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サント・ドミンゴ教会、サンタマリア・トナンツィントラ教会

2024年02月01日号

[メキシコ、プエブラ+チョルーラ]

メキシコシティから車で3時間ほどのプエブラと、その近郊の街チョルーラを訪れる。ここにはいわゆる「ウルトラバロック」と呼ばれる極端に装飾過剰な教会があると聞いたからだ。プエブラはサント・ドミンゴ教会がそれにあたる。ところが昼すぎに着いたら門が閉じられて入れないではないか。しまった! クリスマス前だから通常営業とは異なり信者専用で入れてくれないのかも? かーちゃんなんか「日本からお祈りに来ました。ぜひ入れてください」と自動翻訳機にかけて強引に突破しようとしたが、近くの人が午後になったら開くよと教えてくれた。かーちゃんスゴイな。



サント・ドミンゴ教会の内部 [筆者撮影]


午後に再訪。教会内部は予想以上にでかい。身廊部の装飾はそれほどではないが、シティのメトロポリタン・カテドラルがそうであったように、正面の祭壇には何十もの絵画・彫刻がゴテゴテの額縁や台座、円柱などに囲まれて壮観というほかない。しかし驚くのは左側に隠れていた袖廊部。壁や柱に余すところなく金と白のうねるような装飾が施されているさまは、空間恐怖症的なオブセッションさえ感じさせる。「ウルトラバロック」といってもヨーロッパのバロック建築とは時代的にも様式的にも異なり、こちらのは、言ってしまえば建物の内部をゴテゴテに装飾しているだけで、建築構造そのものはなんの変哲もないらしい。その意味では「表層のバロック」というのがふさわしいかもしれない。



サント・ドミンゴ教会の内部 [筆者撮影]


プエブラの隣のチョルーラにあるのはサンタマリア・トナンツィントラ教会。こちらはサント・ドミンゴ教会よりもずっと小さいが、それ以上に装飾過剰で色彩も美しく、特にクリスマス間近なせいかイリュミネーションなども飾られていっそう華やかだった。でも残念なことに撮影禁止だったので写真はなし。こうしたウルトラバロックの教会がメキシコシティのような大都市より地方の小都市に多いのは、土俗的な民衆の文化や信仰に結びついて発達したからだと言われている。

2023/12/23(土)(村田真)

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