2017年12月15日号
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artscapeレビュー

UNIVERSE 橋本敦史

2017年10月01日号

会期:2017/09/12~2017/09/24

アートスペース感[京都府]

橋本はさまざまな素材を駆使して立体作品を制作するアーティストだ。素材は造形に最適なものを選択しているだけで、そこに過度の思い入れは存在しない。本展で彼は、4つのシリーズ作品を発表した。そのなかでも特に注目すべきは、《Blood Vessel》(画像)と《Flower》の2つである。前者は白いパネルの上に白く塗った木の枝が配置されているが、木の枝は縦半分など不自然な形に断裁されている。後者は精密に加工されたステンレスの立体で、一見すると花のようだ。じつはこれらの作品は、彼の疾病体験から着想したものだ。橋本は脳の血管の病気を患ったことがあり、その際に視野の半分が認識できない状態に陥った。幸い病は治癒したが、そのときの体験から脳や血管に深い興味をいだくようになり、これらの作品を制作したのだ。ちなみに《Blood Vessel》の造形は、彼が体験した症状と、血管と木の枝の形状的共通性に由来している。《Flower》の形態は花ではなく、脳の神経細胞ニューロンからの着想だ。アーティストはそれぞれテーマを持って制作しているが、彼のように自分自身の生命の危機と直結しているのは稀であろう。作家と作品の分かち難い結びつきが、作品に深い説得力を与えている。ただし、劇的なストーリーから情緒的な反応に陥ってはならない。彼の作品は造形的にも質が高く、たとえ事情を知らなくても十分鑑賞に耐え得るのだ。

2017/09/12(火)(小吹隆文)

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