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artscapeレビュー

IMARI/伊万里──ヨーロッパの宮殿を飾った日本磁器

2014年09月01日号

会期:2014/08/16~2014/11/30

大阪市立東洋陶磁美術館[大阪府]

大阪市立東洋陶磁美術館所蔵で今回初公開となるコレクションに、サントリー美術館、九州陶磁文化館の所蔵品を加え、1660年から1757年まで約100年にわたった輸出伊万里の歴史を辿る展覧会である。すでに最初の巡回先であるサントリー美術館での展示を見ているので、ここでは展示構成のおもな違いについて触れる。この時期の伊万里焼は、国内向けと輸出向けの製品で、種類や意匠も異なっていた。東洋陶磁美術館の伊万里焼コレクションはヨーロッパで蒐集されたいわゆる「里帰り品」であり、ヨーロッパ向けの製品。それをふまえてヨーロッパにおける受容のコンテクストをより強調する構成になっている。具体的には、おもにヨーロッパ向けに生産された大壺の数々が最初の展示室に集められていること。また展示デザインにはヨーロッパ人にとって奢侈品であった東洋磁器をイメージさせる工夫が施されている。エントランスから階段を登り展示室に入るまでの床には赤い絨毯が敷かれ、展示室の入口は重厚なカーテンで飾られている。入ってすぐの壁には、本展を担当した小林仁・東洋陶磁美術館学芸員が撮影した磁器の間のある宮殿・美術館の写真がデコラティブな金縁の額に入れられて展示されている。大壺の大部分は壁面のケースに展示されているが、裏側の意匠も見えるように背後に大きな鏡が設置されている。そしてその鏡もまた額縁付(美容院で用いられるものらしい)。こんな展示は初めて見た。展示ケースの壁面にはヨーロッパ調の濃い色彩の壁紙が貼られているが、その文様はオリジナルという凝りようである。とくに印象に残る作品は《染付高蒔絵牡丹唐獅子文大壺・広口大瓶》。伊万里の染付磁器に長崎で高蒔絵を施した大壺である。もうひとつは《染付蒔絵鳥籠装飾付広口大瓶》。やはり染付に高蒔絵を施し、さらに鳥籠状の装飾が付され、中には木製の鳥が2匹おかれている。明治期の宮川香山の作品を思い出させる奇妙な装飾であるが、マイセン窯でも本作の写しがつくられたということは、ヨーロッパ人好みの意匠だったのだろう。後者は展示室中央の独立ケースに展示されているが、ケースのガラスにカッティングシートで楕円形の窓があけられていて、そこから覗き込む。チラシや図録表紙のデザインを模しているのだ。撮影コーナーにもなっている最後の展示スペースには、ドイツ・シャルロッテンブルク宮殿の図面を背景に大壺3点の露出展示があり、またその隣では同宮殿の磁器の間の写真をバックに記念撮影ができるようになっている。現地に旅した気分になれるかといえば微妙だが、これまたデコラティブなソファに座って写真を撮るとなかなかいい雰囲気だ。それ以外の展示は他館の展示と同様に時系列となっているが、陶磁器専門の美術館の展示ケースと自然光を再現したLED照明の下では、作品はまた違って見える。ポスターやチラシ、展覧会図録、会場デザインはすべて上田英司氏(シルシ)。図録の作品写真撮影は三好和義氏(東洋陶磁美術館所蔵品のみ)。図録の大胆なレイアウトは一見の価値がある。[新川徳彦]


左=展示室入口
右=第一展示室


撮影コーナー


本展図録の一部

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2014/08/20(水)(SYNK)

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