artscapeレビュー

ソウル都市建築展示館

2023年07月01日号

[韓国、ソウル]

シェルター・デザインの展覧会に参加したり、オープニングのイベントでレクチャーも行なったソウル都市建築展示館を4年ぶりに再訪した。これは景福宮から南に伸びるメインストリートの世宗大路に面する施設であり、向かいが市庁舎だから、ロケーションは抜群である。それだけソウル市が建築に力を入れているということだろう。ただし、すべての展示空間は地下に展開し、全体の高さを抑えることで、背後のソウル主教座大聖堂が通りからよく見えるように、デザインが工夫されている。また日本統治時代に建設された以前のビルの一部も、遺跡のように残されており、今回はこの建築がどのように計画されたかを振り返る展示もあった。さて、メインの企画展「プロジェクト・ソウル:ソウル・スタイルの公共建築の誕生」では、公共建築の選定プロセス、さまざまなコンペとその実現作、これからの建設される作品などを紹介していた。建築を市民に理解してもらうのに必要な内容であり、こうした市の施設は日本にも欲しい。



ソウル都市建築展示館を横から見る/右が教会




背後の教会、右は旧ビルの柱の痕跡




「プロジェクト・ソウル展」展示風景



「プロジェクト・ソウル展」展示風景


ほかにもいくつかの展示を同時開催していた。例えば、都市建築展示館にどう介入するかというコンペで選ばれたプロジェクトの記録である。これまでこのコンペは二度行なわれており、初回に実現したSTUDIO HEECHのデザインは秀逸だった。地上の斜面となった低い屋根をピンボールに見立てるインスタレーションであり、この建築の特徴を見事に生かしている。そして何より楽しそうだ。また「建築家たちのパースペクティブ」展(META BOXなどの作品紹介)、ソウル建築賞の歴代受賞作を紹介する企画、MVRDVによる都市への野心的な提案(彼らが手がけたソウル路7017の周辺エリア)、都市建築を提案する子供向けのインタラクティブな展示などもあり、盛りだくさんだった。また今年の秋に開催する第4回ソウル都市建築ビエンナーレの予告とテーマ「ランド・アーキテクチャー、ランド・アーバニズム」のパネルが、ライブラリーの横に掲げられていた。なお、2021年にオープンしたアーカイブ室が素晴らしいソウル工芸博物館の近くでも、野外の大型インスタレーションによって都市建築ビエンナーレを告知している。



ソウル都市建築展示館のコンペ関連展示。STUDIO HEECHによるピンボールのインスタレーション




ソウル建築賞の歴代受賞作を紹介する企画




子供向け企画。都市建築を提案するインタラクティブな展示



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《ソウル都市建築展示館》|五十嵐太郎:artscapeレビュー(2019年04月15日号)

2023/05/05(金)(五十嵐太郎)

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