2017年06月15日号
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artscapeレビュー

高田冬彦『Many Classic Moments』(高田冬彦+平川恒太「第2回 道徳」展)

2011年05月01日号

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会期:2011/04/13~2011/04/24

Art Center On Going[東京都]

高田冬彦は今年度東京藝術大学大学院に進学した若い作家だが、作品にはすでにある一定の方向性が垣間見える。多くは、彼自身を被写体にした映像作品で、とくにこの1-2年で顕著なのは、自宅のアパートと思われる小部屋を舞台に、夜な夜なブリトニー・スピアーズになりきったり、あるいはペニスサックにしたハリボテの日本列島で部屋をぐしゃぐしゃにしたりといった妄想的パフォーマンス。そこでは、ナルシシズム、露出願望、性的な興奮、破壊衝動、ジェンダーの攪乱などといったテーマが、YouTubeに投稿される動画の雰囲気でまとめあげられる。本作でも主役は若い男(高田本人)で、単身者用アパートの一室でなにやら彼は興奮を増幅させている。三つ編み制服姿の男による奇怪なショーごっこ。本作の特徴はひもの束を引っ張るとスカートの端がつまみ上げられる装置で、スカートが上がると裸の脚と(ペニスを股で隠した)下腹部があらわになる。この装置を拵えたことが最大の勝因。これをマルセル・デュシャンの《大ガラス》に比肩しうるものだといったらほめ過ぎだろうか。この類比がより明瞭なのは、映像展示とともに会場で行なわれていた本人によるパフォーマンスで、装置を会場に設置し、会期中毎日、部屋の真ん中で一日中立つと、高田は観客にひもを下げさせた。はにかむ作家にうながされて、望んだつもりのないままひもを引っ張ると、観客は見たかったわけではない姿態とご対面させられる。覗きの装置によって、自動的に、発情する覗きの主体に観客は勝手に役づけられてしまう。映像に示された「独身者の一人遊び」の装置が、観客を巻き込んで「花嫁と独身者の戯れ」へと転換しているわけだ。《大ガラス》では構造的に絶対に出会えない「花嫁」と「独身者たち」が、本作ではひもによってあっさりつながってしまっている、なんということだ。

2011/04/24(日)(木村覚)

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