artscapeレビュー
第4回ソウル都市建築ビエンナーレ(松峴緑地広場会場)
2023年10月01日号
会期:2023/09/01~2023/10/29
松峴緑地広場[韓国、ソウル]
今回のソウル都市建築ビエンナーレの全体ディレクターは、5月に釜山で《キスワイヤー・センター》(2013)と工場をリノベーションした文化施設《F1963》(2016)など、彼の作品を見ていた韓国の建築家チョ・ビョンスだった。メイン会場は、都心でありながら、植民地の時代は朝鮮殖産銀行の社宅、戦後はアメリカ軍の宿舎などに使われていたため、長い間壁に囲まれていた松峴緑地広場である(2022年10月から公園として開放)。今後、ここをどう活用するかが検討されているらしい。ともあれ、これまでのビエンナーレは東大門デザインプラザがメイン会場だったので、初めての屋外の展示空間は大きく印象が変わり、市民に知られるチャンスを増やしたはずだ。また東側には、学校をリノベーションし、2021年にオープンした《ソウル工芸博物館》も存在する。屋外に仮設のパヴィリオンやインスタレーションが点在し、いずれも身体で体験する空間になっており、解説の文字は少ない。すなわち、サブ会場となる都市建築展示館と市民庁とは明快に役割を分担している。
広場では、ビエンナーレに先行して高さ12メートルの階段式の象徴的な構築物が建設され、ソウルの風景を眺める展望台「ハヌルソ」(空と出会う場所という意味)になっている。普通に街を歩いていても、これは何だろう? と気づくくらいの存在感をもつ。なお、周りの山の風景と呼応するかのように、頂部の床には土が盛られていた。ビエンナーレでは、これを「スカイ・パヴィリオン」と命名し、その脇にランドスケープとして、低い丘の中央に水を貯めた「アース・パヴィリオン」が存在する。
また大階段の下では、グローバル・アート・アイランドのコンペ案(トーマス・ヘザーウィックやBIGらが入賞)や、世界各地の大学から漢江の未来像を提案する「グローバル・スタディーズ」を展示していた。ほかには中庭の屋外を反転しつつ室内化したようなアウトドア・ルーム、大きな三角形に挟まれたペア・パヴィリオン、空気を送り込んで膨らむドーム、竪穴式住居のようなパヴィリオン、音が鳴るサウンド・オブ・アーキテクチャー、テントの下の丸いドローイング・テーブルなど、国内外の建築家による作品が楽しめる。こうした展開は、これまでのビエンナーレになかった新機軸だろう。
第4回ソウル都市建築ビエンナーレ:https://2023.seoulbiennale.org/indexENG.html
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