも販売されていて、ゆっくり過ごせる。『appproach』のコンセプトを物理的な空間に展開するならかくあるべし、ともいうべきすばらしい会場構成であった。[新川徳彦]

2012/01/28(月)(SYNK)

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ポコラート全国公募展vol.3 アール・ブリュット? アウトサイダー・アート? ポコラート!福祉×表現×美術×魂

会期:2012/12/14~2013/01/20

3331 Arts Chiyoda[東京都]

「ポコラート」とは、Place of “Core+Relation” Art を意味する造語で、障がいのある人と障がいのない人、そしてアーティストが出会う場として考えられている。3回目となる本展では、1,300点あまりの応募作のなかから厳選された214点の作品を展示した。
会場を一巡してみて感じるのは、空間に満ち溢れたエネルギーの凄まじさ。すべての作品と向き合うと体力を消耗するほど、一つひとつの作品からは得体の知れない何かが放たれている。それは外向的な存在感というより、むしろ内向的な磁力と言うべきもので、それらが錯綜することで磁場が乱れていたように見えた。
刺繍の作品が数多く出品されていたが、その内実はじつに千差万別だ。緻密なステッチによって図像を描くものがあれば、ストロークがやたらに大きい大作もある。いわゆる「刺繍作品」として括ることが難しいほど、さまざまなベクトルが入り乱れていたのである。
なかでもひときわ目を引きつけられたのが、金崎将司の《百万年》。灰色の物体が転がっているが、よく見ると断面には幾重にも層が折り重なっている。随所に文字らしき痕跡が見えるから、きっと雑誌や広告などを堆積させたのだろう。聞くと、それらから切り取った図像を水糊で貼り合わせていき、時折サンドペーパーで表面を削り取るのだという。その単純明快な手作業を反復することで、ぺらぺらの紙片を立体にまで仕上げた迫力! この他に類例を見ない造形の力があってこそ、障がいのある人とない人、そしてアーティストを出会わせることができるのだろう。
「ポコラート」は生まれてまだ日が浅い。それを流行のキーワードとして消費させないためには、たえず新しい出会いに挑んでいくほかない。そのためにはまず、私たちが内面化してしまっている「美術」のフレームをあえて外す意欲が必要である。「はだかの眼」がなければ、新たな出会いは期待できないからだ。その難しさを楽しむ知恵を磨きたい。

2012/12/28(金)(福住廉)

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007スカイフォール

会期:2012/12/01

日劇[東京都]

アクション映画の敵役といえば、冷戦時代ならソ連、その後はイスラム諸国や中国、そしてロシアなど、いずれにせよアメリカを中心とした覇権的な構造から導き出されることが多かった。ところが、「007」シリーズの最新作に登場する敵は、MI6の元エージェント。組織に忠誠を誓って奉仕してきたにもかかわらず、組織に裏切られ、復讐の鬼と化してMI6を恐怖と危機に陥れる。いわば身から出た錆だが、そのような敵対性のありようが、外部に敵を対象化することのできない今日の複雑な政治的リアリティーと同期していたように思えた。ラビリンスのような上海や退廃的で甘美なマカオなどの映像はたしかに美しい。しかし、この映画の醍醐味は、その映像美も含めて映画の全編に漂っている、言いようのない哀愁感である。それが、時代の趨勢から取り残されつつあるボンドやMの衰退に起因していることはまちがいない。だが同時に、敵を内側に抱え込まざるをえない私たちの悲哀にも由来していたのではないだろうか。

2013/01/01(火)(福住廉)

フジイフランソワ展

会期:2013/01/07~2013/01/19

Oギャラリーeyes[大阪府]

大阪では約2年ぶりとなるフジイフランソワの個展。今回は、付喪神を描いた百鬼夜行図風の作品や、和菓子と動物を掛け合わせた小品のほか、《月のコブコブラ》《高座龍神》と題された大作2点も出品された。特に《高座龍神》は、この作家にしては珍しく人物(正確には神像)を描いており、貴重な作例だ。今後は人物を描く機会が増えるのだろうか。次の個展がいまから楽しみだ。

2013/01/07(月)(小吹隆文)

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