2019年03月15日号
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artscapeレビュー

「国立デザイン美術館をつくろう!」第1回パブリック・シンポジウム

2012年12月01日号

会期:2012/11/27

東京ミッドタウンホール HALL A[東京都]

三宅一生氏(デザイナー)と青柳正規氏(国立西洋美術館館長)を呼びかけ人として、2012年9月に「国立デザイン美術館をつくる会」が設立された。10月末にはウェブサイトが開設され、設立趣意の公表とシンポジウムの開催を告知。定員650名があっというまに埋まったことで、この動きが多くの人々の関心を集めていることがわかる。当日はUstreamの中継を視聴した人も多かったようだ。
 11月27日に開催されたシンポジウムの登壇者は、佐藤卓(グラフィック・デザイナー)、深澤直人(プロダクト・デザイナー)、工藤和美(建築家)、皆川明(ファッション・デザイナー)、田川欣哉(デザイン・エンジニア)、鈴木康広(アーティスト)、関口光太郎(アーティスト)の各氏。その肩書きからは、ここでいう「デザイン」が非常に広い領域を包摂しようとしていることがうかがわれる。2時間半に及んだシンポジウムには、「だから今、デザインミュージアムが必要だ!」「みんなに愛されるデザイン・ミュージアムとは?」「デザイン・ミュージアムとアーカイブ」という3つのテーマが設定されていたが、実際の進行はゆるやかなブレイン・ストーミングの趣きであった。「経済以外に生活の質を計るための基準をつくる」(深澤氏)、「デザインとは何かという気づき、体験の場」(佐藤氏)、「デザイナーたちが自分たちの足跡を残し、未来をつくる場」(三宅氏)、「デザイン・ミュージアムにとってモノは生活の質を考えるための入口」(皆川氏)、「モノとのつきあい方をプロデュースする」(鈴木氏)、「モノとモノをつなぐ発想法のワークショップ」(佐藤氏)などのコメントからは、「歴史」「観察」「教育」「機能」「技術」「環境」といったキーワードが浮かび上がってきた。
 「国立」であることの意義としては、継続性という点で登壇者の意見は一致。21_21 DESIGN SIGHTを実現させた三宅一生氏の次の願いは、アーカイブ機能を持った施設をつくること。これまでにも私企業によるデザイン・ミュージアムはあったが、業績の変動によって存続不能になったり資料が散逸する恐れがある。国の施設にすることで、そのようなリスクを排除したいということである。
 「デザイン」の定義については直接の話題にならなかったが、むしろその枠組みを取り払いたいとの意見も見られた。ただし、企画展ではさまざまな試みが可能としても、この構想が「アーカイブ機能」を持つとなると、なにを収集・保存するかが問題となる。デザインとアート、デザインと工芸、デザインとものづくりの関係のとらえ方は、この構想と既存の美術館・博物館との重要な差別化要因になるだろう。
 立地、規模、形態などは現時点では未定。どんなに順調にいっても、実現には最短で5年。今後シンポジウムを重ねると同時に、広くサポーターを集めて「みんなでつくる美術館」を目指しつつ、国会議員連盟を形成して実現への足掛かりとしてゆく(青柳氏)とのことであった。2013年秋には、21_21で主旨を反映した展覧会開催が予定されている。
 日本には包括的にデザインを収集・紹介するミュージアムが存在しないこと、そしてそれが必要とされていることは、デザインに関係する人々には共通の認識で、これまでにも日本デザイン団体協議会(D-8)の「ジャパンデザインミュージアム構想」や、武蔵野美術大学美術館の試みが存在する。しかし、ここまで多様な人々の関心を集めたことはなかったのではないだろうか。これまでに行なわれてきた議論の蓄積や海外での事例を生かし、よりよいミュージアムが実現されることを期待したい。[新川徳彦]

Video streaming by Ustream

2012/11/27(火)(SYNK)

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