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第4回ソウル都市建築ビエンナーレ(ソウル都市建築展示館/ソウル市民庁・市庁舎会場)

2023年10月01日号

会期:2023/09/01~2023/10/29

ソウル都市建築展示館/ソウル市民庁・市庁舎[韓国、ソウル]

第4回ソウル都市建築ビエンナーレの都市建築展示館と市民庁・市庁舎の会場を訪れた。これまでに初回と2回目を見ているのでこれで3度目だが、今回の全体テーマは「ランド・アーキテクチャー、ランド・アーバニズム」であり、複数のテーマから構成されている。このエリアでは、「ソウル100年のマスタープラン」と、各国のプロジェクトを紹介する「ゲストシティ」、海外建築家へのインタビューなどが展示されていた。いずれも文字の説明が多いパネルを用い、すべてを読み込むのには相当な時間がかかる。「ソウル100年〜」は、タイプAからタイプFまでの方向性の分類を提示しながら、山、水と風の道から構成される自然環境を背景として、密集都市ソウルに関するさまざまなヴィジョンを提案するものだ。身近なコミュニティの建築ではなく、気候変動など、大きな時間軸を意識した未来的な都市デザインの提案もあり、意欲的な試みである。また「ゲストシティ」ではロッテルダム、シアトル、ブダペスト、シンガポール、香港、ニューヨーク、トロント、パリ、セビリア、東京などの開発の事例を紹介していた。著名な建築家としては、スティーヴン・ホール、ヘルツォーク&ド・ムーロン、ドミニク・ペローらの作品を含む。


「ソウル100年のマスタープラン」、グリーンネットワークに関する展示セクション(ソウル都市建築展示館)


「ゲストシティ」、セビリアの開発事例の紹介(ソウル市民庁)


「ゲストシティ」、スティーヴン・ホールによる「Z次元アーキテクチャ」の展示セクション(ソウル都市建築展示館)


東京については、三つの展示が出品されていた。まず都市建築展示館では、日建設計によるMIYASHITA PARKと東京駅八重洲口の開発である。そして市民庁における、クリスチャン・ディマーと小林恵吾による池袋の「Ikebukuro, Tokyo: Probably Public Space?(おそらく公共空間?)」(小林は2017年のビエンナーレでも、谷中調査を出品)と、ジエウォン・ソンらによる日本橋や丸の内周辺の再開発のリサーチだった。ほかの都市とは違い、いわゆるアトリエ系の建築家によるプロジェクトが選ばれていないのは、そもそも彼らの注目すべき作品が、東京にないという状況を暗示していたのかもしれない。


日建設計による開発事例の紹介(都市建築展示館)


クリスチャン・ディマー+小林恵吾による「Ikebukuro, Tokyo: Probably Public Space?(おそらく公共空間?)」(ソウル市民庁)


ジエウォン・ソンらによる日本橋、丸の内周辺の再開発のリサーチ(ソウル市民庁)


なお、都市建築展示館では、第41回ソウル建築賞の展示も開催しており、最優秀賞は安藤忠雄が設計した《LGアートセンター》(2022)だった。前回、時間切れで訪問を断念していたが、今回は金浦空港入りでその近くなので、立ち寄ってきたばかりだった。これは貫通する円筒、幾何学的なボリュームの組み合わせを明快に表現したデザインをもつ。ホールゆえに、外観のみでも仕方ないと思ったが、各階のホワイエまで見学することができた。施設が開放的だったことで、さらに心象が良かった。


《LGアートセンター》



第4回ソウル都市建築ビエンナーレ:https://2023.seoulbiennale.org/indexENG.html



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