2017年07月15日号
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artscapeレビュー

「T」大崎のぶゆき

2013年10月01日号

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会期:2013/09/17~2013/09/28

galerie 16[京都府]

水溶性の紙にペイントし、水の中に浸してイメージが溶解・崩落する様を撮影した映像作品や、壁紙の模様が溶け落ちる映像作品で知られる大崎のぶゆき。昨年に大阪で開催した個展では自分自身を題材にして「記憶」という要素を加味したが、本展ではその発展形とも言うべき新作が展示された。それは、友人Tに子ども時代の記憶を取材し、大崎自身がTの記憶をトレースするというものだ。具体的には、取材で聞き出した場所に実際に出かける、インターネットで情報を収集するなどの行為を行なったが、その過程で浮き彫りになったのは、Tの記憶が極めて曖昧なことだった。つまり人間の記憶はリアルとフィクションがミックスされているのである。作品は、Tから提供された記憶にまつわる写真、関連する物体、大崎の映像とスチール写真で構成されていた。リアルとも、フィクションとも、その両方とも言い難い作品世界を見ていると、はなはだ不安定な浮遊感に襲われる。しかし、その感覚は不快ではなく、むしろ甘美さを伴っているのだ。この両義的な感覚こそが本展の核心であろう。

2013/09/17(火)(小吹隆文)

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