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2019ソウル都市建築ビエンナーレ

2019年10月15日号

会期:2019/09/07~2019/11/10

東大門デザインプラザ(DDP)、敦義門博物館村、ソウル都市建築展示館、ソウル歴史博物館[韓国、ソウル]

社会から疎外された弱者のために構想する「Shelter for soul」のコンペの二次審査のため、ソウルを訪れた。1/1のリアル・スケールで、実際に屋外で制作されたファイナリストの15組の審査の途中から台風が激しくなり、夕方から撤去されることになった。したがって、残念なことに、翌日の表彰式は作品がない状態となり、台風が完全に過ぎてから、再度、設置されたらしい。



「Shelter for soul」の表彰式の風景

ちょうど第2回目の2019ソウル都市建築ビエンナーレがスタートするタイミングであり、そちらのオープニングに足を運んだ。市長が建築に力を入れており、2017年に開始したものだが、実は前回も見学する機会に恵まれた。前回と同様、ザハ・ハディドが設計した東大門デザインプラザ(DDP)がテーマ展示を行なうメイン会場であり、近現代の街区をまるごと保存した敦義門博物館村も都市建築を展示するサブの会場となっている。また新しく会場に加わったのは、今年の春にオープンしたソウル都市建築展示館と、ライブ・プロジェクトを行なうソウル歴史博物館だ。そして全体のテーマは「コレクティヴ・シティ」である。

全体のヴォリューム感は、前回に比べると、やや減っているように思われた。なぜなら、東大門デザインプラザのスロープは映像やパネルの展示が多く、立体的なインスタレーションがあまりなかったからである。また展示室内も、前回はぎゅうぎゅうに各都市の展示を並べていたのに対し、今回はかなり空間に余裕があった。



*メイン会場・東大門デザインプラザのスロープの様子



アトリエ・ワンの展示風景


展示物として印象に残ったのは、メイン会場では中国の農村における現代建築プロジェクト群やワークショップ、ダッカの雑貨屋を再現したインスタレーション、歴史博物館ではソウルの市場の歴史、博物館村ではヴェネズエラのモールが避難所や監獄に転用された二重螺旋の巨大構築物、展示館では再現された北朝鮮のスーパーマーケットなどである。



DDPにおける、中国の農村における現代建築プロジェクト群



DDPにおける、ダッカの雑貨屋を再現したインスタレーション



ソウル歴史博物館における、ソウルの市場の歴史の展示



敦義門博物館村における、ヴェネズエラのモールが監獄に転用された巨大構築物の模型



ソウル都市建築展示館における、北朝鮮のスーパーマーケットの再現展示


前回も平壌のマンションのインテリアを再現した展示がインパクトを与えたが、今回も北朝鮮が目を引いた。ともあれ、市がこうした建築や都市をテーマにしたビエンナーレを継続していることは、東京では考えにくいイヴェントであり、とても羨ましい。

公式サイト:http://www.seoulbiennale.org/2019/

2019/09/07(土)(五十嵐太郎)

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